第11話 恋する方

岸辺では心配そうに織姫様が、身を捩るようにそんな光景を見守っておられます


高く結い上げた美しき長い黒髪

裳裾を引く素晴らしき絹のお衣装


でも心配と二年に及ぶ哀しみで、少しおやつれになられし臈長けた容姿は


ひとめ見るなり

どなたも「おいたわしい……!」と涙するに充分でございました



「私たちの我が儘に申し訳のうございます」


「!何を仰るやら

〜必ずや……

今宵こそは彦星の君にお会い出来る様、全身全霊にて姫君をお助けする次第でございまする」


ウルッと涙ぐむ織姫に皆はより心を強く誓ったのです


気の遠くなりそうな二年越しになる、愛しき人との大切な再会の『約束』を


絶対にこの慎ましい方の逢瀬を


今年こそ叶えると気持ちを一つに合わせたのでした



「ではナタ三太子、其方の弓の実力を我は信じている」


「それは光栄だな、我が生涯の友、顕聖二郎真君」



うっとりと強く真っ直ぐに信頼する強い視線に、ツカツカと顕聖二郎真君は近づくと


グッーーーっと、力強い誠の友情の証の抱擁を返しました


「それがしも、其方は特別の盟友だ」


急に真っ赤に頬を染めて視線を外した知己に、柔らかな心に染み入る微笑みを顕聖二郎真君は投げかけました



顕聖二郎真君は先祖伝来の剣でドンッと、地面を力の限り突きました


するとどうでしょう……!


得意の”変化の術”で、1本の〜

 

神の力みなぎる素晴らしい美しき金の矢に、自らの姿を変えたのです



「ではいよいよ私の出番だね」



弓の名手であられしナタ三太子

自身の親友の変化である金の矢を、決して怯むこと無く愛用の、強靱な強い力を放つ弓の弦につがえました


美しき金色の矢の尾には神通力宿る、ウサギさん達が大急ぎでペッタンペッタン全力でグループ総出で臼でついた柔らかなお餅〜


チャンと二筋にし

しっかりと頑丈に結わえつけてありました


ナタ三太子はスゥと息を大きく吸い、精神を統一させて、気持ちを整えます


天の川の対岸へ届けと


清廉な見事な立ち姿で、ビン〜〜〜〜!!


何事にも畏れること無く平常心にて矢を放ちました






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る