第12話王都冒険者ギルドと公爵家

ユズが町を出て森に入った頃、王都の冒険者ギルドではちょっとした騒ぎになっていた。


ユズを担当していた受付の女性は、ギルドマスター補佐、王都冒険者ギルド100名の組織のNo.2パンジー・サテンドール伯爵家令嬢だった。


パンジーが朝の緊急ミーティングで全職員に熱く語っている


「昨日夜へルマン公爵家のメイド長が訪れ、Fランク冒険者のユズさんの行った仕事について、誤った報告をしたと謝罪がありました。」


内容を聞いて少しざわつく職員達中には小声で話し合う職員もいた。


ほとんどがFランク冒険者を見下した内容だった。


王都冒険者ギルド職員は、貴族の二女三女の女性が多く、平民でもかなりしっかりした身元の女性しかいない人気の就職先だった。


ギルドマスターも元侯爵家令嬢でAランク冒険者だったドメストナ・カトラドラがめったに出ない緊急ミーティングに顔をだしていた。


パンジーが職員の態度が悪いので厳しく注意しながら話を続ける


「今ここにいる半数以上の職員は貴族籍を持っています。

そのため平民を見下す傾向が強いようですが、先ほどのFランク冒険者ユズさんを見下す発言は許せませんよ。

以後気をつけるように!」


集まった職員は黙り込み注意された事を受け入れる


さらにパンジーは公爵家から冒険者ユズさんに直接謝罪と今後の依頼の事で一度訪問してほしいと冒険者ギルドに伝言を頼まれたことを職員たちに告げる。


「公爵家から平民の低ランク冒険者に謝罪何て今まで聞いたことがありません。


前代未聞です!


それほどの事があったのです。

ですから私達ギルドもユズさんの使用スキルや依頼消化状況等調べ、改めて評価を見直す必要があります。」


そこにサブマスの補佐のナエルアが報告書を渡してくる


それを読んでパンジーは答える


「これを読む限り、ユズさんはかなり素晴らしい能力を持ち、最大級の評価がされる方だとわかりました。

それもヘルマン公爵様自身が確認しての評価です。」


一度でもユズの容姿を見た職員は報告を聞いて驚いている。

そんな職員の様子を見ながら話を続ける


「皆さん私達冒険者組合組織は、町に住む住民、薬師組合、鍛冶組合、商業組合の各ギルド、管理する役所や農村部等の依頼によって成り立っています。」


パンジーは話しながら回りを見る。

職員の女性も皆真剣に聞いているため顔つきが違う


パンジーは彼女達を見て安心し、話を続ける


「役所や商人からは周辺の森に潜む魔物の討伐依頼や護衛依頼、農村からは農作物への被害を与える魔物の討伐依頼、薬師や鍛冶組合からは素材採取の依頼等多岐にわたります。」


パンジーは職員を見渡し質問をする


「素材鑑定師の資格を持つスズランに聞きます。あなたが冒険者ギルド職員になった理由は何ですか?」


スズランは突然質問され戸惑うもすぐに答える


「それは私達貴族籍の女性は二女三女以下は成人後は貴族籍がなくなり平民扱いになります。


ですから、毎年行われる5歳のお披露目のパーティーで貴族嫡男と婚約できなければ成人で貴族籍が無くなります。


一応第二第三婦人としての結婚もありますが、その多くは上級貴族です。

中級、下級貴族は資金面や相続トラブルを避けほとんどが一人しか結婚しません。


そうなれば、一般平民で暮らしのいい方に嫁ぐには豪商か高ランク冒険者になります。


私達貴族女性ははっきり言って一般平民と違って贅沢な暮らしをしてきています。


成人して貴族籍が抜け平民になり、平民と結婚して質素にやっていく自信がありません。


ですから貴族籍が与えられ、お金も持っている高ランク冒険者と知り合えるこの冒険者ギルドに就職したんです。


ほとんどが皆私と同じ考えだと思いますが、それに平民の方からも一目おかれ憧れますから・・」


それを聞いてパンジーは微笑む


「そうね正直な答えね。ここにいるほとんどがそうよね。誰もがいい暮らしをしたいわよね。


皆に注意しておくわね。高ランク冒険者は資格審査基準に、活動内容、人格、素行もあるから、なかなか高ランク冒険者になれる人がいないわよね。


でも中には上手く隠してきて、高ランク冒険者BランクやAランクの資格を得た者もいるわ。


でもそのほとんどが数年以内に隠してきた人格が露呈し、女性との問題を起こしランク降格になってるから注意しなさい。」


みなパンジーの言葉に頷く


「みない今一度冒険者規定をよく思い出してみる事ね」


☆☆☆☆☆☆☆


この世界の冒険者規定


冒険者ランクにはSSS~Fランクまである


ランク S プラチナカード 大陸冒険者 貴族籍(子爵同等)王国より活動援助金支給


ランク A ゴールドカード 大陸冒険者 貴族籍(男爵同等)王国より活動援助金支給


ランク B シルバーカード 大陸冒険者 貴族籍(準男爵同等)王国より活動支援金支給


ランク C ブロンズカード 国家冒険者  領主より支援金支給


ランク D アイアンカード 普通冒険者


ランク E ストーンカード 初心者冒険者


ランク F ウッドカード 見習い冒険者



冒険者は年齢制限問わず誰でも登録できる。但し登録受付があきらかに無理な場合は断られる。


全ての冒険者は登録時、最初は全てFランクからのスタートでFランク依頼30件クリアでランクアップになる。


但し冒険者学校、王国学園卒業生はEランクからのスタートになる。


ランクアップは各ランクに応じて依頼達成回数内容により変わる。


☆EランクからDの昇格条件

依頼達成件数150件・ギルドランク指定依頼50件クリア・依頼失敗10件以内・警告ペナルティ3件まで


☆DランクからCの昇格条件

依頼達成件数300件・ギルドランク指定依頼100件クリア・依頼失敗5件以内・警告ペナルティ3件まで

ギルド試験管の面談・筆記試験・実力試験60点以上で合格


☆CランクからBランク昇格条件

Bランク以上は大陸冒険者となり昇格審査基準も厳しくなる


依頼達成件数500件・ギルドランク指定依頼200件クリア

依頼失敗3件以内・警告ペナルティ2件まで

Dランク魔物単独討伐実績

大陸冒険者試験管の面談・筆記試験(魔物、薬草の知識、一般常識、マナー)合格ライン70点以上

実力試験 (Bランク冒険者5人と模擬戦)3勝 全てクリアで昇格


☆Aランク昇格条件


Bランク昇格基準+3名のギルドマスターの承認

A級問診監察官の承認


☆☆☆☆☆☆☆


パンジーは冒険者規定を見ながら集まった者に注意する


「皆もこのBランク冒険者以上ならと考える者もいるだろう。しかし過去に何度か高額の金を問診監察官に賄賂として与えて合格した奴もいた。


彼は過去の昇格に全て不正や金で昇格をしてきた男だ。この男に何人もの女性が騙され金を貢がされている。


後にこの問題が発覚したのだが…貢いだ貴族女性達は精神的にぼろぼろになり自殺者まで出ている。


この事件は我々ギルド幹部職員に注意喚起するための例として、毎回昇格会議の度教えられる事案だ。


勿論この者はその不正が発覚多くの犠牲者を出したが、捕らえられ処刑された。

何が言いたいのかと言うと自分の観察眼を磨け!と言うことだ。」


職員は全員パンジーに注目して聞き入っている


パンジーはそんな職員を見渡し思う


『ここの職員は大丈夫そうね。皆真剣に聞いているわ。後はこの案件をちゃんと伝えないとね。』


「みなわかったくれたようね。では先ほどの公爵家から謝罪を受けるほどのFランク冒険者について皆どう思うかしら。


私は公爵家からの評価、私が対応した時の態度から、私のFランク冒険者ユズさんの評価は特Aです。


王都冒険者ギルドでずっと留まってほしいと思っています。」


頷く職員もいるなか驚く職員も多い


パンジーはにやりと笑いとんでもない事を告げ、この発言で職員たちが騒ぎ出す


「なのでFランク冒険者のユズちゃんはギルマス補佐私パンジーが専属担当になります。」



「「「「「えー--!」」」」」

「そんなのずるいです!」

「「そうだ!職権乱用だ!」」

「パンジーがそんなこと言うのは絶対可愛い男の子だからだ!ずるいぞ!」

「あの子はあたいが担当するのだー-!」

「そんな子ならみんなで守るべきだー!」

「そうだ独り占めはよくないぞー!」


ギルド大会議室は収集の付かない状態になっていた。

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