第3話 ステータス

「まずはお前たちにを覚えてもらう」

「ステータス魔法?」

「自分のステータスやスキル、技能を見ることが出来る魔法だ。まずはこの魔法陣を見てくれ」


 王様が空中に魔法陣を生み出すと、周囲がざわつく。おお、魔法だ。恐らくあの魔法陣は魔力で構築されているのだろう。てか王様直々に説明するのか。


 というか、異世界なら「ステータスオープン」とか適当に言っとけば出るのが普通だと思うんだけどなあ。後で実験してみよ。


「お前たちの体の中には魔力が眠っている。この世界に来てから以前より力が張る感覚があるだろう。それが魔力だ。それを操作して、この魔法陣と同じものをイメージして作ってみろ。魔法陣を正しく構築出来れば、それが視認できるようになる」


 なんかやたらと俺たちの感覚に詳しいな。それだけ何度も異世界人を召喚しているということか。まったく傍迷惑な異世界である。


 そんな事を考えながら魔力を操作していると、ふいに魔法陣が現れた。成功したみたいだな。


「魔法陣が完成したらそこに魔力を流し込んでいけ。一定量流し込めば魔法が使えるはずだ」


 ということなので魔力を流し込んでいくと、魔法陣が消え、タブレット位のサイズの半透明板が出てくる。そしてそこにはズラズラと文字や数字が書かれている。



広瀬優斗 年齢16 種族:人間 Lv1

職業:遊び人

称号:異世界人

【体力】 60

【攻撃力】50

【耐性】 40

【敏捷】 50

【魔力】 40/40


・スキル

【言語理解】【思考加速】【風属性適正】【地属性適正】

・技能

料理Lv3・短剣術Lv1・魔力感知Lv1・魔力操作Lv1



 うん、基準が無いから強いのかいまいち分からんな。てか遊び人ってなんだよ。某有名RPGにもそんな職業があったな。少なくとも戦闘向きではなさそうだ。


 そして、スキルと技能か。内容的に、スキルは先天的なもの、技能は後天的なものっぽいな。


 【適正】系の奴は使える魔法のことだろう。【言語理解】は異世界人の特典だろうか。


 だとすると、この【思考加速】が俺だけのスキル、さしずめユニークスキルと言ったところか。これからは勝手にそう呼ぼう。面白そうなスキルだが......戦闘力の直接的な上昇は無さそうだ。



「ねえねえ、どうだった?」


 凛がそう言ってきたのでお互いにステータスを見せ合う。



七海 凛 年齢16 レベル01 種族:人間

職業:魔術師

称号:異世界人

【体力】 30

【攻撃力】30

【耐性】 30

【敏捷】 40

【魔力】 80/80


・スキル

【言語理解】【錬金術】【闇属性適正】【光属性適正】【火属性適正】

・技能

料理Lv5・魔力感知Lv1・魔力操作Lv1



 The後衛職って感じだ。魔法適正も三つと多い。ユニークスキルは【錬金術】か。割とチートスキルとしてはよくあるものだ。恐らく汎用性はかなり高いだろう。


「んー、上4つのステータスは自分自身の身体能力が結構反映されるっぽいね。前衛はほとんど男子で固まるだろうね」

「お前の魔力量を見る限り、恐らく職業による補正もあるだろうな」


 遊び人はどのステータスに補正がかかっているのだろうか。運とか器用さがあれば間違いなくそれだが......近いのは俊敏か?の割にはそうでもなさそうだが。


「全員が成功したようなので説明を始める」

「まずはステータスについてだ。それぞれ大体名前の通りだが、その中で少し特殊なのがある。体力と魔力だ」

「体力は運動や戦闘をいかに継続できるか、その時間に影響を与える」


 なるほど。あくまでHPヒットポイントではなくスタミナを表す数字だということか。つまりゲーム寄りの異世界ではないと言うことになる。


「次に魔力だが、先程魔法を行使する時に使ったものだ。魔力は使用すると残量が減っていく。基本、一日に一度しか回復しないが、魔力ポーションを使って回復することもできる」


 こちらはゲームのMPマジックポイントと同じようなシステムのようだ。俺は魔力があまり多くなさそうなので、効率よく使う必要がありそうだ。


「戦闘を行ったり、魔物を倒したりすると経験値が得られ、一定まで経験値が溜まるとレベルが上がる。レベルが上がるとステータスが上昇する。ステータスの上昇幅は職業やスキルによって変動することがある」


 なるほどな。魔物を倒す以外でもレベル上げができるのか。戦争の相手が魔人族であることから、魔物を狩るよりも対人戦をやった方が、経験値にも戦闘経験にもいいかもしれない。


「次にスキルについてだ。スキルは先天的に手に入る才能で、後から発現することは基本的にはない。持っているのも大体1000人に1人程度だスキルの力は強大で、持っているものと持っていないものではかなりの差がある。ちなみにスキルの仕組みは未だに解明できていない」

「逆に技能は後天的に努力で手に入れることが出来るものだ。熟練度が上がるとレベルが上がっていく。ただし、レベルが上がったから急に技術が向上するなんてことは無い」

「そして異世界人は必ずスキルを2つ以上持っている。1つは言語に関するスキルで、もう1つは人によって違うはずだ。これが、俺たちが異世界人を召喚する理由でもある」


 まあ確かに、タダでさえ強いスキル持ちを何十人も味方にできるとなれば、そりゃ異世界召喚なんてするわな。


「ステータスについて分からないところがあれば、その文字をタップすれば詳細を見ることが出来る」


 なるほど、とりまユニークスキルについて調べますか。ステータスの書かれた透明な板……めんどくさいのでステータスボードと呼ぶことにする。それのうち思考加速と書かれたところをタップする。


【思考加速】:自分の思考のスピードを速くすることができる。

※最大100倍まで可能。


 ふーん。とりあえず使って見るか。


「【思考加速】」


 俺がそう呟いた瞬間、世界がスローモーションになる。んー、そういう感じか。


 確かに思考は速くなっているんだが、感覚的には俺の思考以外が遅くなっているように感じる。まるで時間停止をしているかのようだ。


 このスキル、頭の回転が異常に速くなるとか、そういうのじゃない。時間が遅くなった世界で普段通り思考ができるので、実質思考時間が100倍になったようなものだ。まあ、同じ思考にかかる時間が普段の100分の1になるので、早くなってはいるか。


 それに加えて動体視力も上がるみたいだな。クラスメイトの中に、他とは明らかにスピードが違うやつがいるが、しっかりと見えている。恐らく俊敏系のスキルを使っているのだろう。あれの100倍となると、通常状態では視認すらできないと思う。


 ただこのスキル、1つ残念なことがある。それは、俺の動きも100分の1になるという事だ。先程から手を動かそうとしているが、本当に少しずつしか動かない。つまり、相手の攻撃を直前に避けるような人間離れした技はできないということだ。


 総合的に見て、まあ便利なスキルではあるが、やはり戦闘向きではないな。せいぜい判断力と動体視力の向上くらいか。


 恐らく現実世界で持っていたらかなりのチートスキルなんだよなあコレ。学習でもスポーツでもかなりの結果を残せるだろう。あとチラ見でしか見れないものをガン見できる。まあ、汎用性は悪くないだろうし、そこら辺は使い方で何とかするしかないか。


 一度スキルを解除する。とはいえ、体がスローモーションすぎて発声しづらいので、心の中で解除するよう命じる。すると急に世界のスピードが速くなる。少し気持ち悪い感覚だが、まあすぐに慣れるだろう。魔法はどうか知らないが、スキルは口に出さなくてもイメージで発動できるようだ


「皆確かめたいこともあるだろうし、今日はこの後自由とする。訓練は明日から開始する。スキルの実験をしたいものは城の裏庭をを使うといい。メルア、お前が案内しろ」

「承知致しました」


 なんだか随分と羽振りのいい王様だな。裏がありそうで怖いんだが。まあ、とりあえず素直に従っておいた方がいいか。クラスメイト達は王様にパシられたメルアとか言うメイドについていく。俺のスキルは何処でも使えそうだが、周りのスキルがどんなものかも気になるし、一応行ってみるか。


 










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