第5話放課後 続

 夏凛も風呂を上がると琴音はソファーに座り、スマートフォンをいじっている。気が付かれないように背後に回り一気に抱きついた。

「いぇーい! 琴音ちゃんってお泊りするの初めて?」

 ふわっと自分と同じシャンプーの香りがする。甘い香りだ。普段友達なんか家に呼ばない夏凛にとってはこれが初めてのお泊り会なのでドキドキと鼓動している胸の音を聞かれないように素早く離れた。

「うん、初めてだよ。…やっぱドキドキするんだよね…夏凛ちゃんは初めて?」

 琴音自身も本当に初めてなのでドキドキしている。SNSの知り合いに何を話せばいいか聞いていわゆる”会話デッキ”を作っているところに夏凛が突撃してきたのだ。幸い小刻みに飛び跳ねたのと心臓の高鳴りは気が付かれていないようだ。携帯をそっとしまってさっそく会話デッキの一つを切る。

「寝るときってどうするの? お布団?」

 夏凛は数秒硬直した後に考え始める。

「私の部屋ベット一つなんだよね…お布団もないし…」

 しんと静まり返った空気が部屋を包む。戸建て2階建て屋根裏付きで豪華なのに来客をほとんど想定していなかったのである。と、いうのは夏凛の嘘で本当は母親の部屋のおしいれに布団が入っているのだ。しかし一つやってみたいことがあった。それは、”友達と同じベットで寝る”というものだそこまで広くないベットなのでかなり密着することになるかもしれないがやってみたかったのだ。

「わ、私のベットで一緒にねねね寝ない?」

 嚙んだ上に声が裏返ったが意思を伝える。

「か、夏凛ちゃんのベットで⁉ わ、私なんかこことかでいいよ⁉」

 ソファーを指さす琴音に向かってブンブンと首を横に振る。

「そんなのだめ! だったら私がソファーで寝ちゃうよ!」

 結局10分ほどお互い譲らなかったが最終的に琴音が折れて一緒の布団で寝ることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花野学園高等学校 小雨(こあめ、小飴) @coame_syousetu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ