第23話 幕間1:主人公が出てこないので大きいチソチソは出番がありません

「おかしなことになったな」


 光の戦士アレクはぼやく。

 辺境の町フォールダウンの冒険者ギルドの一卓だ。


「町の冒険者あげてのオーガハントなんてな」

「……うん、そうだね」


 同じ卓に座る、聖女見習いクレアは元気がない。


「……なあ、あの子のことを考えてるのか? ……仕方ないさ。手遅れだったんだから……俺達はできるだけのことを……」

「おおい、光の戦士様よぉ? 聞いたぜぇ? 助け出したエルフの娘、ダメだったらしいなあ?」

「ふへへ! 早い者勝ちだってんで、すっ飛んでいったくせにその様かよ」


 へっへっへ。

 へらへらしながら男の冒険者が3人、アレク達に声をかけてきた。


「ニヤニヤ《グリン》3兄弟……なんの用だよ」

「へっ、なんだよその面、アレクちゃぁん? ふてくされてんのかぁ? フォールダウン・ギルド銀級冒険者の面汚しがよぉ?」

「なにっ!? 誰が面汚しだと!?」

「やめて、アレク。相手にしないで」

「おっ、クレアちゃぁん。今日もド助平なおっぱいしてんねぇ。それにメスメスしい、いい匂いだなぁ。発情してじゃねぇのぉ? 」

「! やめて、触らないで!」

「おい! よせ!」

「おお怖ぇ、光の戦士様に討伐されちゃあ敵わねぇや。冗談、冗談だってぇ」


 クレアの髪を触った指先を引っ込め、にやにやする冒険者。

 その指を口に含み、ペロペロしだす。


「甘ぇ……! ……あれ? ……こりゃぁ……!」

「この人達、本当に気持ち悪い……!」

「おい! いくら先輩冒険者だからって、等級的には変わらないんだ! 侮辱するなら受けてたつぞ!」


 光の戦士アレクが凄んでみせても、3兄弟はへらへらするばかり。


「おっとっと。おいおいクレアちゃぁん。こんな小僧に幼馴染だからってついて回ってると、そのうち痛い目見るぜぇ? イキるばっかで実力もねぇだろぉ、こいつぁ」

「ふへへ! 助けたエルフ娘も結局、精神状態異常で教会送りだったそうだもんな」

「ああ、そうだぜぇ弟よ。なあ、アレクちゃぁん? 失態だなぁ?」

「ふへへ、こいつらもオーガに精神やられて逃げ出してきたんじゃないか?」

「そりゃぁ、ありそうだなぁ! たかがオーガ1匹に尻尾巻いて逃げ出すなんて、いくらこの町最弱の銀級冒険者だってあり得ねぇもんなぁ?」

「ふへへ! それどころか、こいつらエルフの娘と同じく、オーガのことが恋しくてケツ穴でも掘ってほしいのかもな」

「どうなんだぁ? おまえら、オーガに洗脳されて、精神異常状態:魅了にかかってるんじゃぁねぇのかぁ?」

「……お前ら!」

「ダメ、アレク! こっちから手を出したこの人達の思う壺だよ! ……相手にしないで、行こう」

「……くっ……わかったよ、クレア」


 テーブルを立つアレク達の背後からグリン3兄弟の下卑た声。


「安心しなぁ、俺達がオーガを殺してやるからよぉ。そうすりゃぁ、お前達にかけられた精神異常状態もきっと直るだろうぜぇ」

「ふへへ、すぐ逃げる腰抜け癖は元からだから、そいつは直しようがないだろうがな」


 アレクがぎゅっと拳を握り締める。

 クレアはそれをそっと押さえ、先へと促した。

 と、そのクレアの表情が青ざめる。


「……ば、馬鹿言わないで……私はなにも……!」

「……!」

「……ね、寝ぼけたことを……もうこんなことしてこないで……不愉快だわ……!」


 クレアは小声で囁いた。

 だが、アレクはその様子に全く気付けずにいる。

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