第6話 戦争と魔王

 異世界生活2日目。今日から戦闘訓練が始まる。


 まず午前中に座学で魔法理論等を学び、午後から実践訓練に入る。座学は大体2週間くらいで終了し、その後は一日中戦闘訓練の日が続くらしい。まるで軍事学校のようなカリキュラムだ。一応休日はちゃんとあるらしいので安心した。


 そういえば、昨日寝る時に1つ実験したことがある。それは、睡眠中に【思考加速】を使用できるかどうか、だ。


 要は、睡眠時間を100分の1にすることができるかということだ。それで結論なんだが、無理でしたねはい。眠った瞬間にスキルが切れたっぽい。


 スキル【思考加速】は意識の元で働く。睡眠中はの状態のため、スキルが働かなかった訳だ。ただ、単に目を瞑るだけの仮眠なら使えるっぽいので、積極的に活用していこう。


 そんなことを考えていると、座学の授業が始まった。先生は宮廷魔術師の人。どこか知的な印象をうける人だ。とりあえずこの世界の概要について説明しているようだ。昨日本で読んだ内容なので、復習感覚で記憶に定着させていく。


 この世界は1つの大陸で出来ていて、主に北側が魔人族領、南側が人族領だ。一部例外的に魔人族と人間が共存している地域や、獣人が済んでいる地域もあるみたいだが……戦争の時とか大丈夫なのかね。


 そして人間族と魔人族の間では約100年周期で戦争が繰り返されている。これは魔王が100年に一度復活するかららしい。


「魔王がいないときに攻め込むことはできないんですか?」


 クラスメイトの一人がそう質問する。まあ普通はそう考える。戦争に卑怯だとか正々堂々だとか言っている余裕はない。


「はい。魔王が復活しないときは魔人族領と人族領の間に強力な結界が発生するため、魔人族領に入ることすらできません。原因は分かっていませんが、魔王をトリガーに無くなることから、恐らく魔王のスキルの効果なのではないかと言われています」


 ふーん。一生その結界が張られていれば全部解決だと思うんだが。多分魔王がいない間の防衛手段として存在するんだろうなあ。100年かけて力を蓄えてから戦争に臨むのが目的なんだろうが。昨日読んだ歴史書によると、魔人族は人族よりも寿命が長いので、魔人族の方が戦争に有利ということになる。厄介な戦略だなあ。


 長年人族を苦しめていることから、魔王は恐らく結界に関するもの以外にも複数のスキルを持っていることだろう。これ本当に勝てるのか?


「戦争は毎回魔王軍側の侵略から始まります。侵略は魔人族を全滅させるか、魔王を討伐しない限り終わることはありません。歴代の異世界人たちは皆、魔王を討伐することで戦争を終わらせました」


 そういえば1つ気になったことがあった。


「その魔王っていうのは、全て同一人物なんですか?それとも毎度違う魔王が復活しているんですか」

「毎回復活する魔王はすべて同一人物です。そのため、復活を重ねるごとに魔王の力は強大になっています」


 それは結構ダルいな。向こうは異世界人の情報もかなり持っているだろうし、むしろこれまで負けたことがないのが不思議なくらいだ。まあ30人ものスキル持ちを相手にするのは流石に魔王でもきついのかもしれないが、それでも毎回負けているのは何かが引っかかる。


 その後、今度は魔法についての説明が始まった。


「魔法は火水風土光闇の六属性と、無属性魔法の七種類に分けられます。皆さんが昨日使ったステータス魔法は無属性魔法の1つです。現在、無属性魔法は数えられるほどしか発見されていません」

 

 無属性魔法か。新しいものが解明されれば魔王に対する切り札にもなり得そうだ。せっかく【思考加速】なんてスキルがあるんだから、魔法はしっかりと研究して使いこなしたいな。


「六属性魔法はそれぞれ、初級魔法、中級魔法、上級魔法、特級魔法に分けられます。基本的に、下の級の魔法のレベルを最大の10まで上げないと次の級の魔法を使うことができません。級が上がるほど魔法陣も複雑になり、習得難易度が上がるので、魔法へおより深い理解が必要になります」


 話を聞いてますます魔法に興味が湧いてきた。今日の読書は魔法書にしよう。


「六属性魔法を使うには適性が必要です。適性は先天的な才能で、後から身につけることはできません」


 確か俺の適性は風と土だったか。他と比べると地味だが、汎用性は高そうなのでむしろ俺の戦闘スタイルにあっているのではないかと思う。


 俺は基本的に手数で戦う戦闘スタイルにしようと考えている。単純な力ではスキル持ちには到底叶わないので、【思考加速】を生かした立ち回り重視の戦闘スタイルの方がいい。そのためには、戦闘における選択肢を沢山持っていた方がいい。


 なので武器も小回りのきく短剣にしようと思っている。なんか最初から技能もついてるしな。後は両手に持って双剣として戦うのもありか。その辺の戦闘術に関する本も読んでおこう。


 その後しばらくして座学が終わり、次はいよいよ初の戦闘訓練だ。


 戦闘がかなり危険なことかはしっかり分かっている。それでも、高校生の厨二心からか、なんだかんだ楽しみにしてしまっている俺がいるのだった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スキル『思考加速』で異世界生活を 周防 @reazMK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ