第16話 姉と、弟と、 その5

「………やっぱり、貴方は、良い人ですね。」


「良い人では無いよ、大人なんだよ?」


彼は、少し首を傾げながら、


「今日、此処に来る前に少し貴方の事を調べさせていただきました。貴方の事を、悪く言う人は、一人も居ませんでした。」


ちょっと、びっくりした。

彼は、今日、此処に思いつきで来たとばっかり考えてた。

ここからは、更に真剣に答えないと。


「『良い人』という評価は、決して褒め言葉では無いことは解っているのかな?」


「え…」


少し、真面目モードでの、強めの問いかけに戸惑う彼に、今度は優しく伝える。


「初めて会う人や目上の人や、特に、親しくなった異性には絶対に『良い人』は言っては駄目だよ。怒られたり、傷つけたりするから。」


意外そうな彼に、


「君も、もう少し大人になって他人や異性と深く付き合うようになれば解るよ。」


まだ、不思議そうだな。


「大人になってから付き合いが深くなると、時に傷つけ合ったりするよね?避けられない理由で色々有るからね。そんな時、本気で本音でぶつかれるかどうかが、親友なり恋人なり夫婦なりの在り方だと僕は思うんだ。『良い人』という表現は、良くない答えだと僕は思う。」


「真剣にお話しいただき、ありがとうございます。」


なんとか、少しでも伝わったかな?


「それで、君の最初の質問の答えだけど、」


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