-Day.5-
ソファでいつものように眠っていると
突然体を揺さぶられ、目を開く
そこには、出かける準備が整った、
黒井の姿が映った。
「凪さん、こんな朝早くにどうしたんですか?
まさか、買い忘れとか…」
黒井は首を横に振ると続けて、
「いや、今日は少しばかり気分転換だ。
君もついてくるだろう?行くなら
早く準備してこい」
そう言って白咲を急かす、白咲もまた、
何かを言い返そうとするが、
それ以上に一体何処へ向かうかという、
好奇心に負け素直に着替える事にした。
────────────────────
何処へ向かうかも分からないまま、
黒井の後を追う、するとたどり着いたのは
前回通り過ぎたあの綺麗な街であった。
「凪さん…もしかしてここが
目的なんですか?…」
不安そうにする白咲に黒井は
「僕ァ…この街に特に用はない。
まぁ、ついてきてくれ」
白咲の手を引っ張ると一件の店に入る、
そこは見るからに高そうな服が並んだ
衣料品店であった。
「あ!凪さんは洋服が欲しかったんですね!
それなら私は外で待っておきます!」
店から出ようとする白咲、
黒井はすかさず白咲の手を引っ張ると、
「僕ァ…用はないと言っただろう?
今日は君が気分転換できると思って
来たんだ。それに、君は僕のアトリエに
来てから数日経つ…なら着替えが
足りなくなる頃合だろう?」
そう言うと、白咲は顔を赤らめながら頷き、
店の中に戻る。
「でも、私お金は…」
そんな事を口にするが黒井は
「気にするな、お金位は僕が出そう。
君はとにかく欲しい服を選んで来るといい」
と、言うと黒井はその場を離れようとする。
「待ってください!!」
店の中に響く位大きな声で呼び止める白咲、
黒井はビクリと反応をし、振り向くと
そこには真剣な表情の白咲が居た。
「せっかく、連れて来てくれたんですから
私に似合う服を選んでください!」
そう言うと今度は黒井の手を引き、店の奥へ
進む。
「僕ァ…服を選ぶセンスなんてのは
無いし、何より今の子達が着る服なんて
分からない。だから他を当たってくれ」
手を振りほどこうとする黒井。
「それでも良いんです。凪さんに選んで
貰ったという事が大切ですから♪」
その言葉を聞き、ため息をつくと
しばらく悩んだ末に、
一着の服を白咲に差し出す。
「僕ァ…どんな服が可愛いかなんて考えた
事は無い。が、君にはこれが似合うと思う」
そう言って見せたのは白いワンピースであった。
「凪さんはこういう服が好きなんですね…
いえ!なんでもありません!
ありがとうございます!!」
会計へ向かおうとする白咲と、やれやれと
後を追う黒井、
白いワンピースと、白咲が欲しいと言った
服を何着か購入し、衣料品店を後にする。
「いやぁ、楽しかったですね!
次は何処へ行きましょうか?」
そう言う白咲に対し、黒井は
「すまない、少し待っててくれないか?」
そう言うと、すぐさま店に入る。
20分程すると、紙袋を片手に持った
黒井が帰ってきた。
「待たせたね。じゃあ、次は…そうだな
カフェにでも行こうか」
黒井は1件のカフェを指差すと、
白咲と2人で入ることにした。
テーブルに案内され注文を聞かれる黒井は
珈琲を頼み、白咲に何を頼むか問いかける
「え!私ですか…私は…えっと、その…」
目線がメニュー中のパンケーキに
向いているのを見て、黒井は
やれやれと溜息を漏らし、
「すみません、彼女にパンケーキと紅茶を
1つ、以上で」
そうオーダーすると白咲がこちらを向いて
いるのに気付く。
「凪くんが何も食べ物を頼んでないのに、
私だけ頼むと、なんだか…
申し訳ないじゃないですか…」
縮こまっている白咲、黒井は呆れた表情で
「僕ァ…特に用はない。そう言ったのは
覚えているだろう?今日は君の為に
来たんだ。好きな様に楽しむといいさ」
素っ気ない素振りで返し、注文した物を待つ。
おまたせしました。そんな店員の声と共に
頼んだ物がテーブルに運ばれる。
「美味しそう!食べていいですか?」
先程の姿とは打って変わって、いつものように
明るく振る舞う白咲、黒井が頷くとすかさず、
食べ始める。やれやれと思いながらも
先程の話の続きをする。
「僕ァ…こういった店はあまり、慣れて
いないもので。何を頼めば良いかすら
分からないんだよ」
そんな事を言いながら珈琲を啜る。
余程以外だったのか、手が止まり、
白咲がこちらを見る。
「凪さんは相変わらずですね…
もしかして、私と一緒に居るの…嫌…
でしたか?」
不安そうにする白咲に対し、
黒井も溜息をつきながら、
「いや、そんなつもりでは無いし、
それなりに楽しませてもらってるよ」
そう言って、珈琲を飲み干すと、
席を立ち上がる黒井、その姿を見て
慌てて残ったパンケーキを食べ終わると、
白咲はすぐさま黒井の後を追いかけた。
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黒井はその後、他の店には寄らず、
アトリエの方向へ向かう。
何かが引っかかる黒井、
「相変わらず…?僕ァ…彼女に、この話を
1度でもした事があるだろうか」
そんな事を思いながら、アトリエに帰り着くと
明日の準備を行った。
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