幽霊の死
仲仁へび(旧:離久)
第1話
幽霊ってすでに死んでるから、もう死ぬ事なんてないと思ってた。
けど、幽霊でも死ぬ事ってあるんだな。
鎖にまきつけられてずるずるとひきずられている俺は、ぼんやりとそう思った。
隣では、はげちらかったサラリーマンっぽいおっさんが、盛大に嘆いている。
「死んでまでこんな目に遭うなんてあんまりだぁ~」
俺より先に鎖にまきつけられて、引きずられていたから、体のあちこちを痛そうにしていた。
一緒につれてかれるなら、もうちょっとかわいい女の子がよかったな。
しかし、ほんとびっくりだ。
俺は、俺達をつれて行こうとしている存在を見た。
まったく、死後の世界にも幽霊を……他人を虐げようとする存在がいるなんてな。
死んだ人間が生活する死後の世界。
そこでは、色々な考えを持った幽霊が生活している。
犬とか猫とか、心が芽生えたロボットとかもいるのはびっくりした。
大半の人間は、死んでまで争いたくないと思っているため、おだやかに暮らしている。
しかし、中にはそうでない人間もいるため、状況がややこしいのだ。
生前と同じく、幽霊にも格をつけなければ気が済まなかった者達が、あれこれ基準をつくって優れた幽霊とそうでない幽霊を分けて、差別しはじめた。
そんで、そうでない幽霊(つまり劣っている)幽霊を虐げて、あの世から強制的に排除すべく抹殺しようと行動しているのだ。
せっかくの穏やかな第二の人生なのに。
ここで死んだらなにもしないまま転生しちゃう。
やな世の中だねホント。
死後の世界だけども。
けれど、そういった連中をとりしまる奴等もまたいるわけで。
「その人達を開放しなさい!」
俺達を連行していこうとするやな奴たちに立ちふさがる者がいた。
可憐な少女だ。
その子は、凛とした顔つきの芯を感じさせる少女だった。
あの世の世界の中にあっても輝く、太陽のような少女。
心情的に助かったせいもあって、フィルターがかかったのか、一目で惚れた。
少女は鮮やかな身のこなしで不届き者をのした後、俺達に巻き付けられた鎖をといた。
「大丈夫? どこか痛いところはない?」
美少女の気配を近くで感じながら、(死んでるけど)死ななくてよかったと思った。お近づきになりたいからってのもあるけど、なにより。
「こんなハイスペースで死にたかねぇ」
だって、昨日死んだばかりなんだぜ?
そんなすぐに二回も死にたくないよ。
幽霊の死 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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