第2話 今度の戦場(舞台)は、名古屋競輪!

「要件を聞こう・・・」

 デューク東郷のような鋭い目つきになるアリサ。

「キミってやつは・・・」

 競輪の神様は呆れた様子。


「まあ、いい。では、私と並行世界へ来てくれるね?」

「はい、行きます!そのつもりでお洒落をしてました!」

 先程の警戒心はどこへやら。アリサは調子の良いことを言う。

「やれやれ・・・」と、某SOS団の一員のような口調になる競輪の神様。


「では、早速だが並行世界へ向かおう・・・」

「イエーイ!」

 当たった金が自分のものになるとわかり、態度を一変させたアリサ。既に勝った気分でいるようだ。

「では、いざ!」と競輪の神様が言った瞬間だ。アリサは眩い光に包まれた。



                ※※※※※



 アリサが目を開けると、そこは見覚えのない公園だった。どこにでもありそうな、ごく普通の公園だ。そこでアリサと競輪の神様は二人で立っていた。

「んっ?」

 アリサは辺りを見回すが、ここが何処どこなのか、すぐに答えが出ない。

 アリサにとって、ホームバンクは立川競輪場。それ以外、頻繁に行く競輪場といえば、京王閣、川崎、松戸、西武園、平塚などの首都圏の競輪場。

 それらならば、一発でわかる。しかし、今回は違う。とすると、ここは少なくともアリサが普段訪れない競輪場だということになる。


 しかし、公園内や公園周辺には競輪場へ向かうであろう人々が多数いた。

「ここって・・・」

 アリサが何処どこなのかを考えていると、競輪の神様はヒントを出す。

「ヒント。豊臣秀吉、織田信長」

「名古屋か!」

 即答するアリサ。


「正解。簡単すぎるヒントだったかな?」と言う競輪の神様。

「なるほど。とすると、ここは中村公園ね」

 アリサはこの公園の名前も言い当てた。

 名古屋競輪場は公園にしている。それが『中村公園』。

 どれくらい隣接しているかといえば、真横にある。『磯野家のとなりが、伊佐坂いささか先生の家』というレベルで隣り合っている。


「えっ!待って。神様」

 アリサは競輪の神様に話し掛ける。

「名古屋で何を開催しているの?」

 アリサは今の天候と気温から、この並行世界の名古屋の季節が判断できなかった。それが判断できないと、何の特別競輪であるかも判断できない。

 名古屋といえば、真夏は凄まじい暑さで、かと言って冬場は積雪するほど寒い。しかし、今の体感から判断すると、暑いには暑いのだが、7月、8月のような過酷な暑さではない。


「この並行世界の名古屋は9月だ」

 競輪の神様は季節を教える。

「9月?えっ?これって、いつもと少し違う並行世界?」

 アリサは神様に問いかける。彼女は少々、混乱していた。

 少なくともアリサの暮らす世界では、9月の特別競輪といえば、GⅡの共同通信社杯となる。彼女が学生時代には、9月の特別競輪といえば『オールスター競輪』だった時期もあるが。


「ここはキミが今まで来ている並行世界と同じだ。今回、名古屋競輪場では共同通信社杯が行われている」

 神様はアリサに説明した。

「名古屋で共同杯なの?何か意外ね。名古屋なら、日本選手権競輪ダービー、オールスター競輪、高松宮記念杯競輪宮杯とか、GⅠを開催すればいいのに」

 アリサは率直な感想を述べる。

「名古屋で日本選手権競輪ダービーや、高松宮記念杯競輪宮杯ならわかるが、8月にオールスター競輪なんてやったら、みんな熱中症になると思うぞ」

 神様はアリサに言う。

「確かに・・・。競輪じゃないけど、以前8月の名古屋に来たときは本当に暑くて死ぬかと思ったわ」

 アリサは本来暮らす世界の記憶を語る。


「まあ、細かいことは気にしないで、競輪場へ向かおう」

「そうね、そうしましょう」

 アリサと競輪の神様は中村公園から、名古屋競輪場へ向かった。

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