第29話 自習室、始めました その1

「こども食堂、ですか?」


「うん、夏休みの間。明日から始める予定なんだ。初日だからどれぐらい手間が掛かるか解らないから、良かったら明日だけでも手伝ってほしいんだけど?」


「っ行きますっ!!毎日行きますっ!」


観覧車の見えるホテルからの帰り道の車中、綾乃は食らいつくように返事をしてきた。


「4時半開店で5時半まで勉強した子に夕食を振る舞おうと思ってる。予約制にして、全部無料にする予定で付き添いの大人にも無料で。明日は5人予約入ってる。当日予約OKにするかは考え中。」


切っ掛けは、ランチの売れ残りパックを買いに来ていた女のコ。そう、100円握りしめてナポリタンのパック買いに来た子。


先日、夏休みの話題になり、その時


「もうすぐ夏休みだね、楽しみだね?」


「……休みは嫌い、給食ないから嫌い!」


決して貧しいだけではなく、色んな事情で食事に不自由している子供達や、一人で寂しく済ませている子。

自分の手の届く範囲だけでも、出来る事をやってみようと準備を始めた。


幸い、場所はある。予算も食材も問題無い。人材は自分で動けば良い。

金曜日には、週末の分の食材を持たせるかな?

見切り発車で始めて修整していくつもりだ。


「ありがとう、明日は4時に店に来てくれる?」


「わかりました、助っ人呼んで良いですか?勉強見る子も要りますよね?」


「………それは、気付かなかった、ありがとう。お願いするね。」


やっぱり、綾乃は優秀なんだね。

今の綾乃は、さっきまでのベッドの上での彼女とは別人のようだ。

どっちが本当の綾乃なんだろう?




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