第3話


今日も彼はあの場所で待ってくれるらしい。





課題をやると言っていたけれど

いったい何時に終わってるんだろう。





ぼーっとしていると美希からいつもの誘いが。





「まあでもコーヒーを

買いに行かないわけにはいかないよね」



『そうだよね』





コーヒーショップに行くと、彼の姿はなかった。





「あれ?イケメンくんいないじゃん」



『ほんとだ。休憩かな?』



『ちぇータイミング悪。

てんぱってる梨紗見たかったのに』



『だから遊んでるでしょ(笑)』





と言いながらも

明らかにテンションが下がってしまっている自分がいた。





仕事がいつもよりだいぶ早く終わり、

待ち合わせ場所に向かうと彼の姿はまだなかった。





張り切りすぎたと思いながらも気長に彼を待ち、

20分くらい待ったころだった。





「あれ?!もう終わったんすか?!!」





『あ、うんそうなの』



「なんやもー連絡してくださいよー!急いだのに!」



『ごめんね、急に早く終われることになったし

たまには私が待つのもいいかなって』



「お待たせしました。

今日授業やったんすよ、バイト入れてなくて」



『あ、そうだったんだ。。お店にいないなって思ってた』





「会いに来てくれたんすか?笑」





いたずらに笑う彼を見て、

日に日にはまっていっている自覚があった。





『大学この近くなの?』

「はい、定期券内やし気にせんといてくださいね?!」

『う、うんありがとう。』





「明日、土曜っすよねー」

『そうだね、やっと休みだ^^』

「そんな嬉しそうな顔するんすね」

『そりゃあ、休みはみんなうれしいよ』

「俺は会えないのさみしいですけど」



ほら、またそうやってさらっとこちらがドキッとする言葉を言う。


チャラい…きっとそうだ…





とはいえ、誘いを断れるはずもなく。


それからというもの、

とりあえず駅までは一緒に行くという毎日が続き

駅までといってもほんの10分足らずで

距離がぐんと縮まる実感もなく、

ただただ日にちだけが過ぎていった。





そんなある日、ついに連絡が来なくなった。


毎日連絡をとっていたのに、ついに終わってしまったのだ。



私からまた送るのも怖いよね…



なんてモヤモヤしてしまっているうちに3日が経っていた。





「今日もいないねー」



コーヒーショップに目をやりながら美希がつぶやく。



『そうだねえ。授業忙しいのかも』

「なんか彼女みたいになってきたね?梨紗(笑)

 連絡来てないの?」





彼女みたいだと言われて、

じわっと身体が熱くなる感覚を見逃せなかった。


彼女…かあ…



でももう、連絡も来ていない。

そんな時に彼女ヅラは自分でもつらい。




最近は明日は授業でお店にいないという

連絡もくれるようになっていた。





それすらももうないのだ。



本命彼女ができたのかなあ。



『どうしたんだろうね。。。』





悶々としながら仕事を終わらせて

携帯を見てもやっぱり連絡は来ていない。





待ち合わせ場所に行っても彼の姿はなく、

少し待ってみても来なかった。





次の日になってもお店におらず、連絡も来ない。。。





「ねえ、一回梨紗から連絡してみなよ」



ついに美希は私からもう一度連絡することを勧めた。


幻の日々だったかもしれない。

このまま有耶無耶で終わってしまった方が傷つかずに済むかもしれない。



『何勘違いしてるんだよとか思われないかなあ』



つい弱気になってしまう私の背中をバシッとたたく美希



「そう思われたらそれまでの奴じゃん、ほれ」





美希に促され、いろいろ考えた結果

そういえば大学生にはテストというものがあったと思い、

『お疲れ様、いまテスト期間?』

とだけ連絡を送ってみた





仕事も終わり、

待ち合わせ場所を見ても今日も彼の姿はない。





やっぱりちょっと遊んでみただけに過ぎなかったんだろう。



まんまとやられてしまった。



もうコーヒー買えないじゃん…





悶々として帰り道を歩いていると携帯が鳴った。



永嶋くんからのメッセージだった。



開くのが怖い。



恐る恐る開いてみると





「高熱でぶっ倒れてました(笑)」




と一言だけ。




高熱…



体調崩してたんだ…



心配と同時に、あれは幻の日々ではなかったことに安心してしまう。




「おかゆ食いたいっす」





続けて連絡が来た。





これは…来てってことだよね…?








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