第10話 月兎の秘策

お月様に住むウサギさん達の、ペッタンペッタンつくお餅は、魔法の、特別の、神通力の籠もるウスキネ


元々神様しか食べられない、天帝陛下からの下賜されし絶大なパワーが備わった特別のお餅だったのです



フワフワモフモフの、小さな可愛らしいウサギさんは

あの時、勇気を振り絞り居並ぶ天の神様の前でこう進言したのです



……


「わたしたちがついたお餅ならば、どんなに細くなっても一度伸ばしたら、鋏や包丁以外では千切れたりいたしません


とっても長く、何所までもしっかりとビュンビュン、陛下から戴いた神通力にて伸びるのです


例え〜蜘蛛の糸の様に目に見えなくなっても頑丈で丈夫で、温かく〜柔らかな内ならば!

きっと天の川の向こうまで、びゅ〜〜〜んと切れずに必ず伸びてゆく事でしょう


しかもヒンヤリ冷めてカチコチに固くなれば〜!

必ずや立派な橋の土台に成りましょう



天の神様の どなたかが、天弓の優れたお力で

川岸の向こうまで矢尻と繋げ、ひと息に飛ばしてはくれませんでしょうか?


でも『今宵』だけ……!


お餅の力は残念ながら、もって一夜だけです


天の川を覆う清らな朝露の湿り気で、固い『お餅の橋』は明け方には、儚くとろけて全て無くなってしまう事でしょう


ほんの僅かなひとときの夢……!

ですが何物にも代えがたき大切な逢瀬


如何でしょうか?敬愛致します天帝陛下……」



勇敢なウサギさん達は、愛する者達の幸せを願い

小さなお鼻とお耳をピクピク震わせながらもぴんと背筋を伸ばし、織姫様と彦星君の為に心より頑張ったのです


とっても緊張し

シッポもおひげもピクピクぶるぶる震えました


でも一生懸命な小さなウサギさん達に天界の一番の貴公子〜顕聖二郎真君は心うたれ感服し

真心より手助けをすることに決めたのです




「これくらいあれば大丈夫でしょう」


ウサギさん達の頼みで、天の川の川岸には沢山の霊験あらたかな臼と杵〜


他は次々に、湯気がホワホワ立つまだ熱い炊きたての餅米が大量に、せいろに入れられドンドン次々に運び込まれます



「では先導は先ず鷹の姫君ーーー…

水先案内人は、美しき其方に宜しく頼もうぞ?」



「任せて下さいまし

鳥の王の名にかけて、お役にたってご覧に入れまする」




全ての準備が整うと、バサァと大きな美しき翼を悠々と広げ

気高き鷹の姫君はひと息に

 



ひらりーーーーー……

音も無く優美そのものの放物線を描いて、豪快に羽ばたき1つで飛び立ち


雲一つ無く、素晴らしく晴れた天の川対岸を目指し、彼女はあっと言う間に視界より見えなくなりました




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