第4話放課後 夏凛の家にて

 荷造りをし、ドキドキしながら夏凛の家へ向かう。生まれてこの方人の家に泊まりに行ったことがないので初めてのお泊り、それも(たぶん)好きなこの家、緊張しない方が難しい。スマートフォンのメールに書かれた住所に向かって歩き始める。自然と早足になってだいたい30分くらいで夏凛の家につく。表札には音葉と書いてある。そういえば自己紹介の時にちゃんと苗字聞いてなかったなと思いつつチャイムを鳴らす。

「夏凛ちゃーん来たよー」

「あ、琴音ちゃん!鍵開いてるから入っていいよー!」

 言われた通り玄関を開け中に入る。2階建ての夏凛宅の奥から夏凛がぱたぱたとスリッパを鳴らしながら何かをやっているのが見える。そちらに向かうと夏凛がせわしなく動いている。料理をしながら制服のアイロンがけをしている。さらにはテレビではニュース番組がやっておりマルチタスクが得意なんだなと感じる。

「琴音ちゃん!ちょっと散らかってるけどソファー座ってていいよ!」

 この香りからして料理はシチューだろう。春とはいえまだまだ肌寒い今日にはぴったりの料理だ。目の前でやっているニュースでも寒冷化が問題視されており、丁度地下都市150階層の小説は予言なのではと取り上げられていた。注目される前から知っている自分がちょっと優越感を感じる。

「あ、今ちょうど地下都市シリーズが脚光を浴びてるんだよね~私たちの方が先に知ってるしなんか得した気分だよね~。あ! お風呂先に入っていいよ! シャンプーとリンスあるから好きに使ってね~」

「わかった、ありがとう」

 琴音は持ってきたカバンから着替えを取り出し風呂場へ向かった。それを横目で確認しつつ夏凛は夕食の準備を続けた。

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