第32話ユズの洗剤と商業ギルド

ユズが王都を離れ暫く経ち商業ギルドでは数は少ないがやっとユズのレシピ通り髪用洗剤リンシャーと身体や手洗い用洗剤ソフトソープが完成した。


ユズが置いていった見本より品質は悪いが、出来上がりを試した女性達は一様に驚いていた。


今までにない髪にツヤツヤ感と香りは十分満足のいく物だった。


しかし制作がまだまだ難しく量産ができずにいた。


出来上がった製品を前にクルーガー王国商業ギルド総責任者のロッテリナとシトラスト商業ギルド責任者のボナーラが考え込む。


「うーん何とかリンシャーが100個ソフトソープが100個出来上がったが試しに販売して様子を見るにしても値段をどうするか…安過ぎるとすぐに売り切れ騒ぎになるかも知れん。」


「確かにここは金額を高くして商品が品切れになる前に生産が追いつくのが一番いいやり方だと思う。」


二人は考えリンシャーを金貨1枚100,000ジエルソフトソープを大銀貨8枚80,000ジエルで販売する事にした。


しかも200ccほどの小さな小瓶での価格だから問題ないと思っていた。


しかし職員達は販売日は伝えず、近々妖精の洗剤を商業ギルドより販売する事を普段お世話になってる貴族や上級平民達に伝えていたのだ。


それからは毎日様子を見に来る者が日に日に増える。


責任者のボナーラも日に日に人が増えてる事に疑問に思いながらも、職員に販売当日完売したらどうするか尋ねられるも笑い飛ばす


「ハハハ…大丈夫だ金貨1枚の洗剤だぞ!いくら妖精ってキャッチフレーズあるからってそんな高額な洗剤簡単には売れないから心配ない!

恐らく次の商品が出来る頃くらいに噂になり売れ始めるだろう。」


職員達は実際使っないのでボナーラの言葉を信用して販売を始める


確かに販売当日は入って来た者全てあまりの高額に手を出さず悩むだけだった。買っていったのはヘルマン公爵家のメイド達と数人の貴族令嬢だけだった。


ところが次の日ギルド朝番の職員がオープン時間に門を開けに外に出ると、大行列ができていたのだ。


朝番のベレーナが慌てて中に入る


「皆大変よ!外!外に大行列が出来てる!誰かギルド長のボナーラ様呼んで来て!」


ベレーナの言葉に皆が慌て出す。確認に行ったキャンベラもすぐに中に入り並んでる人数を報告する。


「大変よ外に並んでる人数ざっと300人くらいいるよ!」


職員達もその人数を聞いて騒ぎ出す。


「まだ営業開始時間まで鐘一つもあるのに…300ってまだまだ増えるかも…」


「どうするのよ!」


「たぶん妖精洗剤とか玩具よ!数そんなにないのに…」


「オープンと同時に雪崩れ込むわよ!」


「どうするのよ!何か考えないと怪我人がでるわよ!」   


そこに責任者のボナーラと総責任者のロッテリナが入って来る


「お前達何を朝から騒いでるんだ!」


「昨日はあまり売れなかったから騒いでるのか?」


二人の言葉にキャンベラが呆れ外を指さし叫ぶ


「ギルマスもグランドマスターも外を見て下さい!大変な事になってます!」

 

二人は窓から外を見る


「なんじゃあれはーー!」

「おいおいー!大行列じゃないか!」


ベレーナは冷ややかに尋ねる


「妖精洗剤は高いから売れるのに時間がかかるんでしたよね。どうするんです。あの行列が他のポーションや薬湯、髪飾りのために並んでると思いませんが…」


ナミアが意地悪く二人に言う


「まぁマスターもグランドマスターも高いから売れないって言ってたから、試しに何も対策せず開けてみましよう。」

 

「そうね。万が一妖精の洗剤や玩具に集中したら怪我人がでるでしようけど、マスター達いるし問題ないでしょ。何かあってもちゃんと責任とってくれるでしよ」


二人は慌てだす。


「ちょっと待とうか!」


「そうだ!ちょっと待とう私達が悪かった!完全に誤算だ!」


その後営業開始時間までに話し合われ入り口で入る人数を制限し入ってもらい販売個数も一人1商品とし買えなかった者は次回の販売整理券を渡す事で話が纏まる。


営業開始時間になり扉を開けると待っていた者がなだれ込もうとするのを職員たちが必死に止め入場制限をする。


それでも文句を言う者にギルマスのボナーラが周りにも聞こえるようにはっきりと告げる


「妖精の洗剤、玩具はもし奪い合いなどのトラブルが起こったら二度とこの町には販売しないと警告されている!それでも2個よこせと言うのか!


他の者も皆同じようにリンシャーとソフトソープ2個ほしいと思ってるはずだ!

妖精様は争わなければ新商品も用意してくれる。だから妖精様にそう思わせるためにも争いはやめてくれ!」


ボナーラの妖精は争うなら二度と販売しないの言葉が効いたのか皆大人しくなる


ロッテリナが騒ぎが収まり安堵する。


「よくやったボナーラこれで安心できるな。」


そんな発言をしたロッテリナに商品登録部門のベレーナが問題が増えたと言い寄る


「グランドマスター何を安心してるんですか!もうこの時点で問題山済みですよ!のんびりしてる暇ありませんよ!


大至急妖精様を捜して次の商品のレシピをもらって来て下さい!

出来るなら妖精様の作った洗剤を大量に売ってもらってきてください!


ギルドの発注してる工房では作る数も少数しかできませんし、品質も悪いのです。本物のリンシャー使ったら商業ギルド製リンシャーは使えません。」


ロッテリナがベレーナの発言に驚き助けを求めるために周りを見ると、職員のほとんどが頷きベルーナと同じことを言って来る


「ロッテリナ様出来るだけ早急にユズ様に協力を求めた方がいいと思います。

特に洗剤は今のギルドの販売価格の10倍の値段で買い取って来ても売れます。それほどなのです。」


ボナーラが驚きブツブツ呟く


『マジかよそこまでの洗剤か?たかが髪洗うだけだぜ?普通の洗剤で十分だろ・・・』


それが聞こえた数人の職員にボナーラは激しく叱責される


「はぁー!髪は女性にとってお肌の次に大切なのです。妖精のリンシャーを使えばもう二度と前のごわごわの髪になる洗剤は使えません。

仮に今より値段が上がっても妖精の作った本物のリンシャーなら、ほとんどの女性はいろんなものを節約して高くなったリンシャーを買いますよ。」


ロッテリナがベレーナに尋ねる


「ところでベレーナ君はなんで妖精様の次の商品のレシピをもらって来いと言ったんだ。何か根拠でもあるのか?勢いで言っただけだろ?」


するとベレーナがニヤニヤと笑う


それを見てキャンベラが食い付く


「ベレーナもしかしてあの時ですか?ユズちゃんが二品づつ出した時・・・」


ベレーナがキャンベラに話す


「さすがね。よく見てるわ。そう確かにユズちゃんはあの時もう一品いや恐らくかなりの数持ってるんじゃないかしら、そうでなければあんなにポンポンと出てこないし、次を出そうと思って私達の驚く顔を見てやめたんじゃないかしら・・・」


ベレーナの話しを聞きロッテリーナとボナーラが考え込む


『彼女の話しが本当ならユズちゃんは何が何でももう一度来てもらわねば・・

但しあの子の機嫌を損ねないように慎重に対応しないと、2度と売りませんなんて言われたら私この子達につるし上げられるわね。

こうなったらグランドマスター権限で、あの子のランクを最高に上げて下手な商人や貴族に手が出せないようにして守るのがいいかもしれん』


ロッテリーナが職員に話す


「皆今日の営業が終わり次第大会議室に全員集まってくれ、今日休みの者も全員だ!ユズちゃんの事で話し合いたいことがある。」






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