第22話

黎人は部屋に入ると、ベッドに寝転がった。

黎人は自分の言った事の重大さに気付いていた。


革命


権力体制や組織構造の抜本的な社会変革、あるいは技術革新などが比較的に短期間で行われること。


そこにどれだけの人が関わり、どれだけの人が血を流し、激戦を繰り広げるのか知っていた。


革命…重たい一言を放ってしまった。

黎人はその重圧に負けそうだった。

そして、逃げるかの様に、昔の事を思い出す。

それは走馬灯の様に、様々な事が脳裏に蘇った。


産まれた頃の幸せな時。

まだ両親にも祖父にも愛されていた時期。

目一杯の愛情をもらって育っていた筈だった。

しかし、それはいつからか崩れ、茨の道以上に辛い道を歩む事になった。

祖父は厳格な人で時に厳しく、時に優しく黎人に接した。王様としても民の声に耳を傾け統治していた。

母親は派手好きで、夫がいるのに日替わりで違う男と遊んでいた。

そんな母親に愛想を尽かして父親は離婚。王宮を出て行った。

それから母親は豪遊に豪遊を重ね、違う男を何人も入れ替わり立ち替わり、王宮に連れ込んだ。

その男達の何人かは、後に黎人に目を付け、王宮内で黎人に夜這いをした。

複数人で取り押さえられ、抵抗らしい抵抗も出来ず、されるだけされるがままにされ、黎人は処女を失った。

そして夜這いは途切れる事なく、顔触れも新たにやって来る。

いつしか黎人には月経が来なくなり、妊娠が発覚した。

王宮内にもそれはすぐに知れ渡り、母親は男を娘に取られたと激怒。

黎人は母親から罵倒され暴力を振るわれ虐待を受けた。

それでも夜這いは終わらなかった。

母親が再婚相手に連れて来た男も、黎人をエロい目で見て値踏みする。

義父となった男に何度抱かれたか分からない。そして、その頃には行為されている嫌悪感も無くなり、無心で夜這いを受け入れていた。

ただ自分の身体の中に何かが出入りするだけ、何も感じない。

そして、祖父はその頃には病気がちで床に伏せる事が多く、祖父の耳に黎人の事は入らなかった。

そして、祖父が天寿を全うし、いなくなると、黎人の人間関係は180度一変した。

義父が王様になると、政治も自分中心の政治を繰り返し、民への不満も募っていっていた。

母親の遊び癖は直らず、やってきた男は黎人の元へ吸い寄せられるように、夜這いをした。

黎人はその中で何度も妊娠をし、中絶を繰り返した。

一時は性病にもかかり、治療に専念する時期もあった。その時期は苦しいなりにも、安らぎのある眠りについていた。

そんな事を繰り返して過ごしている時、黎人は夜中に突然襲われた。

いつもの夜這いではない。

母親が手招きして起こした誘拐だった。

それが黎人の奴隷の始まりだった。

誘拐されたその日に、魔法器具の手枷を付けられ、性行為をされた。

しかし、黎人にとって、それは慣れた日常の事。嫌がる事もせず、されるがままの黎人に買った人間は返品をした。

そして、色んな人間の所を売られ、返品を繰り返し出会ったのは、大きな屋敷の主人。

その主人は、黎人を調教しようとありとあらゆる事をした。

主人は黎人に大量の媚薬を使い、無理矢理反応させ、楽しんだ。

叩いたり蹴ったりするのは当たり前。

言う事を聞かせる為、食事を抜いたり、衣服を着せなかったり、やりたい放題な調教をした。

その調教の成果か媚薬のせいか、黎人は感度が良くなり、その主人との行為で感じ、イク様になっていた。

身体はビクビク感じるものの、心はいつも辛く、やりたくない、嫌だと抵抗していた。そんな心の声も聞こえず、届かず、黎人は涙を流しながら主人との性行為に望んだ。

そんな時、エミリオが窓の外にやって来た。

エミリオは窓を魔法でそっと開け、気付かれない様に男に近づくと、男を一瞬で刺し殺した。

目隠しが取れ掛けていた黎人は、片目でその姿を見ていた。

「大丈夫ですか?」

エミリオは優しく黎人に言った。

「…あり、がとう…」

黎人は起き上がろうとした。

しかし、身体が思う様に動かない。媚薬のせいだった。

「起き上がらない方がいいですよ」

エミリオは優しく黎人の身体を触り制した。

黎人はビクッと反応した。

少し触れただけで、反応するこの身体に嫌気が差した。

「今、外しますね」

エミリオは黎人を横に寝かすと、手枷を外した。

「触っても?」

エミリオは黎人に聞いた。

黎人は頷いて答えた。

するとエミリオは黎人の頭の方を、優しく抱き締めた。

「探しましたよ、黎人。遅くなってしまい、申し訳ありません」

エミリオは黎人の耳元で囁いた。

「…エミリオ…」

黎人は昔良く遊んでくれていた兄の様な存在の人を思い出した。

とある貴族の出で、今は潰れてしまった名家の長男。

黎人のお世話係だった人物、エミリオだった。

「覚えておいでだったんですね」

エミリオは嬉しそうな声で言った。

「ああ…」

「時間がありません。黎人、少し触っても?薬、抜きましょう?これじゃあ逃げる事も出来ません」

エミリオが今の状況を素早く説明する。

夜襲に乗り込んで来たこと。

他にもいる奴隷達の解放。

夜明けまでがタイムリミットであること。

黎人はそれらを聞いて全てを納得した。

そして、黎人はエミリオに薬を抜いてもらう事を決めた。

エミリオはそれを聞き、了承。

エミリオは素早く手を動かし、黎人の色々な部分を刺激する。

黎人は思わず声が出る。意に反して感じてしまう。それは多量に使われた薬のせいだった。

一通り薬を抜き終え、エミリオは黎人と部屋を出た。

屋敷内は夜襲を受け、慌ただしくなっていた。

エミリオと黎人は、奴隷達がいる地下室に向かった。途中、屋敷の兵達に見つかり何度か戦闘もあったが、エミリオが全部一人で倒していった。

地下室に着くとそこには多くの奴隷達がいた。

殆どが肉体奴隷として扱われている天使達だった。

エミリオは皆んなの手枷を外し、一箇所に集めた。

その時、地下室の扉が開き、天使が入って来た。

その天使は性奴隷になっていた天使達を連れていた。

「ナイスタイミングです。エリオル」

エミリオはその天使の事をエリオルと呼んだ。

「もう追手が来る。急ごう、兄さん」

エリオルは後ろを気にしながらエミリオに言った。

エミリオとエリオルは兄弟だった。

「ええ」

エリオルは短く答えると、エリオルと一緒にワープの魔法を使い、脱出した。


その後は王宮に戻り、静養に励むつもりだった。もう夜這いも性奴隷も無いと思っていた。

しかし、婚約者である透に逆恨みされことで、また、性奴隷の続き事の様な事をされた。

その場はエミリオが助けたが、エミリオはいつも絶対に助けられる保証は無いと考えた。

そして、黎人を自分の側に置く事に決めた。

エミリオがエリオルと始めていた事業。なんでも相談事務所に黎人を匿う事を決めた。

エリオルは独自に殺し屋団体に所属しており、事務所に立ち寄る事は少なかった。殆どエミリオが一人で運営していた事務所だった。

エミリオはあの屋敷で肉体奴隷にされていた、小豆沙と菜豆那を選び、事務員にした。

それがあの事務所の始まりだった。

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