第8話
「そんなことが…」
由里子は歴史書を読み進め、思わず声がもれた。
(じゃあ、あの偉そうにしてた天使も一緒にいた二人の天使も奴隷だったってこと?いや、でも、心を病んだ人かもしれない)
由里子は考えた。難しかった。ただ黒い羽があるだけで、元奴隷と決め付ける事はできない。ましてや心を病んだのかも聞きづらい。
由里子は、そりゃ、世間は簡単な方、元奴隷だろうと決めつけに行くだろうなと思った。
天使の歴史は分かったが、何故今回由里子に声が掛けられたのかが分からなかった。
天使との関わりもない由里子がどうして天使を売りつけられたのか…
由里子は昼まで考えたか分からなかったので、一度図書館を出て、昨日天使に会った路地へ向かった。
そこで、誰もいない路地に向かって言葉を発した。
「ねぇ、昨日あった天使の人に会いたいんだけど」
由里子は、そこでまた会えるのではないかと、物は試しに声に出して言ってみたのだ。
菜豆那はそれを空から聞いていた。
大きい屋敷の部屋の一角から、女性の声が聞こえてくる。
「やめて、くださいっ、ああっ!」
黒い羽を持つ女性は嫌がる声で言い、精一杯もがいた。
しかし、女性は2人の白い羽を持つ男性に押さえ付けられ、身体中を触られていた。
服はビリビリに破かれ、肌が露わになっていた。
その女性は黎人で、男達は透と千隼だった。
透は黎人の婚約者で、千隼は透の友人だった。
そして、これは、黎人が奴隷から解放されたばかりの頃で、屋敷で静養している最中の事だった。
透が主導になり、黎人の陰部を触り弄ぶ。黎人は涙を流し、必死に声を上げるが、広い屋敷にそれは届かない。
透達は好き勝手に黎人の、身体をまさぐり、弄ぶ。
黎人は必死に抵抗するも、男2人の力に敵うはずなく、一方的に弄ばれた。
「いいぜ、お前のその抵抗する声、ゾクゾクするぜ。そうやって、おっさん達にも媚び売ってきたのか?」
透がニヤニヤして、黎人の身体中をまさぐりながら、言った。
「おい、答えろよ」
黎人が答えずにいると、千隼が黎人の頬をパシッと、平手打ちをし叩きながら、答えを催促した。
黎人は恐怖と痛みに顔が歪んだ。
中々答えない黎人に、千隼は何度も何度も頬を叩き、答えを促した。黎人の頬は次第に赤くなっていった。
「これは、お仕置きしないとな、俺というものがありながら、こんな風におっさん達に股広げてたんだろ?」
透が黎人の股を大きく広げながら言った。
「いっ、いやっぁ」
黎人が震えながら反応し、声を出した。
「何が嫌だ?こんな時だけ喋るなよなぁ」
透は気に障ったのか、手を高く上げ黎人を殴ろうとする。
黎人は目を瞑り身体を強ばらせた。
しかし、いつまで経っても殴られる事はなく、恐る恐る目を開けてみると、そこには2人とは違うもう一人の白い羽の男性が立っていて、殴ろうとしていた透の腕を掴んで止めていた。
「なんだよ?」
腕を掴まれた透は振り向き、睨み付けた。
殴るのを止めた男は、何も言わず、軽蔑する様な眼差しで男達を睨んだ。
「あーあ、邪魔が入っちゃったねぇ、こりゃ冷めるわ、残念だねぇ」
黎人を抑えていた千隼は、黎人から手を離し、やれやれと言ったポーズでおどける。
その態度に、殴るのを止めた男は、さらに睨みを効かせた。
「おー、こわ」
千隼は、さらにおどける。
「チッ、行くぞ」
透は掴まれていた腕を振り払うと、悪態をつきながら部屋を後にした。
千隼もそそくさとその場を離れ、透に付いて部屋を出て行った。
「大丈夫…じゃないですね…」
男はさっきとは別人の様な優しい顔付きで黎人に声をかけた。その声には悲しさが混ざっていた。
黎人は、身体を丸め震わせ、泣いていた。
男は黎人に近付き、優しく抱きしめた。
その時、黎人はビクッと身体を反応させた。
「薬…使われましたね」
男はその反応で黎人が媚薬を使われている事を悟った。
黎人の身体は薬のせいで敏感になり、身体も火照り、心拍数が上がっていた。気持ちに反して反応する身体。何度味わっても気持ちのいいものではなく、嫌なのに反応してしまう自分にも嫌悪感を感じてしまう。やっと奴隷から解放された筈なのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか、どうして婚約者とその友人から、奴隷と同じ仕打ちを受けなければならないのか、黎人は訳が分からず涙が止まらなかった。
男はそんな黎人の姿を見て、眼に涙を溜め潤ませた。辛かっただろう。どれ程の苦痛や屈辱を味わい、雪辱を果たしたかったか、想像するだけで涙が滲む。そんな黎人を助けられなかった自分にも嫌気が差す。
「薬、辛いでしょう。少し触っても?」
男が黎人の耳元で囁いた。
この薬の解毒薬はない。薬が身体から抜けるのを待つか、一通り事を致して、薬を外へ出す方法しか無かった。
男は後者の方法を取ろうとしたのだ。
薬が自然に抜けるには使用量にもよるが酷いと2、3日かかり、そこから体調を万全に戻すまで1週間はかかる。だから、薬を使われたら、一通り抜いてあげた方が、その時だけで楽に済むのだ。
黎人も何度も使われている身。後者がいい事は身体で分かっていた。
「おね…がい。エミ…リオ…」
黎人が男を見つめ涙を流しながら言った。
その男はエミリオだった。
「黎人…」
エミリオは了承し、彼女の名前を優しく呼び、静かに口づけをし、涙を流した。
そして、口づけをしたまま、目を閉じ、優しく黎人の身体の曲線を辿る様に触った。
ピクピクッと黎人は身体を反らせ、反応させる。
エミリオは優しく身体を触り、優しく陰部を触り、ゆっくり致していく。
ゆっくり、少しずつ襲われる感覚に、黎人は薬のせいもあり、ピクピク、ビグビグと段々激しく反応していく。
エミリオもそれに応えるように、動きを段々と激しくさせる。黎人の吐息とエミリオの吐息が混ざり、甘く幸福な空間へと変わっていく。
エミリオは優しくゆっくりと黎人と身体を一つにしていった。
黎人は、他の男とは違う優しい触り方、抱き方に、心地よさを覚え、初めての感覚に包まれ気持ち良くなり、喘いだ。
しかし、二人は分かっていた。これは全て薬のせいだと。
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