第25話 大人の階段

下降を始めた観覧車の中で、溢れ出す嬉しさを堪えきれない私。


初めて好きになった人にデートに誘われ。

初めて好きになった人とショッピング。

初めて好きになった人と手を繋いで歩き。

初めて好きになった人と食べ歩き。

初めて好きになった人と一緒に自撮り。

初めて好きになった人と………………


そして、突然のプロポーズ。


今日の出来事を振り返るだけで、笑みが零れる私。


二人で抱き合ったまま過ごし、降車位置が近付いた所でもう一度軽く唇を交わし、離れて座り直して手を握りあった。


降車後、お昼ごはんがまだだった事に気付いた私達。

やっぱり、二人とも緊張してたのかな?


モールに戻り、フードコートで軽く腹ごしらえ。二人向き合いながら饂飩を啜った。

こんな些細な事も、嬉しくて堪らない。


食後、手を繋いてウインドウショッピング。

何を買うでもなく、二人で気になったお店を覗いて歩いた。


車に戻り、シートベルトを締めながら尋ねられた。


「綾乃さん、門限は有る?」


「ありません、お泊りも連絡すればオッケーです!あと、綾乃と呼び捨てでお願いします!」


「………呼び捨ては分かったが、最初からお泊りは?」


渋いお顔のいちろうさん。


「僕も、いちろうさんではなく、他の呼び方でお願い、その呼ばれ方はトラウマが有ってね?」


「では、ジンさんで良いですか?」


「うん、結婚して子供が生まれるまではそれでお願い。」


国道を走らせながらの会話。

最寄りの高速インター付近の、お城の様な建物が建ち並ぶうちのひとつに車を入らせた。


彼が受付でルームキーを受け取り、エレベーターに乗り込む。

ニコニコ顔の私に、彼が、


「嬉しそうだね!テンション高くない?」


「はい!だって、初めて好きになった人と、たくさんの初めてがあったんですから。それに、これからの初めてを思うとホントに嬉しくて!」


部屋番号を確認し、彼に促されて、私は大人の階段を登るための扉を、開いた。

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