第41話 シンプルにフラれる
「く……っ! 不覚! オーガの洗脳がクレア殿にも及んでいたとは……!」
女騎士が「く……っ!」って言った。
「最早猶予無し! 我が神よ、ご照覧あれ! 聖神月姫の呪詛返し!」
続けて、女騎士は首から下げていた聖印を掲げる。
聖印が光り輝いた。
途端に俺は、タマちゃんと聖女見習いの子からなんだか生暖かい波動を感じる。
心地よく、頭がぼうっとするなにか。
と、愛おしさが俺の胸を鷲掴みにした。
ピロリロリン
どこからか好感度アップの音。
だが、数値は俺の目には見えない。
これって、俺の中でタマリエルと聖女見習いへの好感度が上がったんじゃねえの?
だって、俺いま、タマちゃんと聖女見習いクレアに対して、童貞を捧げることが可能になりました、っていう気持ちになっちゃったし。
それどころか、後背部の処女を捧げることが可能になりました、って気持ちにもなっちゃったのわよ。
うおおおおお!
恋するオーガは切なくてなんだかたぎってきちゃったぜえ!
「タマちゃん! あと、そこの聖女見習いのクレア! だっけ? お前達は俺の光だ! 大好き! チュッチュしようぜチュッチュ!」
「気色の悪い奴だ。化け物の分際でなにがチュッチュだ、自害しろ」
闇エルフ・デスメソスの冷たい声。
しょうがねーだろ! 好きなものを好きって言える、その気持ちを大事にしたいんだよ、俺は。
「呪詛をかけた本人に逆流して作用させる。それが呪詛返しだ」
そう言う女騎士の聖印にはひびが入って、砕けている。
「……このオーガと接敵した時点で呪詛返しを発動していれば、こんなことには……! クレア殿! 正気に戻ったか⁉」
「……わ、たしはなにを……い、いやああああ!? アレク!? アレク、しっかりして!」
聖女見習いは倒れ伏した光の戦士を見て半狂乱になっている。
かわいそう。
助けてあげたい。
俺の大事で大好きな女の子が泣いているなんて、俺まで悲しいし苦しい。
「傷口を押さえろ! おい、デスメソス! お前、ヒーリングポーションとか持ってるよな? あいつに使え! 手遅れになる前に!」
「いいのか? あの男は敵だろう?」
「いいから!」
俺は光の戦士の喉元から吹き出す血を押さえる。
聖女見習いは取り乱していてなにもできず、タマリエルは俺を見上げて竦むばかりで、他に手がなかったからだ。
「……馬鹿なオーガだ」
そう呟きながら、闇エルフはポーションを光の戦士に与える。
光の戦士からの出血が止まった。
僅かに身じろぎ。
どうやら命は助かったらしい。
よかったよかった。
俺の迅速な手当と的確な指示のお陰やな!
あれ?
これ、また好感度上がっちゃいます?
上がっちゃう感じ?
やれやれ、参ったな……。
俺を見るタマちゃんの目が熱視線瞳のレーザービームやで……。
「……ち、近寄らないでください……!」
ゴミを見る目だった。
俺は死んだ。
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