13話 たたり神と死
赤乃は眠っている。耳元で声が聞こえる。
憎い、憎い、憎い
苦しい、苦しい、苦しい
憎い、憎い、憎い、憎いなら
いっそ、たたり神へと
その魂を黒くけがせ
魂を黒くけがせ けがせ
体から黒い木の葉があふれ出ている。生臭い匂いが立ちこめる。黒い木の葉は煙となって空に昇っていく。空へと昇った黒煙はちりちりと音を立てている。空気が張り詰めている。赤乃は起き上がって部屋の中をぐるぐると歩きまわる。その間にも深淵の闇は広がっていく。暗黒が渦を巻いている。雷が渦の周りにとどろき渡っている。
その時、どうしたと声がした。声のした方を見る。そこにはかつてのいじめっ子の昌之助が口をぽかんと開けて目をまん丸くしてこっちを見ている。赤乃の腹の底から声が響きわたる。
オマエガドウシテココニイル
頭の中でぷつんと音がしたと思うと、口から真っ黒い黒煙が吹き出し、赤乃の体を包み込んだ。髪はザンバラだ。そのまま赤乃は屋根を吹き飛ばし、元いじめっ子のはらわたに食いついた。
元いじめっ子ともつれ合う。いじめっ子が叫ぶ。
「この化け物が、さっさと離れろ!」
赤乃の体が、ぴくん、と反応する。
バケモノという言葉がリンゴンリンゴンと頭のなかを駆け巡る。苦しい。苦しい。苦しい。いじめっ子の右腕をくいちぎる。ぱっと赤く黒い血がふきでる。いじめっ子が短刀を取り出し、赤乃の腹に突き刺す。腹からどくどくと血が流れる。勢いで首筋にかみつくとそのままいじめっ子の首から頭を引きちぎった。血まみれのまま赤乃は外へと駆けていった。服が血で、ぐちょり、と濡れている。そして口から血がぶくぶくと泡を吹いて流れ出ている。腹からもどくどくと血があふれ出ている。
かつて幼少期のときに遊んだお寺にと駆けこむ。苦しい。苦しい。息をするのも苦しい。体が冷たく感じる。寒い。思わず地面に寝転がる。腹から血がどくどくと流れ出て地面へと流れ落ちている。
一つ積んでは父のため
二つ積んでは母のため
三つ積んでは古里の
脳内に声が響きわたる。もう目がかすんで何も見えない。ただ読経だけが響きわたる。
いつしかたぬきが目の前にいた。たぬきが腕組みをして立っている。
「きみの人生、これにて閉幕だよ」
「嫌だ、ぼくはまだ死にたくない」
「死ぬんだよ」
「こんな終わりってないよ」
両目から涙があふれ出る。こんな終わりってないよってつぶやきながら、赤乃はそのまま眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます