試験1日目 試験準備 1

「まずは自己紹介しない?私達お互いのこと何も知らないから。」


 試験準備時間が始まってからそのように発言したのは僕から見て斜め前の席に座っていた女子だ。目を輝かせながら皆に問いかける。


「賛成です。まずはお互いのことを知るところからですね。」


 僕は元気そうな女子の意見に賛成した。とにもかくにもまずはお互いのことを知ることから始まる。お互いの名前もわからないような状態で作戦など決められはしないだろう。


 皆も頷いている。どうやら賛成のようだ。


「じゃあ、言い出した私から言うね。私は一門 夢(いちもん ゆめ)だよ。みんなと一緒に一位とりたいな。よろしくね!」


 元気な子だ。それでいて率先して他人をまとめる能力もある。このグループのリーダー的存在を担うことになるだろう。しかし、目立つためあまり国王には向いていないのかもしれない。もっとも、目立つ人間を国王に据えるという戦略もあるだろうが。


「私は柳原 蛍(やなぎはら ほたる)です.....。精一杯頑張りたいと思います.....。よろしくお願いします.....。」


 メガネをかけた女子だ。先ほどの子とはまさに正反対。声が弱弱しく自信がなさそうで少し地味な感じの子だ。しかし、国王には向いているかもしれない。地味というのはこの試験では強い武器となる。


「私は間宮 華怜(まみや かれん)です。これから5日間よろしくおねがいします。」


 さっき教室まで来るときに僕の前に歩いていた女子だ。ピンと背筋を伸ばしてハキハキと話している。とても落ち着きがあり、頼りになりそうだ。なにかスポーツをやっているのだろうか。


「オレは雁木 蓮(がんぎ れん)だ。よろしく頼む。」


 金髪の男子だ。いわゆるオラオラ系というものだろうか。声が大きく、とても威圧感を感じる。しかし、交渉ごとにおいてのキーパーソンかもしれない。声の大きさと威圧感というのは交渉ごとにおいて大きな力を発揮する。


「俺は新宮 優(しんぐう すぐる)です。皆の役に立てるように頑張ります。よろしくお願いします。」


 メガネをかけた少し切れ目の男子だ。メガネと切れ目の印象からとても賢そうに見える。このグループの参謀役になるのは彼なのかもしれない。少し冷徹さを感じるが、それ故に冷静に物事を見ることができそうだ。


 .....次は僕の順番か。僕は全員の顔を見渡しながら自己紹介をした。


「僕は御空 友介(みそら ゆうすけ)です。気軽に「御空」や「友介」と呼んでください。先生もそのように呼んでください。よろしくお願いします。」


 自己紹介が終わり、席に着くと先生と目が合った。先生は何やら怪訝そうな表情でこちらを見ていた。......が、僕はすぐに目をそらした。



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