第10話外見に男は騙される
「余が永久村人じゃと!?しかも降格ぅっ!?」
ワナワナ震える義輝ちゃん。
「余は将軍じゃぞっ!」
『元ですね』
「あ~漫画でよく見たよな、騙されて落ちぶれても自分の価値は上の方と思い込んでいる奴。馬鹿だなと思っていたけど目の前にいるとおもしろ可哀そうだ」
「おもしろ言ったぁーっ!騙した本人が言うなのじゃーっ!」
立ち上がりウインドウを膝にぶつけて二つ折りにして地団駄を踏む元将軍(笑)。
「良心が痛まない相手の悔しがる姿は滑稽でいいなぁ」
「ご主人様に良心はあるんですか?」
「だって義輝ちゃん俺の着物を追いはぎしようとしてたんだよ、痛むわけないじゃん」
『今お爺さんがタバコを分けてくれるとしたら』
「石をぶつけて全部頂く」
『良心はゼロですね。やはりご主人様は雨乞い2.14に転生されるべくして転生されたんですね』
「?」
ホネ子ちゃんは難しいことを言うな。
(これで生き残るためのアイテムは完全に手に入ったんだよな)
(大丈夫です。義輝が死亡した時は私が復活させます)
俺とホネ子ちゃんは直通で会話する。
ふざけているようにみえるが義輝ちゃんという必須アイテムゲットに内心ホッとしているのだ。死亡確定消滅が上手くやっていけば生きていけるに変われば嬉しい筈がない。
(復活しても女性のままだよね?)
(女性のままです輪廻転生にカウントはされますけどチッ)
それも安心した。ホネ子ちゃんなら義輝ちゃんを復活させるときに昆虫ぐらいに変えそうだと思っていたんだ。やはり骨の自分には無いものを持つ義輝ちゃんを敵視しているのだろう。
「余は将軍じゃっ!村人なぞやっていられるかっ。死ぬのじゃ何十度か繰り返せば男にもなれるじゃろうっ」
近くの木の幹に頭をぶつけようと走ろうとして。
『映像ですけどお前の頭に私がパイル〇ーオンしていることを忘れてますね。片足だけ正座で痺れまくり状態にどんっ』
「ふぎゃんっ!ぐぎゃ」
駆けようとした義輝ちゃんの右足が一歩目を踏み出した途端、変声を出して跳ね上がりバランスを崩して側頭部から地面にゴンッ。
ホネ子ちゃんは転倒途中に跳躍して何回転かして綺麗に着地した。
『死んで無駄な村Pを使わせようとするなんて駄目な肉ですね。あっなに死にかけているんですか!あなたを復活させるのに村P10消費するんですよっ』
ビクビク痙攣している義輝ちゃんの頭を蹴るホネ子ちゃん。映像だけでダメージ与えていないのは温情だろう、決して村P10を惜しんでいるせいではないのだ。
しかし莫大な村Pもたらす女の義輝ちゃんの復活の村Pは10なのは少ないような、復活は一律だよなうん。
義輝ちゃんはタバコと同じ価値・・・。あ、タバコっ!
「ホネ子ちゃん村Pに余裕あるんだからタバコをプリーズッ!」
『え~忘れているなと思って黙っていたのに。この駄肉で思い出したんですねっ!』
「きゃんっ」
最後のひと蹴りはダメージありだったようだ。
義輝ちゃんに止めさしたホネ子ちゃんが俺のもとにやって来る。
『ご主人様、自分で物品交換できますよ』
「なぬっ、ならさっそく」
視界にある物品交換コマンドを押すとズラッと交換リストが表示された。
『おそらくご主人様の記憶から優先順位が決められていると思うんですが最初に表示されるのがタバコとライターいうのは・・・ご主人様らしいというか』
なにかホネ子ちゃんが言っているけど聞こえない。タバコある銘柄で知識にヒットするということはこのタバコを吸っていたのだろう。それではライターも一緒にポチっとな。
「お、おおぉっ」
シュンッという音と共に目の前の空間に黒い穴が開いてポトンタバコとライターが落ちてきた。
地面に落ちたそれを手に取ると勝手に体が動いてフィルム剥いで入り口の銀紙を破る。記憶はなくとも体は覚えているようだ。
一本取り咥える。ようやく物足りなかった感覚が解消できる。
火をつけ最初のひと吸いを思いっきり吸った。
「ぐわっ!がはっげへげへがふぁっごほごほっ」
肺に吸い込んだ煙でむせた。
気持ち悪い目の前がグワングワンする。態勢を維持できなくなって横に倒れた。
『ああ~やっぱりそうなりますよね』
ホネ子ちゃんが目の前に来てウンウンと頷いている。
「なにこれ?」
『ご主人様はこの雨乞い2.14の世界に転生したのは覚えてますよね』
「うん」
『転移ではなく転生なんです。ご主人様の身体はこの世界で新しくできたんですね。和K利安井いように少し村P使用させてもらいます。はい今のご主人様の顔です』
ホネ子ちゃんが物品交換で手のひらサイズの鏡を取り寄せた。それを俺の顔に向けてくる。
「おぉ、若いな・・・」
『だいたい二十歳前ぐらいですかね。おそらく身体も新調なのでタバコは受け付けないと思いますよ』
鏡の中には少し目つきがきつめな黒髪の青年がいた。気分が悪そうにしている顔はまだタバコを吸える歳には見えない。身体も新品ならホネ子ちゃんの言う通り受け付けることは無いだろう。
『はいお水ですよ~』
ペットボトルの水を取り寄せて渡してくるホネ子ちゃん。村Pが無くて嘆いていたのは少し前のこと、富豪になった俺達にはこの程度は余裕なのだ。
ごくごく飲む。気持ち悪さも無くなり自分が水分を欲していたのがわかる。意識が数時間しか経っていないが何も補給していなかった。
あ~体に染みわたる。
『タバコは二十歳になってからですね』
「いや慣れれば・・・」
『ダメです~。選択できないようにロックしておきます』
ああ~リラックスできるアイテムが~。でもしばらくは慣らさないと毎回倒れる思いをしないといけないのはつらいし、生活基盤が安定するまでは我慢するか。
「それなんじゃ?」
俺と同じように横に倒れていた義輝ちゃんがこちらをじーと見ている。見ているのは俺が持っているペットボトル。左右に動かしても視線が外れることが無い。
(隠していたほうがよかったやつかな)
(どうせバレるのでかまわないかと)
(ほら異世界に違う世界の物は争いのタネになるとか)
(ここは血と鮮血が飛び散るほのぼの村育成ゲームが基本システムの異世界ですよ。遠慮していたら即死、即ち死です)
(忘れていたわ~その設定)
仕方ない少しは義輝ちゃんにも良い目を受けてもらおうか。
くいくいと手招きするとゴロゴロ転がって俺の所に来る義輝ちゃん。せめて這ってぐらいで来て欲しかった。
一度飲んで飲み方を教えて渡す。
おずおずとペットボトルを受け取る義輝ちゃん。両手で貴重な物を持つように持つゆっくりと口元に近づき飲み口をつけて傾けた。
クワッと目が開きそのあとは一気にコクコク飲んでいる。半分は俺が飲んでいるので量はそこまで多くはないのであっという間に飲み干した。プハッとペットボトルから口を外す。
「美味いのじゃぁーっ!」
歓声を上げる義輝ちゃん。
「何じゃこの水はっ!?今まで飲んだことのない美味さじゃぞっ」
キラキラした目でペットボトルを見る義輝ちゃん。
あ、ヤバい野良猫に餌をやったらすっげー懐かれる三秒前、三、二、一。
「のうもっとくれぬかのぅ」
男性諸君に聞きたい、出会いが追い剥ぎでちょっとどころか全てがおかしくて毎回憐れむぐらい可哀そうな転生人生の引き出しを持っていて三秒で地雷原(ホネ子ちゃん)にいることを忘れる残念輪廻転生中身男でもだ。
外見は白髪巨乳美少女に上目遣いでお願いされて断ることが出来るか?
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