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一ヶ月で1000万って、そこらへんにいるイケイケのIT系社長さんレベルじゃん。
いや、そこらへんにはいないか。六本木辺りか、知らんけど。
ドラゴンの飼育って何の隠語かは分からないけど、騙してない? 大丈夫そ?
「ぜひともドラゴンの飼育員の仕事紹介してもらいたいです」
マジかよ……俺は知らんぞ。
まぁ、入社したてのひよっこが知らないも何もないのだが。
ぶっちゃけ、大学辞めたようなクソニートにそんな大層な仕事が務まるはずが無いと思うのは俺だけだろうか。
「かしこまりました。先方には田中様がご希望していることの旨を伝えておきます。えー、選考の対策などはまた後日、一緒に考えていくとしましょう」
「分かりました」
そう言って、トントン拍子で田中さんの面談は終わる。
こっちの方が大丈夫なのかと心配になるレベルだ。
つか、田中さんは何を考えているの? 聞いておきたいこととかない?
なんなら、俺が代弁して聞いておこうか。俺の方が気になってるわ。
ツッコミどころというか。どういうこと? ってならないの?
そもそも何なのドラゴンの飼育って。聞いたことないし。
あれなの? 今流行りの異世界に転生してドラゴンの世話してみました、ってやつか。そんな上手いこといかんだろ。その前に夢見過ぎだろう。戻ってきて、田中さん、あなた騙されてるよ。
クソニート引っ張り出すところまではいいけど、伊勢さん、伊勢さん。詐欺はマズいっしょ。
……俺、もしかしてヤバいとこに就職したか。
このままでは、退職ギネスレコードチャレンジャーとしてエントリーする羽目にならないか。
そんなことを考えていると、伊勢さんに現実に引き戻される。
「それでは向井君、姫野さんに外勤になることを伝えてくれますか?」
「え……あ、はい。分かりました」
「田中様、次回の面談はこちらの準備が整い次第、メールかお電話でお知らせいたしますが、どちらに致しましょう」
個別ブースのドアの方に視線をやって、伊勢さんの方を見ると、俺に行っていいという感じに頷いた。
「じゃあ、メールで」
「かしこまりました。遅くても2日以内にはご連絡致しますので、どうぞよろしくお願いします」
次回の日程を相談しているのを横目に、俺は受付の姫野さんに伊勢さんからの伝言を伝えに行く。
「そうですか。さっそく外勤ですか、お気をつけていってらっしゃい」
姫野さんは、ホワイトボードの外勤の欄に俺と伊勢さんのネームのマグネットを動かして、ニッコリ笑ってそう言った。
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