第38話 再会の半身。優勝の西武。

 冒険者達をチソチソで叩きのめした後、闇エルフのデスメソスが妙に勝ち誇った顔で俺を見上げてきやがる。

 ニヤリと片頬だけ吊り上げて、


「貴様の本心は確かに伝わった。まったく素直ではない奴だ」

「なんの話? ていうか、鼻血を拭け。汚い顔が台無しやぞ」


 デスメソスはやれやれとでも言うように肩を竦めてみせる。

 ついでに血まみれのまま鼻で笑う表情でクッソイライラさせてきた。


「憎まれ口をたたくのは照れ隠しだというのもわかりやすい」

「は?」

「貴様は本当に幼稚なオーガだな。ゴブリンの幼児だってもう少しうまく本心を隠す」

「マジで頭大丈夫か? もしかして、鼻の骨が折れてそれが脳にでも突き刺さってる? それとも体中あちこち蹴られていたからその影響とか? おい、治療師のところにでも行ったほうがいいんじゃねーの?」

「これくらい、手持ちのポーションで回復できる。ふん。そうやって私の身を案じるとは、ようやく自分の立場というものを弁えてきたようだな。理解が遅いとはいえ、進歩は認めてやろう」

「さっきから本当になにを言ってるんだ、お前は」

「私を助けたのはやはりそういうことなのだろう? 好きなのだな? あいつらを倒したのは、私への忠義。私のような上位種に支配されたいというオーガとしての本能だ」


 ポジティブぅ!?

 こいつはとんでもなく前向きな勘違いをしている。

 調子乗ってんなあ!


「あのな? 俺は女の子が痛がったり傷つけられるのってほんとダメなんだって何度も言ったよな? 女の子が痛めつけられてるのとか見てると萎え萎えしちゃうんだよ。そんな場面は見たくなかった。だから、あいつらにはそれを止めさせた。そんだけの話やぞ」


 デスメソス、薄ら笑いの上、肘で俺をツンツン。


「またそんな言い訳か」

「あれ? 急に異世界語通じなくなった? え? ノット・存在・イキュラス・キュオラ?」

「わかったわかった。そういうことにしておいてやろう。愚鈍で下劣なオーガもようやく私を尊ぶことを覚えたのだ、その褒美としてな。えらいぞ」

「わあ、ぶん殴りたい♡」

「女の子が痛がるようなことは嫌なのではないのか?」

「……畜生、こんなクソ闇エルフにダブスタ指摘されるとは……!」

「その気高き闇エルフにかしずき、仕えるのが貴様の本分だ。アンデッドにするまでもなく、私の下僕となるというのであるなら、その身に過ぎた栄誉を授けてやってもいい。私の足に口づけすることを許す」

「それって俺の知らない栄誉なんだが?」

「嬉しいくせに、下賤なオーガはまだ誤魔化せると浅知恵を巡らすか。愚かを通り越して、いっそ可愛らしいほどの愚鈍さだな。では、下僕に命じる。私をその一物で貫き、取り返しのつかぬことにしろ!」

「っ! 馬っ鹿、それどころじゃねえ! そんなことより今、大変なことに気付いたぞ、オイ!」

「何事だ。私の性的魅力に今更気付いたとでも?」

「近くでエルフの女の子の匂いがするっっ!」


 俺は鼻からすぅーっと大きく息を吸い込んで堪能した。

 !?


「いや、これは……でも、なんで!? なんでここに……」


 こうしちゃいられねえっ!


「あっちだ!」

「おい、主人を置いて行くやつがあるか、まったく知恵の足りぬオーガは後先も考えず感情で行動するから困る」


 俺が獣のように森の中を駆け抜けていくと、果たしてその先には、


「……オーガ様!?」

「タマちゃん! やっぱりタマちゃんやないか!?」


 以前光の戦士達に連れ去られた、将来俺とラブラブエッチをする予定のエルフ、タマリエルが本当にいた!


 ピロリロリン。

『+640』

『対象名:姫君タマリエル

 好感度:+1179    』

 好感度が1000を超えました。エルブン・スローセックス(10年単位)が可能になりました。


 この再会に好感度も上がってるねえ!

 エルブン・スローセックスがなんだかわかんねえけど、辞書で調べたら年単位で行われる、ゆっくり時間をかけ男女がいたわりながら肌を重ねる時間を楽しむ性行為。一年以上ずっと持続可能なセックスし続けるエルフの秘伝だってさ。


「……んん……?」


 ようやく追いついてきたデスメソスが、微妙な表情で俺とタマちゃんを見比べている。

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