第3話
「最近はこんな感じの依頼が多いですよね〜黎人様」
事務所の扉が閉じ、少しすると小豆沙が言った。
「そうだな、それだけ奴隷商も活発なんだろう」
黎人はコーヒーを飲みながら答えた。
「それにしても、出来高報酬で、支払いはゆっくりでいいなんて、こちらとしては経営が深刻なのですが」
エミリオがコーヒーを飲みながら、小言の様に言った。
「耳が痛い話だな」
黎人が他人事の様に言った。
「あなたが取り決めているのだから、あなたの責任ですよ、黎人」
エミリオが少しムッとして言った。
「悪い、気を付けるよ」
黎人は悪びれた様子もなくそう言うと、菜豆那にコーヒーご馳走様と言うと、席を立った。
「どちらへ?」
エミリオが尋ねる。
「少し部屋で休む。仕事に行く準備はしといてくれ」
黎人はそう言うと、返事も聞かず部屋に戻って行った。
「全く、全部人任せなのですから」
エミリオが呆れたように呟いた。
「まぁ、やる時はやると言うかぁ〜」
「いざと言う時は心強いですから」
小豆沙がまぁ、仕方ないよねーと言う感じで言い、その後を菜豆那が引き継ぎ言った。
「そうですね、そうゆう事にしておきましょう」
エミリオがクスリと笑いながら言った。
そして、菜豆那と小豆沙に準備をするよう促した。
自身もコーヒーを飲み終え、準備をする為、事務所を後にした。
ー人間界ー
ここは、人間の世界。
日本の首都東京はいつも賑わっている。
夜は寝ない街と言われる程明るく、人通りも夜にしては多い。
金曜日は次の日が休みの人も多く、より繁華街は賑わいを見せる。
そんな金曜日の繁華街から少し外れた道を、疲れた様子で歩いている大学生の女性がいた。
(はぁ、課題多過ぎ、講義長過ぎ、疲れたぁ、遅くなっちゃったな、早く帰らないと)
彼女は大きくため息をつきながら、一人帰路を急いでいた。
丁度角を曲がり、少し暗い路地に入った。
いつもの通り道だが、今日は時間も遅くなり、いつもより暗く、彼女は少し恐怖を覚えた。
遅い時間の暗い夜道は、変質者も出やすい。しかも一人だ。出会したくないものだ。
そんな嫌な考えが頭を過っていると、空から白い羽が何枚か落ちて来た。
(え、羽…?鳥?こんな夜に…?)
彼女は目の前に落ちた白い羽を拾い、見つめた。
そして天を仰ぎみた。
すると空から白い羽を持った2人の男女の天使が舞い降りて来た。
「やぁ、そこの彼女、天使を使役したくはないかい?」
男の天使が声高らかに彼女に言った。
「え?天使?今時天使?」
彼女は困惑した。
昔、天使とは共存し、普通に一緒に暮らしていたが、現在は別れており、滅多に見る事のない存在となっていた。そんな中で出会うのは珍しいことだった。そんな天使がいきなり現れ、訳の分からない事を言う。困惑して当然だった。
「天使を使役して生活を豊かにしませんか?」
女の天使が彼女に近付いて言った。
「今時あるんだ、そんな勧誘…」
彼女は少し驚いて言った。
「ささっ、今ならよりどりみどり!選び放題ですよ」
男が小冊子を取り出し彼女に見せる。
「はぁ、天使ですか…って、いらない、いらない。そんなお金ないし、買う気もないし」
彼女はふと目にしたが、慌てて見るのをやめ、拒否する。
「そんな事言わずにぃー、1人いれば、すごーく役立ちますよー、人間の科学の力に、天使の魔法の力を使えばより生活は機能的、豊かに!」
女の天使はずいずいっと顔を近付けて、彼女に押し売りした。
「いいですって、そういゆの、間に合ってます!」
彼女は少し強めの口調で言った。
「そこまでにしろ」
その時、路地の奥から声が聞こえた。
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