第15話 魔宮に魅せられし者
武器:聖女の戦棍 ¥75,000,000(7500万円)
盾:護るもの ¥250,000,000(2億5000万円)
頭:転移の冠 ¥25,000,000(2500万円)
鎧:氷雪の鎖帷子 ¥150,000,000(1億5000万円)
籠手:
滅消の指輪 ¥20,000,000(2000万円)
示位の指輪 ¥5,000,000 (500万円)
回復の指輪 ¥300,000,000(3億円)
棘の指輪 ¥15,000,000(1500万円)
炎の指輪 ¥250,000,000(2億5000万円)
抗魔の首飾り ¥200,000,000(2億円)
魔女の護符 不明
〆て………………12億3300万円。
エバさんあなたは……歩く身代金。
チャリン……♪ チャリン……♪ と入るスパチャもなんだか遠慮がち。
対照的にコメント欄は、
『凄い人、キタ━(・∀・)━!!!!』
『お金持ち、キタ━━(☆∀☆)━━!!!!』
『歩く “
『性能わからないけど、値段だけで凄いのがわかる!』
『詳しい説明プリーズ(≧∀≦)ノ!!!!!』
『
湧きに湧いた。
誰も見たことがない世界で初めて遭遇する魔物。
そして、アイテム。
レ・ミリアたちの再生回数とチャンネル登録者をバズらせ世界的なDチューバーに押し上げたのは、半年前に同じ三階で、世界で初となる魔剣を手に入れた配信だ。
“切り裂くもの” の
レベル1の戦士なら、攻撃回数は一回。
レベル5の戦士なら、攻撃回数は二回。
レベル10の戦士なら、三回攻撃できるようになる。
魔剣 “切り裂くもの” は軽量なため、さらに一回攻撃回数を増やすことができた。
攻撃回数だけに限っていえば、5レベル分の向上なのである。
このため “切り裂くもの” は+1の魔法の剣――魔剣と呼ばれていた。
さらにレ・ミリアは個人スキル “
このスキルは身軽な人間が希に授かることがあり、攻撃回数を一回を増加させる。
レ・ミリアのレベルは8、攻撃回数は二回。
“切り裂くもの” の性能で、プラス一回。
スキル “剣士” で、さらにプラス一回。
魔剣を手に入れたレ・ミリアはスキルと合わせて、合計四回。
実にレベル15の戦士と同等の攻撃回数を誇っていたのだ。
そして魔剣 “切り裂くもの” は、まだ世界でも数本しか確認されていない。
彼女たちのチャンネルが登録者数二〇〇万を数える、大きな理由だった。
《プラマイ表記ですか? ちょっと待ってくださいね――》
視聴者の要望に気軽に応えるエバさん。
《だいたいこんな感じです》
武器:聖女の戦棍
盾:護るもの 盾+3
頭:転移の冠 兜+1
鎧:氷雪の鎖帷子 鎖帷子+3(
籠手:
『プ、プラス5!!?』
『+5!!? マジデ!!?』
『+5MACE!!? AMAZING!!!』
『いやいやいや、盛り過ぎでしょ!!!』
『盾も+3……』
『板金鎧よりも硬い鎖帷子って……』
『それ全部この迷宮で手に入れたの!?』
『最下層は一〇階っていってたけど、何階で手に入るの!?』
『みんな自分で拾ったの!?』
『
《ほとんどはこの迷宮の一〇階で手に入りますが一部の品は、“ニューヨーク迷宮” や “ローマ迷宮” でなければ入手できません。入手した経緯ですが
《……どうして?》
《……え?》
《どうしてそんなにお金持ってるのに、迷宮に潜ってるの?》
不意の問いかけに、キョトンとするエバさん。
いつの間にかケイコさんが顔を上げていた。
僕はその思い詰めた表情に、とても……とても嫌な予感がした。
《そんなにお金があるなら、普通なら絶対にこんな所に潜ったりしない。異常だよ、あんた。死にたいの? 自殺願望があるの? 自殺志願者なの?》
『ケイコ、キレてる?』
『ケイコがおかしい』
『目つきが変』
『ヤバい、
『KEIKO is Hysterie?』
『Dungeon syndrome?』
コメ欄にも動揺が走った。
迷宮の緊張に焼き切れてしまった探索者が、ヒステリックな言動を見せることを、視聴者は
ダンジョン配信では決して珍しくはないシチュエーション。
(でも、よりにもよってこんな時に!)
《わたしは自殺志願者ではありません》
エバさんは鬼気迫る表情を浮かべるケイコさんに、穏やかに答えた。
《ただ、わたしは『こちら側の人間』なだけです》
《それって『向こうの世界の人』ってこと? だったら、あんたたちまとめて――》
《いえ違います。向こうの世界――アカシニアのことではありません。わたしのいう『こちら側の人間』とは、迷宮に生を感じる人間のことです》
《迷宮に生を感じる……?》
《そうです。迷宮に潜ることで生の実感を得る者。迷宮に――魔宮に魅せられし者》
《意味わかんない!》
《人は死ぬために迷宮に潜るのではありません。生きるために潜るのです。それでも多くの人にとって迷宮が忌むべき場所であることは確かです。いつかは離れて平穏な生活に戻りたいと切望する場所です。ですが――いるのです。探索者の中にはそんな迷宮に魅せられて抜け出せなくなってしまう者が》
《それが……あんたってわけ》
《あなたは違いますね、ケイコさん》
《当然よ、こんなところ大っ嫌い! 運さえ良ければ絶対に潜らなかった! 絶対に探索者なんかにならなかった! わたしだけじゃない! カズヤも、リョーくんも、味田さんも、みんなそう! でもみんな――みんな――!!!》
大粒の涙を零して激高するケイコさんに、世界中の視聴者が言葉を奪われていた。
誰も彼も理由があって迷宮に潜ってる。
そんな彼女たちの苦闘を安全な場所から視聴して娯楽にしているのが、ダンジョン配信なのだ……。
そしてエバさんは泣きじゃくるケイコさんに、静かに告げた。
《……だから、わたしのような迷宮保険員がいるのです》
・
・
・
クッ~……。
マイクがお腹の虫の小さな鳴き声を拾った。
《……やだ、チョー恥ずい》
ケイコさんが涙を拭って、鼻を啜る。
《身体が生きたいといっているのです》
《これ……もらうね》
エバさんがうなずく。
ケイコさんは半分に割られた “元気玉” にかぶりついて、あっという間に平らげてしまった。
感情の昂ぶりが治りケイコさんの身体が、生きることを思い出したのだろう。
それからエバさんはケイコさんに仮眠を摂らせた。
エバさん自身も目を閉じて、眠らないまでも体力と神経の回復をはかる。
視聴者はその間カメラを注視して、周囲の警戒に当たった。
質問もお喋りもこの間はなしだ。
ふたりが出発したのは二時間後だった。
《あいつ……まだいるかな?》
物音を立てないように慎重に玄室から出ると、ケイコさんが訊ねた。
扉の外に長く伸びる回廊に魔物の気配はない。
《わたしたちを見失った以上 “
《……納得》
《確率は五分五分ですが、勝率はそれよりも少し高いでしょう》
《……?》
《追われている探索者は地上に逃げ帰ろうとしますから、待ち伏せをするなら上りの縄梯子と考えるのが常道です》
《…………納得》
ふたりは地図を確認しながら、
足音を殺し息を潜めて “
やがて回廊の先に、四階への縄梯子が垂れる玄室の入口が見えてきた。
《どうやらこちらが考えていた以上に、賢い相手のようですね》
エバさんが立ち止まり、扉の前に立ち塞がる黄金の騎士を見つめる。
《一〇〇パーセント正念場です》
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ご視聴ありがとうございました
エバさんが大活躍する本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742
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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!
エバさんの生の声を聞いてみよう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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