第20話公爵家二女オリーブとジェシカの思い
ヘルマン公爵家には二人の子供がいる。
長女のアンジェリカと二女のオリーブだ。
長女と二女は仲が良く小さいころからよく一緒に行動していた。
そんな仲良しの二人に突如不幸が訪れる。
3年前に二女の身体に異変が起き身体に濃い濃度の魔素が蓄積するという奇病に侵され倒れる。
濃い濃度の魔素は排出されにくく体内にたまり続けると、徐々に手足を動かすことも食事する事もできなくなり、最終的に死に至るという原因不明の病だった。
王国の薬師や教会の聖魔法を唯一使える聖女にお願いしたが一向に良くならず、現在聖女の作った体内の毒素を抜く薬湯を飲ませ辛うじて進行は止まっていた。
ジェシカ・ヘルマン公爵は月に数回城に行き環境大臣として執務をこなし、陛下や宰相からの質問・相談等、補佐官としても対応処理している。
さらにジェシカは月に1回王都から馬車で7日ほど離れた領地に戻る。
ヘルマン公爵領は王国最大の広さを持ち領都近郊は広大な平野が広がりそこには小麦や大豆、根菜類等の田畑が広がっている。
また公爵領は林業も盛んで植林された多くの山々あり、切り出された木材は麓の村落で加工されその資材は品質がよく、国が一括管理するほどの物だった。
しかし領都から離れた辺境の町や村までは目が届かず、度々起こる問題は殆どその辺境の町村で毎回ジェシカの頭の抱える問題が起こっていた。
その為ジェシカはそういった問題を払拭するため、特に辺境の代表者を領都に招き、よくコミュニケーションを取っていた。
留守中代理の文官に領地の問題点、改善点、など発生する問題をを話し合い対策を指示し、出来るだけ領民に寄り添った領地運営を行っていた。
王都、領地と忙しく動き回るヘルマン公爵一番の不安が二女オリーブの病だった。
娘の病は手を尽くし今何とか進行は止まってるように見えるが、いつ進行するかもわからない状況だった。
忙しい日々を送るジェシカ・ヘルマンにとって娘二人は唯一の生きがいだった。
そんなジェシカに先日王都にいるA級薬師に診察して貰った結果状況は酷く余命1年と言宣告された。
「公爵様残念ながらこのままお嬢様に魔素が溜まり続ければ1年以内にお嬢様ははるか高みに上られるでしょう。魔素が溜まる原因が取り除ければこの上級回復薬で回復するのですが・・・力が及ばず残念です。」
ジェシカは娘の余命宣告を受け泣き崩れた。
『誰でもいい!娘を助けて!お願い……ぅぅ』
・・・・・・・・
ユズが公爵家を再訪して数日後、ジェシカは公爵領から夜遅くに王都に戻り、翌日すぐ王城に向かった。
執務室で部下のまとめた資料の説明を受け纏める。
午後からは王国定例会議に参加し、遅くまで話し合いその日は王城内の大臣部屋で就寝、翌日も朝から国王補佐兼環境大臣として王国内で発生してる問題を話し合ていた。
ジェシカが執務も落ち着き公爵邸に戻ったのは3日後の夕方だった。
ジェシカは王都に戻った時に娘オリーブの寝顔を見て部屋に戻ったのだが、いつもと違う違和感を覚えたのが気になっていた。
領都から戻り疲れていたため翌日に確認すればいいと思っていたが王城から呼ばれそのまま王城内で執務をこなす。その後も会議や面会に陛下の補佐でなかなか戻れなかった。
ジェシカは、執務中も気になっていた違和感を確かめるため急ぎ屋敷に戻る。
メイドが玄関の扉を開けると、そこにはいるはずのないオリーブが満面の笑みで立っていたのだ。
『え?オリーブが立っている・・・・』
「お母様お帰りなさいませ。オリーブの病はこの通り治ってるみたいです…グスッ」
オリーブは涙を流しながらジェシカに抱き着く
ジェシカもいったい何が起こったかわからなかった。
寝たきりのオリーブがよろよろしながらも抱き着いて来たのだ…
ジェシカも泣きながらオリーブを抱きしめる
溢れる涙は止まらなかった。
「嘘。私のオリーブが立って歩いてる… ほんと治ったのね。よかった。ほんとよかったわ。ぅぅ…」
二人が抱き合ってるところに長女のアンジェリカも歩み寄りオリーブを抱きしめ涙を流す。
周りの侍女たちも涙をながし見つめる
「オリーブが元気になって嬉しい・・・グスッ」
3人は暫く抱き合ったあと落ち着きリビングでオリーブの回復の事で話し始める
ジェシカはとにかくどうして回復したのか調べる必要があったので、全ての関係者をリビングに集めた。
「それで余命まで宣告されていたオリーブが、どうしてこうなったのか説明してくれるかしら」
オリーブ担当のメイドが進みでて状況を伝える
「お嬢様は少なくとも5日前までは全く変わりませんでした。
私は毎日朝、お昼、夕方、就寝前と1日4回お部屋に行っています。
正確には5日前の夕方までです。就寝前は暗くて確認できませんでした。
ハッキリ変化が見られたのは3日前の朝です。明らかにお顔の色が変わってました。
黒かった肌が元の肌の色に戻ってたのです。昨日の夜には顔色も完全に戻り普通の状態まで戻られてました。」
オリーブも自分の状況を話す
「お母様私もずっと全身が重く苦しく息もするのも苦しかったのに、急にその重く苦しい痛みが抜けて行きました。
そして一昨日の夜自分で指が動かせたんです。一晩かけて手足を少しずつ動かし確かめていました。
昨日メイドが確認に来た後には自力で起き上がれるようになり、用意してくれていた回復薬を飲みました。今朝身体が軽くなっていてベッドから起き上がってる姿を見てメイドのアンが驚いて泣き崩れてましたわ。フフフ」
「私も朝アンが叫んでるから慌てて部屋に行って驚いたもの。ほんと嬉しくて・・・」
ジェシカは微笑みながら話す
「ほんとよかったわね。話からすると5日前に何かいつもと違う事があったという事かしら?
アン。何か変わったことしなかったの?何でもいいわ教えて頂戴」
アンは暫く考えるも首を振り答える
「申し訳ございません。いつもと同じです。お嬢様のお身体をいつもと同じように拭き、髪を整えそのまま寝かせました。何も変化はありません。」
と言う事は屋敷で何かあった?
「5日前と言えば私が戻る前日ですね。何かありましたか?」
王都公爵邸メイド長のベレッタが前に出て答える
「5日前は大きく変わった事と言えば冒険者ギルドからこの前来ていただいた冒険者のユズ様が来られました。」
その言葉にジェシカが固まる
え?ユズちゃんが来てた?
「ベレッタ何故ユズちゃんは帰ったのかしら、なにかまたそうそうしたのかしら?」
ジェシカの雰囲気が変わったのでベレッタは慌てて答える
「違います!ジェシカ様がまさかこんなに早くお戻りになるとは思わなかったので、ユズ様にはまた必ず来ていただく約束をして頂き、送って来てくれたギルド職員の方と帰られました。」
それを聞いてジェシカは安心してユズが来てからの状況を尋ねる
「そうならいいわ。それでユズちゃんが来てから何をされたの?何か言ってなかったかしら。」
それならとベレッタはユズと同行したレイチェルとスミレに説明するように指示する
「ユズ様と一緒に同行したレイチェルとスミレが説明します」
二人は緊張した表情で前に出てきて話し始める
「私とスミレはユズ様がこの前できなかった事を全力でやるとおっしゃられ裏庭に案内しました。」
そこから二人はユズが裏庭で行った事を詳細に説明しいて行った。
「だいたい終わったと思ってたら、ユズ様の周りにキラキラした小さな光が、ポプラの木の所に案内するように動いて、ユズ様はポプラの木に何か呟いてました。
それから地面に手を充てると、ユズ様の身体から凄い靄っとしたのが出て、ポプラの木の近くにあった大きな石が、少しづつ地面の中に入って行って消えました。
それからもずっと地面に手を充てたままでした。
その後暫くして立ち上がったユズ様にポプラの木がまるで感謝するように大きく枝葉が揺れてました。
それからポプラの木から大きな光の玉が出て来てユズ様の周りを飛び回ってました。」
それを聞いてジェシカは固まる
『ユズちゃんって何者なの…』
「それとジェシカ様ユズ様が最後に気になる事をおっしゃってました。」
「気になる事?」
「はい!確かこのように……
『全て終わりましたのね。これでこのお家の問題全て解決したのね。安心していいのね。』……と」
それを聞いてジェシカは確信する。
「オリーブを救ってくれたのはユズちゃんだったのね…… ありがとうユズちゃん」
ジェシカはユズの事をいろいろ考える。
『これはもう身分とか言ってられないわね。
公爵家の力で全力でユズちゃんを保護しないといけないわね。
あの子を害する者は例え相手が誰であろうと全力で潰す!
できれば娘のどちらかと結婚してくれないかしら…
ユズちゃんほんとうにありがとう貴方はヘルマン公爵家が全力で守ります。』
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