第2話 話し合い

「ようこそ、異世界の者たちよ。歓迎するぞ」


 王がそういった途端、クラスメイトの間に動揺が走る。


「え?異世界?」

「どういうことなの?」

「クラス転移キターーー」


 一部のオタクたちは大変興奮しているようだが、おおむね皆状況を理解できていないようだ。そりゃ異世界のテンプレについての知識なんてないからな。


「俺はクリストフェル・アメリルフ。この国、アメリルフ王国の国王だ」


 やっぱり国王だったか。にしては喋り方がそれっぽくないな。もっと「余は~である」みたいな口調だと思ってた(偏見)。というかミドルネームが無いんだな。王族は皆あるのかと思ってた(ド偏見)。


 それから色々状況説明があったのだが、長かったので要約すると。


・この世界は1つの大陸からなっており、主に南側が人族領、北側が魔人族領となっている。


・100年周期で復活する魔王が1年前に復活したので、それに対抗するために異世界人を王国が召喚した。


・魔王が復活する度に召喚は行われている。そしてその度二種族の間で戦争が起こる。


・元の世界に帰還した事例はあるが、方法は判明していない。


 やっぱり帰れないみたいだ。俺は一人暮らしだからまだしも、クラスメイト達からしたらふざけるなという話だろう。もう二度と家族に会えないかもしれないのだから。帰れないと聞いた時点で何人かは放心している。


 まあ、クラスメイトがこんな状態で異世界生活してもろくな事が起こる気がしない。俺自身も出来るのなら帰りたいし、やはり自力で帰還方法を探す必要があるな。


 となると国を出た方が良いのだろうが、クラスメイトを放ってはおけないし、今の状態で外に出ても何も出来ないだろう。なので、暫くは王国に滞在したい。


「まずはお前達に」

「ちょっと待ってください」

「ん?なんだ?」


 そう言って国王の言葉を遮ったのは鳳凰院颯斗ほうおういんはやと。クラスカーストの頂点に君臨している(と俺が勝手に思っている)イケメンだ。成績優秀、運動神経抜群と、二次元のキャラのようなチートっぷりをしている。あと名前がかっこいい。


「俺は鳳凰院颯斗といいます。一つお願いがあるのですが」

「ふむ、いいぞ。話してみろ」

「皆状況を飲み込めていないみたいなので、少し話し合って心を整理する時間をくれませんか?」

「なんだ、そんなことか。そのくらいなら全然構わないぞ」

「ありがとうございます」


 心の広い国王で良かったな。これで「うるさい!こっちも時間がないんだ!大人しく従え!」とか言われてたら国を出ていく時期を大幅に早めていたかもしれない。


「皆!まだ落ち着けていないのは分かるが、一旦集まってくれないか。今後の方針について話し合いがしたいんだ」


 皆落ち着かない様子だが、鳳凰院の指示だからかそれに従って集まっていく。現実世界にいた時から感じていたが、やはりあいつには他にないカリスマがあるな。多分俺にはできない。


 面倒な事にならなければいいが......まあ鳳凰院が指揮するのなら大丈夫。学校行事などでの手際を見る限り、あいつの統率能力は一流だ。


 クラス全員が集まった中、鳳凰院が話を始める。


「さて、今後の方針についてだけど、俺は戦うしかないと思う」


 その声を聞いて何人かの表情が歪む。その内の多くは女子だ。今まで日本で戦争とはほぼ無縁の生活を送ってきて、いきなり戦えと言われても怖いに決まっている。


「正直俺だって戦争なんか絶対にしたくない。だけど、この世界では戦わなければ状況は好転しないし、元の世界に帰ることもできない。戦争に参加するかはとりあえず後にして、まずは王国の元で生き残るための力を身につけた方がいいと俺は思う。」


 うん、俺が直ぐに王国を出ようとしなかった理由と同じだ。王国に協力すれば、恐らくかなりの援助を受けることが出来るし、より効率的に訓練ができるだろう。


「以上が俺の考えだけど、他になにか意見のある人はいるかな」


そこで俺は挙手する。鳳凰院に許可を取り話を始める。


「戦う方針で行くのは賛成だが、全員に強制するのは厳しくないか?今見る限りだと、何人かは戦いなんて出来る状況じゃないと思うが」

「確かに広瀬の言う通りだと俺も思う。希望者のみに参加の方がよさそうだ。まあ、国王様に承認してもらえたらだけどね」


 まあ本音を言うと、ビビった状態で無理に参加されても足でまといになる可能性が高いと思っただけだ。だから女子達、そんな希望を持つような目で見てくるな。べ、べつに同情したわけじゃないんだからね!!


 アニメやラノベの経験から、なんとなく俺は結果的に全員参加することになりそうな気もするが、まあいい。


「私は、私はできることならお前たちに戦争に参加してほしくない。だが、やるしかないみたいだな。だが極力単独行動は避けるようにしよう」


 そういったのは担任の池上いけがみ先生。いい先生、いい先生なのだが、どこか空回りしている人だ。確か奥さんがいたはずなので、先生も相当精神的に辛いはず。それでも戦おうとするのは、それだぇ元の世界に帰りたい意志が強いからだろう。というか、先生居たのに生徒の鳳凰院がまとめ上げてるのはどうなんだ?


「他に何か意見のある生徒はいるかな……なさそうだね。皆、絶対に生きて帰ろう」


 鳳凰院がそういった瞬間俺は生徒たちを観察する。うむ、本当に戦う覚悟ができているのは精々4割くらいか。残りは異世界で興奮して現実の見えていないやつらと鳳凰院への崇拝により落ち着いたやつらだ。まあ、ビビっている奴が減っただけまだマシか。


「話がまとまりました。お時間ありがとうございました」

「ああ、気にするな。さて、では本題に入ろうか」



「まずはお前たちに、を覚えてもらう」











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