試験1日目 試験説明

「私は今から君たちのグループを担当する王永だ。そうだな.....王永先生とでも呼んでくれ。君たちには今日から5日間、この教室にいる6人でグループを組んでほかのグループと戦ってもらう。そして最終結果が1位のグループだけが合格となり、晴れて本校に入学することができる。」


 どんな試験をするのかと考えていたが、なるほど団体戦か。僕はてっきり個人戦とばかり思っていたのでこれは少し意外だ。しかし、団体戦ならば教室が5つに分けられるのにも説明がつけられる。


 だが、5グループある中で入学できるのは1グループだけというのはなかなかに厳しい。2位と最下位のグループの結果は同じということになる。


 「そして、今から君たちにやってもらうのは貿易ゲームだ。」


 そういうと王永先生は茶封筒を一つ僕たちの机に置いた。


「開けてみろ」と言われたので封を開けて中身を取り出すと、ハサミなどの道具やA4用紙などが入っていた。その中から僕はルール説明書と書かれた紙が6枚あるのを見つけて、全員に配った。


 そのルール説明書には以下のことが書かれていた。




・貿易ゲームは名の通り世界貿易、世界経済を模したゲームである。


・貿易ゲームとは試験終了時の各グループが所要する総資産の合計によって戦うゲー

ムである。


・各教室にはそれぞれ担当の教師が配置される。


・A4用紙を特定の形に加工して世界市場に持っていき、正しい加工をされていると判断された場合、売却して資金を得ることができる。


・各グループは各教室で加工をする。別のグループの教室には許可がなければ入ることができない。世界市場は体育館にあり、製品を売却する場合教室を出て体育館へ行く必要がある。


・教師を介して他グループの人間を呼び出すことができる。


・製品は各グループが持つ「加工マニュアル」に記されている形以外では売却することができない。もし、正しい形でも「加工マニュアル」に記されていない場合も売却できない。


・それぞれの製品には加工するときに使用しなければならない道具が「加工マニュアル」によって定められており、従わなければ不良品となり売却できない。例えば定規を使用しなければならない製品を、フリーハンドで作ってしまうと不良品となる。


・自身のグループが持つ「加工マニュアル」は手数料を支払えば他グループに発行することができる。その場合、自身のグループがもつ「加工マニュアル」と相手グループが持つ「加工マニュアル」が存在することになる。つまり、「加工マニュアル」は発行しても自身のグループからなくならない。


・紙を複数枚重ねてその上から切ったりしたものは不良品として売却できない。


・各グループは自身のグループの中から国王を1人決めることができる。国王は試験開始から試験終了までいつでも決定できるが、一度決めれば変更はできない。また、試験終了まで国王を決めないこともできる。


・加工した製品には国王の直筆のサインをしなければならない。もしサインしなかった場合や、直筆ではなかった場合は不良品となる。


・何か契約を結ぶ場合、教師を仲介して契約を結ぶことができる。契約は契約書に契約したい内容、反故にしたときのペナルティ、両者のサインが必要となる。不備があった場合は無効となる。また、教師が確認し契約が反故にされたと確認できた場合にのみ、ペナルティを課す。


・試験終了時、他グループの国王を指名し暗殺することができる。もし予想が的中した場合は暗殺成功となり、暗殺されたグループの試験終了時の15パーセントの資金が、暗殺を成功したグループの資金となる。逆に指名を失敗(指名した王と違うか、国王がいない)した場合は暗殺失敗となり、暗殺が失敗したグループの試験終了時の15パーセントの資金が暗殺されかけたグループの資金となる。


・試験中いつでも、個人がほかのグループに移動する「脱国」をすることができる。脱国とは国王以外の人間が行うことができ、移動したいグループの国王の許可を得た場合そのグループに入ることができるものである。一度脱国をするとゲーム中二度と脱国をすることはできない。試験結果は脱国した先のグループの結果が適用される。脱国を行う際、脱国先のグループは脱国してくる人間一人につき試験終了時の総資産の5パーセントを失うことになる。また、脱国先のグループは一つのグループの人間は何人でも脱国を受け入れられるが、複数のグループからは受け入れられない。例えば、AのグループからCのグループへの脱国は何人でも可能だが、Aのグループから2人Bのグループから3人がCのグループに脱国をすることはできない。


・体育館に情報屋が存在する。金を支払えば、その金に見合った情報を買うことができる。得られる情報は時間経過によって変わる。


・暴力行為は禁止である。もし暴力行為が発見された場合、ペナルティを与える。


・教師に対してはルールに関する質問以外できない。もし行っても教師が回答することはない。


・個人に課されたペナルティは試験終了時その個人が属したグループに適用される。例えば、Aグループの人間が暴力行為を行った後にBグループに脱国した場合、試験終了時に属したグループであるBグループがペナルティを受ける。


〇試験日程


・1日目    ・・・ 08時00分~12時00分 試験説明、試験準備

            13時00分~15時00分 他グループとの顔合わせ

            15時00分~19時00分 試験時間

             


 2日~4日目 ・・・ 08時00分~09時00分 他グループとの顔合わせ

            09時00分~12時00分 試験時間1

            13時00分~19時00分 試験時間2

 

 5日目    ・・・ 08時00分~09時00分 他グループとの顔合わせ

            09時00分~11時00分 試験時間

            11時00分~11時30分 暗殺時間

            12時00分~12時30分 試験結果発表





 つまり要約すると、製品を加工し、できるだけ資金を得てグループで1位を目指すというゲームだ。しかし、グループで勝つ以外にも1人だけで勝つ手段がある。それが脱国である。脱国はグループで勝つ以外の選択肢である反面、脱国先の国にデメリットがあるためそう簡単に行うことはできないといったところか。


 なるほど。このルールならば.....


「試験説明については書かれている通りだ。説明に関して何か質問はあるか?.....ないようだな。では早速今から12時までの間、試験準備を行ってもらう。」


 こうして説明が終わり、試験準備が始まった。






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