第9話転生者華蓮

ほんとに異世界に転生するとは・・・しかもAIとしてなんて


女神さまが言うにはこの世界ではあたいは精霊のような存在になるらしいけど・・・


女神さまのお気に入りの子供がまさかの貧民の小さな男の子だなんて・・・


☆☆☆☆☆☆☆☆


あたいは死ぬ前は日本のシステムエンジニアの会社に勤めていた。そんなに大きな会社じゃなかったけど入社当時は給料もよく、程よい残業をする程度の優良企業だった。


ネットワーク全盛時のこの時代この業種は仕事の内容は多岐にわたった。

当然ライバル企業も多く生き残るために企業は必死だ。


生き残るためトップは無理な受注も受ける。あたいの会社もその一つだった。


その結果戦力の少ない企業は無理な受注を受けいつもパンク寸前だ。


あたいの勤める会社もそのパンク寸前の会社だった。


月の残業時間は150時間以上帰宅時間はいつも終電・・帰れない者はそのまま自分のデスクで仮眠する。


労働基準法ってどこいった・・・


休みなんて月1回あればいい方だった。当然体調を崩す人も出て来る。

そうなれば他の誰かがカバーに回る→残業が増える→疲労がたまる。


まさにデスマーチ…


この負の連鎖がずっと続く、それでも5年前まではあたいも頑張れた。


大好きな可愛い弟瑞樹がいたから・・・


そう・・15年前に連れ子同士で結婚した母と義父の連れ子の男の子瑞樹が生きてた時までは・・


私の母は私が15歳の時に再婚した。その時養父は5歳になる可愛い男の子を連れていた。

名前を瑞樹といい小さいころから身体が弱く入退院を繰り返していた。

母と義父は瑞樹が入院してる時に知り合ったらしく看護師の母は女の子のように可愛い瑞樹を可愛がっていた。


その後母は再婚し瑞樹が私の弟になった。ほんとに可愛くて小さくて女の子のような子だった。


最初は仲良かった二人も義父のストレスからか退院してきた瑞樹にあたり散らした。

でも義父は私や母には一切暴力は振るわなかった。


しかし瑞樹にだけは違った。まるで前妻に恨みでも晴らすかのように知らない女性の名前を呟きながら暴力を振るった。


私と母が暴力を止めると。すぐに家を出てお酒を飲みに行く。


不思議と瑞樹が入院中は穏やかで凄くいい義父なのだが、瑞樹が退院してくると様子が一変する。


義父は瑞樹がいる時はストレスのためなのか毎日酒を飲んで夜遅く帰ってくることが多くなった。


そんなある日義父は酒を飲み帰宅中に車に跳ねられ亡くなった。即死だった。

しかし義父は私達の知らない所で、瑞樹に飲ませてはいけないような薬を飲ませ続けていた。


義父が亡くなってからも瑞樹は隠れてその薬を飲み続けていたのだ。


そんな弟も5年前身体が衰弱し入院。元々悪かった病も悪化、入院するも衰弱が酷く手術に耐えれる体力がなく体力回復を待っていたが、回復する事なく亡くなった。


あたいも母も義父が亡くなってからも瑞樹を溺愛した。

まさか義父が亡くなってからも弟が身体に悪い薬を飲み続けてるとは知らず…


あたいは瑞樹が、元気になるどころか日に日に衰弱していくのが、病のせいだと思っていた。


ある日母が瑞樹が、何かを必死に取ろうとしてるのを見つけ、代わりに取り上げたのがその薬だったのだ。

母は薬剤の知識もありその薬が何の薬かわかった。


母から聞かされたのは身体に毒素が蓄積していく薬だった。


母が瑞樹に優しく尋ねると、義父にこの薬を飲み続けないと病気は治らないと言われていたようで、瑞樹はもう自分で動く事ができないほど衰弱していた。


急遽入院しても改善は見られず膠着状態が続いていた時、瑞樹の病が悪化した。


衰弱し体力のない瑞樹は手術もできず、1カ月の入院後母が私に言った


「華蓮さん瑞樹を退院させてお家に連れて帰ります。

できれば貴方のお仕事も、1カ月でいいから早く帰ってこれないかしなら、お母さんも1カ月休職させて貰いました。」


私はそれを聞いて涙が溢れそうになった。


瑞樹が回復してないのに連れて帰ると言う事が…

母が休職するって事は瑞樹はそんなに長く生きれないのだと…


あたいも会社に退職覚悟で休職をお願いした。休職は認めてもらい母と一緒に瑞樹と一緒に過ごした。


3人で旅行に行ったり、買い物に出かけたりと思い出をいっぱい作った。

瑞樹と過した3週間はほんと楽しかった・・


3週間目の日曜の夜寝る前に珍しく瑞樹は一人で歩いて私たちがくつろいでるリビングまで来てお願いをしてきたのだ。


歩く体力などないはずなのに・・


「お母さん、お姉ちゃん今日一緒に寝たいのダメ?」


ほんとビックリした。いつも介助がいるのにしっかりと歩いて来たのだ。


あたいも母も喜んで答えた。


「ええいいわよ。今日はお話しながら一緒に寝ましょうか。」

「瑞樹今日は体調好いんだね。お姉ちゃん嬉しい。いっぱいお話しながら寝ましょう。」


あたいと母は瑞樹の手を持ち寝室に行き一緒にベッドに入った。

瑞樹は私達の手を握り話し出す。


そう最後の力を振り絞るように・・・


私たちに心配させないようにしっかりとした口調で・・・


「お母さん今日も楽しかったよ。ありがとうなの。お姉ちゃん今日もボクのサポートしてくれてありがとなの。お姉ちゃんがいつも支えてくれてるから安心して動けるの。」


「何言ってるの私は瑞樹のお母さんよ。当り前じゃない。明日も出かけるからね。」


「お姉ちゃんはね。瑞樹がいてくれるから頑張ってお仕事もできたんだから、これからもずっとサポートするから心配しなくていいの。明日もちゃんとサポートするからね。」


「うん。明日も楽しみなの・・・・・・お母さん・・・お姉ちゃん・・・ギュー・・・」


瑞樹が私たちを呼んだ時握ってた手が一瞬力強くなりすぐにその手は離れていく。


「オカアサン・・・オネエチャン・・・イママデ・・・・アリガトウ・・・ボク・・・オカ・サン・・オネエ・・アエテヨカ・・タ・・・・・・」


瑞樹は力を振り絞るように最後の言葉を告げ息をひきとった


「瑞樹・・・よく頑張ったわ。あなたがいてくれてよかったありがとう・・ゆっくりねむりなさい」


「みずきーお姉ちゃを置いて行かないでよぉーぅぅ・・グス 瑞樹今までありがとう・・」


・・・・・・・


瑞樹が天国に行ってからあたいと母は瑞樹の事を忘れるようにがむしゃらに働いた。


母は瑞樹が亡くなって1年後に後を追うように亡くなった。

遺言は貯めたお金で瑞樹と母とあたいの3人で入るお墓を建てて一緒に入れてほしいと言う事だった。


あたいは忙しい中母の田舎のお寺に行きお墓のお願いをしその後のあたいの事もお願いして来た。


あたい達の墓が出来上がったのは瑞樹が亡くなって3年が経っていた。


住職さんにお願いして墓に二人の骨壺を納め、あたいは東京にもどりまた仕事に打ち込んだ。


2年間ほとんど休まず働き私は会社を退職した。


退職後私は母の田舎で墓を守りながら暮らすことにしたのです。


そして瑞樹が亡くなって5年母が亡くなって4年の今日偶然にも二人の命日だった。

あたいは花を買い二人が眠る墓に向かった。


鳳 菫

鳳 瑞樹


墓に手を合わせ二人にいつもの日常と思いを報告した。


『お母さん瑞樹・・ここはのんびりしてていいところだよ。お母さんと瑞樹がいればどんなに楽しいか・・

ないものねだりはダメね。瑞樹と一緒に・・・・・・・・・・・したかったなぁ・・ 

あ!もうこんな時間だ。また来るねお母さん瑞樹・・』


その帰りあたいは信号無視の車に跳ねられた。



『あぁ・・あたい跳ねられたんだ・・ゴホゴホ お母さん瑞樹・・あたいもう疲れっちゃった・・

瑞樹もお母さんもいないこの世界はあたいには辛いよ・・

もう生きる気力がないの・・あたいもそっちに行っていい・・』



・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


気が付いたらあたいは真っ白な空間にいた。


『ああ・・あたい死んだのかな?神様にお願いしなきゃ。お母さんと瑞樹のいる時代に輪廻転生させてもらうように・・』


暫くすると綺麗な女神様が現れる


『私はアマテラスといます。貴方の日本での行いを見て来ましたよ。貴方の行いは凄く美しいものでした。

血のつながっていない弟に献身的に尽くされる美しい姿を見せていただきました。

本来なら記憶を消去して輪廻転生していただくのですが、あなたのお望みの弟さんとお母さんは地球とは別の世界で生まれ変わって生きています。』


あたいはそれを聞いて嬉しくなりお願いをしました。


『アマテラス様お願いがあります。私の記憶を残したまま二人のいる世界に転生させていただけないでしょうか?』


アマテラスは少し考え答える。


『本来記憶を残したままの転生は出来ませんが、あなたの思いは私にはわかります。どんな形でもよろしいですか?相手の記憶は残ってなくても?』


『アマテラス様転生した弟が記憶を思い出すことはあるのでしょうか?』


『思い出す可能性はあります。限りなく低いですが・・どこまでかはわかりません。それでもとおっしゃるなら記憶を残して転生させてあげましょう。

但しAI人工知能として身体の持たない存在になります。向こうでは精霊と呼ばれる存在ですが、よろしいですか?』


あたいは考えた身体も持てなくて視覚はどうなるの?手を握った感覚は?


『アマテラス様そのAIでの転生は視覚とか感覚はどうなるのでしょうか感じる事出来るのでしょうか?』


『それは貴方のAI・・・向こうでは精霊として宿る方を通して視覚や感覚を感じる事が出来ますよ。どうしますか?

記憶を思い出す確率は0ではありませんから普通に転生して記憶を思い出す方を私はお勧めしますが、どうされますか?』


私は迷わずAIを選択した。


『アマテラス様AIでお願いします。』


アマテラスは予想と違う回答に驚く


あら誰の体のAIに入るかもわからないのに、それほどまでにしてあの子に会いたいのね。

気に入ったわ。少し試練を与えて見事耐えたら身体も与えてあげましょう。

そして母とあの子にも再会させてあげましょう。



『わかりました。本当にいいんですね。後戻りはできませんよ。』


『はい!私はあの子と過した記憶は消したくないのだから何度転生しても捜して会いたいの。お願いしますアマテラス様』


なんなのこの子といいあの母といいもう・・まいったなぁ

ではこの子には少し厳しい試練を与えて耐えれたら最高のご褒美になるようにしてあげましょう。


『では貴方をAIとして転生させます。あなたには私の管理する世界の知識と私の知識の一部を与えます。

これで最高の知識を持つAIとしてあなたを私のお気に入りの子供のスキルのAIとして転生させます。


但し主人となる子供に貴方の転生前の記憶を話してはいけません。もし話したらその時点で貴方の記憶を消去します。

貴方はAIとしてその子供を助けるのです。よろしいですね。』



『はい!よろしくお願いします。』


こうして私はスキルAIとしてこっちの世界では精霊としてユズちゃんの所に来たのです。




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