第3話2限目、化学
再びチャイムが鳴り、廊下にいた生徒が教室へ戻る。生徒指導の先生にどやされながら戻っていく生徒もいた。女学部だからか先生はある程度の校則違反を見逃してくれることもある。
「早く戻らないと校則違反指摘するわよ!」
がこの学校の生徒指導の先生の口癖だ。2限の化学はおじいちゃん先生愛称は「じいじ」と呼ばれる学内人気男性教師ランキング第3位に君臨する先生だ。ほんわかした喋り方とまったりした動きが特にみんなから愛されている。かっこいいというよりはかわいいという感じでランクインしている。
「え~この方程式はHが最初に来て……あとわかる人は挙手~」
といった自主性を試す先生でもある。一部層は先生ガチ勢がいるので手が上がらないという事態に陥る事はそうそうない。夏凛と琴音は特にガチ勢ではないため手はほどほどに上げる。毎回ではないが、彼女達が内申点に響かない程度に挙手をした。琴音はノートを取りながらも夏凛の方を見る。夏凛は熱心にノートを取りつつ何かを描いている。チラッと先生に当てられて立った時に見えたがどうやら絵を描いているようだった。
「この元素はFとHがくっついて……とチャイムが鳴ったので今日はここまで~。号令係さんよろしく~」
終業のチャイムでしっかり授業が終わるのも彼が好かれている理由の一つだ。授業が終わってさっそく琴音は夏凛のもとへ行く。
「夏凛ちゃん、授業中から見てたけど、何描いてたの?」
そう聞くと彼女は画用紙に描いた絵を見せてくれる。
「あの小説の風景に琴音ちゃんを入れて書いてみたの! 今度コンテストに出してもいいかな?」
そういわれてドキッとする琴音、しかし彼女をさらにドキドキさせる事項が夏凛の口から飛び出す。
「あ! 今日うち親いないんだ! よかったらうち……来ない?」
その場で卒倒しそうになるのを抑えつつどうにか正気を保って返事を返す。
「コンテストイイね、あとおうち行っていいなら帰ってすぐ準備していくよ」
嬉しそうな夏凛の笑顔が頭から離れず残りの授業は全く頭に入ってこない琴音であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます