第4話

「そこまでにしろ」

その時、路地の奥から声が聞こえた。

2人の天使は振り返った。

その暗闇から出て来たのは4人。

黎人達だった。

「おや、誰かと思えば黎人ちゃんじゃないか。またおもちゃになりに来たのかい?」

天使の男は、嘲笑うかのように言った。

黎人を知っているようだった。

「その呼び方やめろ。虫唾が走る」

黎人は男を睨み付けた。

「おやおや、婚約者の友人にそんな口の聞き方していいのかなぁ?またお仕置きされたいの?」

男はニヤリと不気味な笑みで笑う。

「あの人はもう婚約者じゃない」

黎人は嫌そうに言った。

「それはどうかな?まだあいつは婚約者だと思ってるかもよ?」

男はクスクスと笑って言った。

「今はそんな立ち話をしている時ではありません」

エミリオが話を遮った。

「おやおや、黎人ちゃんの救世主、エミリオ登場ですか、これは楽しくなって来ましたねぇ」

男は嬉しそうに言った。

そんな話の後ろでは、女の天使が彼女に天使を薦めていた。

彼女は必死に断るも、女の天使が食い下がる。

困り果てていると、女の天使の背後に小豆沙が来て、女の天使の肩を持った。

女の天使はドキッとして少し振り返る。

「いけないよ〜天使売ったりしたら、ね、沙羅葉(さらは)」

小豆沙はドス黒く笑い、手に力を入れて、沙羅葉と呼んだ女の肩を強く締め付けた。

「いたたたた…」

沙羅葉はバツが悪そうに言うと、降参というふうに両手を上げた。

押し売りを受けていた彼女は、少し後退りをする。と、誰かにぶつかった。

振り返るとそこには、もう1人天使がいた。

それは菜豆那だった。

「大丈夫ですか?さ、こちらに」

菜豆那は戸惑いの声をあげる彼女を無視して、安全な場所に誘導した。

そして路地の隅に移動した時、同時に戦闘が始まった。

小豆沙と沙羅葉の戦いと、黎人、エミリオと男の天使の戦いだ。

沙羅葉は降参と見せかけ、反撃の隙を狙い、攻撃していた。小豆沙はそれに応戦し、戦闘に。

「今すぐ彼女達を解放しろ、どこにいる?」

黎人が男に向けて魔法を放ち、問い詰める。

「教える訳がないだろう」

男が魔法を軽々と避け笑いながら答えた。

「では、力尽くでも」

エミリオが剣を男目掛けて振り下ろしながら言う。

「おー、こわっ、暴力的だ」

男はこちらも軽々と避け、おどけた。

しばらく戦闘が続いた。

小豆沙と沙羅葉の戦いも武闘対決のようで、殴り合いをしていた。

「千隼(ちはや)〜この暴力女どうにかしてぇ〜」

この戦闘で初めに根を上げたのは沙羅葉だった。

だが、沙羅葉は余裕そうで、ただを捏ねているようだった。

千隼と呼ばれた男の天使は、やれやれと言うようにため息をついた。

「俺の相棒なら、もうちょっと頑張れよ」

千隼は攻撃を避けたり、仕掛けたりしながら、文句を垂れた。

「ムーリー、だってこいつ超ー力バカなんだもん。疲れちゃったぁ」

沙羅葉は小豆沙の攻撃を避けながら言った。沙羅葉は避けるだけで攻撃をしなかった。

「全く、2対4とは卑怯だねぇ、仕方ねぇ、今回は引くぞ、沙羅葉!」

「はーい!待ってました!」

沙羅葉は喜んで千隼の元へ向かった。

小豆沙もすぐに反応したが、沙羅葉の方が早く千隼の元についた。そして、それと同時に、千隼が煙幕弾を放ち、辺り一面白煙に包まれた。

しばらくして、白煙が消えて来ると、2人の姿はどこにもなかった。

「くそっ、逃したか、チッ」

黎人は険しい顔で言った。

その時サイレンの音が響いて来た。

この騒動で誰かが通報したのだ。

「面倒な事になる前にこっちも帰りますよ」

エミリオが撤収の声を上げる。

みんなは、エミリオに同意し、一斉に羽を羽ばたかせ、夜空へと舞い飛んだ。

その時、菜豆那は小冊子を持った彼女も一緒に連れ飛んでいった。

彼女は困惑した表情で、空へと連れて行かれた。

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