第20話 パリプ エバさん★

《“氷雪の鎖帷子アイス・スノー・チェイン” 、“炎の指輪プロ・ファイア・リング”、“抗魔の首飾りマジックチャーム”、そして “魔女の護符アミュレット・オブ・アンドリーナ” ――わたしに炎は効きません》


 エバさんが魔法の戦棍メイスと盾を構えて、残る敵を見据える!


「……凄い!」


 わかっていたけど、理解していたつもりだけど、やっぱり凄い!

 単 vs 多の戦いでは詠唱の必要のない魔道具マジックアイテムの使用でも、危険な隙になる!

 知能のある魔物なら当然、その間隙かんげきに乗じるだろう!

 戦闘中の魔道具のなんてもってのほかだ!


 エバさんはケイコさんに “滅消の指輪ディストラクションリング” を渡す必要があった!

 彼女が使うことはできないからだ!

 “滅消” の魔法は複数の集団グループをまとめて塵にする、広範囲攻撃魔法!

 ポジショニング次第では、ケイコさんまで塵にしてしまう!

 だからエバさんはわざと炎の呪文を浴びることで魔物の隙を誘い、隙を現出させ、その隙を衝いてケイコさんに指輪をトレードした!

 ケイコさんに使わせた!


(この人は単独行ソロだけでなく、パーティプレイにも熟達している!)


 もう何度目かの鳥肌が立った!

 呪文の効果が切れて画面から、唐突に炎が消えさる!

 戦闘が再開される!

 

「残るはあと三人――えっ?」


 僕は

 一秒前までは確かに炎の陰に揺らいでいた “上忍ハイニンジャ” が消えていた!

 画面に映っているのは新たな加護の嘆願を始めた、ふたりの “高僧ハイプリースト” のみ!

 しかも――!

 

「あれは “呪死デス” の加護!」


 モンスター配備アロケーションセンターに挑んできた多くのパーティを返り討ちにしてきた、

 単体にしか効果がない代わりに、どんなに生命力ヒットポイントが高くても耐呪レジストできなければ、ただの一発で命が絶たれるの呪いの加護!

 “レベル7魔術師メイジ ” の呪文と同時に嘆願されるこの加護が、何人の探索者の命を奪ってきたか!


https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669171311730


 間髪入れずに “静寂サイレンス” の祝詞しゅくしを唱え始めるエバさん!

 これまで “呪死” の加護を授かった探索者はいないから、最低でもレベル9以上、第五位階以上の加護のはず!

 より祝詞の短い第二位階の “静寂” なら、充分に


(――でも!)


「エバさん、忍者が狙ってる!」


 瞬きの間を盗むように消えた忍者も、即死攻撃クリティカルを持っている!

 加護の嘆願に集中している聖職者は、忍刀の絶好の好餌だ!

 敵の狙いはエバさんひとりのはず!

 当然だ! 残る奴らは “滅消” の影響を受けないのだから!

 ケイコさんはエバさんを倒したあとに料理すればいいと思ってる!


「エバさん!」


 危惧は的中した!

 そして外れた!

 宙空に火花が散って一瞬だけ不可視の壁と、斬りつけた闇に溶け込む漆黒の着物を着た男が浮かび上がらせる!

 致命の一撃を阻止され、バク転で跳び退る “上忍” !


「“神璧グレイト・ウォール” を張っていた!?」


 でもそんな素振りはなかった! 絶対になかった!

 いったいいつの間に!?

 “高僧” の魔法を完封したエバさんが、胸元をぼんやり紫色に輝かせながら忍者を追う!

 

 バク転! バク転! バク転! バク転!

 

 《護り御壁よマツ!》


 今度こそエバさんが戦棍の魔力を解放した!

 何度目かのバク転の最中、不意に出現した障壁に激突する “上忍” !

 猫のようなしなやかさで転倒は回避したものの崩れた体勢を立て直す余裕はなく、瞬息で間合いを詰めたエバさんに覆面で覆った頭蓋を叩き割られる!


 それが事実上の、決着だった。

 残る “高僧” たちも手にする錫杖で果敢に殴りかかってきたが、加護を封じられた時点でエバさんの敵ではなかった。

 魔法の戦棍が二閃し、難攻不落を誇った警備部隊モンスターズは全滅した。


《はぁ……はぁ……》


 肩を上下させ、額に浮いた汗を拭うエバさん。

 “闇王ダークロード” との戦いでも顔色を変えなかったエバさんが、確かに消耗していた。

 でもそれも一瞬のことで、


《怪我はありませんか?》


 あっという間に呼吸を整えたエバさんは、ケイコさんに歩み寄って微笑んだ。


(なんて体力スタミナ……まるで強力なオート・リジェネでも掛かってるみたい)

 

《あ、あんたの方こそ、大丈夫?》


《“凍破ブリザード” の呪文を唱えられていたら鎖帷子や指輪が効かず、無傷ではすまなかったでしょう。運が良かったです》


《ごめん……結局、指輪を使う以外、なにもできなかった……》


《いえ、あれが戦いの流れを変えてくれました。ケイコさんが一度しか聞いていない真言トゥルーワードを覚えていてくれて助かりました」


《マカロニに似てたから、それで……あたし好きなんだ、パスタ》


 ギコチなくも、ようやく微笑むケイコさん。


『エバさんとケイコの初のパーティプレイ!』

『ケイコ、よくやった!』

『ケイコはやればできる子!』

『目覚めたケイコ!』

『I LOVE KEIKO!!!!』

『パリピ エバさん!』

『いや、それを言うならパリプ エバさん!』

『熟達のパーリープレー!』


 チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪

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 チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪


 いいねとスパチャの弾幕が、コメント欄を埋め尽くす。

 本拠地じゃないとはいえ、これまで無敵だった警備部隊モンスターズを初めて倒したんだから。

 それも当然だった。


《この先のチェックポイントを超えれば、レ・ミリアさんたちが全滅した玄室です。生きて再び地上に還りましょう》


 ケイコさんが再び表情を厳しくしてうなずいた。

 この配信もいよいよ、クライマックスだ。



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ご視聴、ありがとうございました

エバさんが大活躍する本編はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742

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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!

エバさんの生の声を聞いてみよう!

https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj

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