第6話 ドキドキが止まらない

「いつもご利用ありがとうございます。朝御飯は、いつも何処かのカフェですか?」


連休明けの土砂降りの月曜日、憂鬱になる条件が全て完璧に揃ったその日に、私は、とある開店前のカフェのテーブル席にいた。

いつもなら、挨拶程度の対応のマスターからサラッと何気ない感じで、声をかけられた。


「はい、前は駅前のファーストフード店だったのですが、落ち着かなくて。こちらはゆったりできて学校も近いので贔屓にさせて頂いてます。」


声、震えてなかったかな?

いつものクールな感じで話せたかな?

ドキドキが止まらない。

顔、赤くなってない?


手が震えないように気を使いながら、コーヒーを一口。


きっかけは、新学期が始まった後の、最初の土曜日。

新生徒会役員の選任準備の為に早朝から学校へ向かう私。

信号待ちで、何気なく目に入ったレトロな感じのカフェ。

店内の、男性と、目があった。

まだ、打ち合わせの時間には少し早かったのもあって、本当に、なんとなく、店に入り、促されるままに、テーブルについた。


マスターの、声に、惹かれた。

そして、翌週から、通い始めた。

私好みの容姿ではなかったはずなのに、毎日のように、通った。

私、どうしちゃったんだろうと思うほど、通い詰めた。


そして、今日、初めて、挨拶以上の会話。

嬉しかった。

舞い上がりそうだった。


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