第18話
由里子は応接間スペースのソファーに腰掛けた。その隣にはエリオルが座り、向かい合わせにエミリオが、隣に黎人が座る形となり、小豆沙と菜豆那は自分の事務机で話を聞いた。
「んんっ、…ちゃんと答えて下さいね、話になりませんから」
由里子は咳払いをし、自分を落ち着かせてから優しく黎人に言った。
「断る」
黎人は即答した。
「聞きます」
由里子は言い返した。
「………」
黎人はソファーの肘掛けに肘をつき、頬杖を付いてムスッとした顔をした。
「えっと、天使界の歴史は自分で調べたので、ある程度は分かりました。エミリオさんが裁く法律が無いと仰っていましたが、何故なんですか?王様が危惧して世界を分けたんでしょ?」
由里子は少し落ち着いて聞いた。
「……….」
全員が黙った。
「答えて下さい」
「何故?お前がそれを知ってなんになる」
黎人は由里子を睨んだ。
「私は知らないのが嫌なんです。教えて下さい。知って問題を解決出来るように頑張ります」
由里子は真剣に答えた。面接でもしている様だった。
「人間のお前に何が出来る」
黎人は嘲笑う様に言った。
「人間だからこそ出来る事もあると思うんです。私は人間の立場から、奴隷にされている天使達を助けたいんです」
「お前の助けはいらない」
黎人は低い声で一蹴する。
「何故ですか?人間が嫌いだからですか?でも、人間にだって、いい人、悪い人はいます。天使の人だってそうなんじゃないですか?」
由里子は少し怒った声で言った。
「だから両方嫌いなんだよ。私はどちらも信用していない」
黎人は怖い顔をして言った。
「何でそんなに極端なの?いい人もいるんだから、信用したっていいんじゃないの?」
由里子は理解出来ないと言った顔をした。
由里子の言葉に、黎人は様々な記憶が蘇る。
「お前に何が分かる」
黎人は心の中で舌打ちをし、嫌そうな顔を睨んだ。
「分からないから聞いてるんじゃない!」
由里子は堪らず声を荒げた。
「お前に話す事なんてない」
黎人は冷たく言った。
「なんで!?」
由里子は驚愕した。
「もう私は誰も信用しないと決めたから。言ったって無駄だろう?」
黎人は冷酷に言う。
「最後に私を信用して!絶対に裏切らないから」
由里子は黎人の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「そうまでして何がしたい?」
黎人は冷ややかな目をして言った。
「助けたい!」
由里子は素直に言った。
「………」
黎人は頬杖をつきながら、隣にいるエミリオを見た。
「黎人の好きなように、したい様にして下さい」
エミリオは優しく微笑んだ。
黎人は由里子に向き直った。
「じゃあ、死ね」
「急に、辛辣!」
由里子は突っ込む様に驚いた。
「私はお前を許さない。信用するつもりもない。話は終わりだ」
黎人はそう言うと、席を立ち事務所の奥の自分の部屋へと姿を消した。
「えっ!?ちょ、ちょっと、待って!」
急な退室に、由里子は戸惑い声を上げた。
「以上ですね、黎人が話さない以上、我々も何も話す事はありません」
エミリオが冷静に言った。
「俺は帰る」
エリオルは立ち上がり言った。
「はい、またよろしくお願いします」
エミリオが立ち去るエリオルに声をかけた。
エリオルは無言で手を振り事務所を出ていった。
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