第31話 みんな大好き! わからせタイム!

 まあ、細かい話はいいや!

 要は俺にはとても敵わないと冒険者達に思い込ませること。

 そのためにこれから、わからせの時間だな!


 ドン。

 と、俺は魔法使いを筆頭とした女の子冒険者達の前で仁王立ち。

 ドワーフとアサシンの冒険者は頬を赤らめまともに俺の顔を見れないでいる。

 が、魔法使いは俺を見上げ、精一杯の虚勢を張ってきた。


「……僕達を殺すんですか? た、たとえ僕達を殺しても逃げられませんよ」

「ぐへへ、負けたくせに威勢がいいな」

「こ、殺すならさっさとやればいいじゃないですか」

「指図するな。お前らをどう扱おうが勝った俺の自由……ぐへへ……こういう時、どうすればいいか、わかるよなあ?」

「……く……」

「まずは服を脱いで……」

「……おかあさん……たすけて……」

「土下座してもらおうかなあ!」

「……土下座……?」


 俺は勝ち誇る。


「そして、『おチソチソ様にはかないませんでした、わたしたちはおチソチソ様一本に負けたザコ冒険者です』って言うんだよ! 土下座して、できれば全裸で!」

「な……なんて下品な!? 言い方が酷い! 僕達は、そ、そんなものに負けてなんか……!」

「なに言ってんだ!? お前らは文字通り、俺のチソチソに負けたんだよ。俺は手出ししなかった。ただチソチソ出してただけ。なのに、そのチソチソに目をやられ心もやられ逃げようとしても逃げられない。……お前ら、完全敗北じゃん!? 恥ずかしくねえのぉ?」

「ぐく……っ」

「冒険者の癖にチソチソに負けたなんてもうダメじゃん! 冒険なんてやってけねえっしょ? だからさ、もう田舎に帰ってトマトを作るなりナスを作るなり、引退して穏やかに暮らすってどう? もう俺達に関わって心煩わせることねえように……。ま、その決意表明としての全裸土下座おチソチソ敗北宣言なんだけど!」

「絶対! しません! そんな恥ずかしいこと……!」

「じゃあ全裸は勘弁してやっから、土下座してチソチソに負けましたって言って! それだけでいいからっ! ほら、こっちは全裸土下座から土下座にまで譲歩したよ⁉    最初に過大な要求突きつけてから譲歩して見せるってテク? これで要求も受け入れやすくなったんじゃねぇの? ドア・イン・ザ・ヘブンとかいうやつ! 漫画で勉強してんだ、俺! おい、デスメソス。お前はその愉快なさまを動画で保存して!」

「は? 貴様はまたわけのわからぬことを……」

「で、今度こいつらが俺達の目の前に現れたら、チソチソ敗北宣言土下座動画をネットに拡散する魔法かけろ」

「ネット……? なんだその魔法?」

「んだよ、この世界、ネットねえのお!? 遅れてんなぁ……」


 がっかりだよ。

 俺は女の子冒険者達に向き直る。


「ま、なんだ。とにかく、もう俺達にちょっかい出すなよ」

「……ちょ、ちょっと待ってくれ。それはもうお主には二度と会えぬということか? そんなのいやじゃ! わたしはお前から離れたくない……!」

「……わたしも……」

「正気に戻ってください! 2人とも!?」


 ドワーフとアサシンの様子がおかしくなって、魔法使いが懸命に引き留めている構図だ。

 と、俺は匂いというか気配を感じる。

 はっ、として気配の方向に目をやれば、案の定。


「聞きしに勝る化け物だな……期待の銀級冒険者パーティを手も使わずに骨抜きにしちまった」

「ここは功を争っている場合ではない。ファールダウンの冒険者一丸となって、共にあのオーガめを討ち果たそうぞ」


 ぞろぞろと武装した人影が森の奥から集まってくる。

 侍みたいなじいさんにいかにもベテラン風のおっさん冒険者。

 その後ろからもボロをまとった大男やらニヤニヤ笑う男達。


 あれ?

 こいつら全部冒険者か?

 え? 

 もしかしてみんな俺狙い?

 おいおい……こいつらにも『おチソチソ様にはかないませんでした♡』ってアヘ顔ダブルピースさせなきゃいけねえのかよ……。

 きっついな。

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