第7話アホの子将軍
俺の寿命、たぶん明日の昼ぐらいまで。そして今夜には百パー死亡というどうしようもない状況。
『ごめんなさいですぅ』
「頑張ったよホネ子ちゃんは頑張った」
視界の中で空洞の目の部分から涙を流すホネ子ちゃん。あれからホネ子ちゃんは自分が見れるシステム全てを調べて俺の生存方法を探してくれた。
結果ゼロ。
どうやっても村人十人が無理なのである。
雨乞い2.14の世界で基本の村人を増やす方法は近隣の村を襲って村娘をさらうというハードなプレイスタイルゲームだ。ほかにも技能という特殊なスキルがあって洗脳したり、騙して引き込んだり、勝って格付けで支配したり、巨乳で信者にしたり・・・ろくなゲームじゃない。
俺には村を襲撃する力もなく、特殊な技能もない。そして森の中では近隣の村がないのだ。
『まさか詰んだ状態からスタートだとは思わなくて』
「普通はどこかにチャンスが残っているはずなんだけどな」
そして俺のステータスがわかればなにかできたのかもしれないが軒並み普通で野ウサギにも勝てないとのこと。ウサギに勝てない雨乞い2.14の世界・・・。
『せめて野ウサギ一羽仕留めればポイントゲットで安全領域が作れるんですが』
「弱いと判断したら喉を噛み千切ってくるウサギって本当にウサギ?」
実はホネ子ちゃんには一晩乗り越える秘策があったのだ。
それは村育成ポイント、略して村P。
村Pを消費して物と交換もできるし、いろんなこと出来るのだ。そのなかで安全領域というものがあって数日敵対するものが来ない結界を張れたらしいのだ。
そして暴君閻魔の村育成完全放棄用システムが無理というのがわかって本当の最終手段の安全領域をホネ子ちゃんは展開することを俺に進言した。それでも明日には死ぬのだが今日一晩ぐらいはと考えたらしい。
それも駄目だったのだ。
初期の特典ボーナスで村Pを貰えるのだが安全領域20村P、俺の特典ボーナス15村P。
俺を転生させた奴は絶対に俺に恨みを持っていると確信した。
そしてその初期特典ボーナス村Pでホネ子ちゃんは村人十人を召喚しようと考えていたようなのだが、村人十人15村P。ただし召喚しても夜にはみんなでお陀仏だそうな。村人は俺と同じくらいに弱いとのこと。詰んでるわ~。
「タバコと交換したいんだけど」
『ダメですギリギリまで何かあるかわかりませんから使うのはダメです』
俺は諦めてタバコが吸いたいのだけどホネ子ちゃんは許してくれない。
『タバコはダメです。長生きしたいなら健康に気を付けないと』
「いやいや運がよくても明日までの命てすから」
『あ、そうでした』
「『あはははは』」
何もできることがないならもう下らない会話をするしかないのである。
「そういやこの世界ってゲームの世界なの?それともゲームに似た異世界なの?」
『両方の可能性が高いです。似た世界ですけど雨乞いフィーバータイム2.14を所有している人は固有のキャラを使用したときにはやって来れるみたいですし』
なんじゃそりゃ。
どうも雨乞いフィーバータイム2.14にバージョンアップが出来た瞬間に俺が転生したこの世界が創られたみたい。
『ゲームをしている人から見ればゲームであり、実際に世界にいる人から見れば現実ですね』
「ごめん。俺そこまで頭良くないみたい」
『われ思う故にわれありです』
もっとわからないよ。俺の記憶からかな。あと意味違うような。
「俺以外にここに転生した人はいる?」
『いませんねぇ。私がアクセスできる範囲ではご主人様が初です。テーマパーク十万人目の入場者より貴重ですよ』
「ゲームオーバー確定だけどな」
『私システムの一部ですけどクソな世界です』
村育成完全放棄用システム(ただのテキスト文章)もだけど自分に喧嘩を売るよな。
村P5ポイントの差で十数時間分の生き死にが決定している。
村Pの増やし方は村人を増やすか生物を殺すことで得られるとのこと。村人一人増加につき1ポイント、村人一人に付き一日経つと1ポイント、生き物殺せば10ポイント。殺伐すぎないかこの世界。
野ウサギ一匹倒せない貧弱俺は詰み~。そして村人召喚してもマイナス5ポイントでアウト。
自分の村人を殺害すればと提案したらホネ子ちゃんはドン引きで村Pにはならないと逆にペナルティでマイナスにとのこと。チッ無限村Pだと思ったのに。
「むにゃむにゃ、余はいたいけな兎じゃぞ~。そんな猿集団の中で勝てるはずなかろうが~。あ、皮を剥ぐのはせめてコキッと首を折ってからにしてくれんか~」
「そういえば一人村人候補がいたな」
『あ~あまりにもアホの子なので意識から除外してました』
いったい何の夢を見ているのか俺の上で爆睡の白髪巨乳美少女の義輝ちゃん。あとホネ子ちゃんが言ってたの聞こえていたような寝言だ。
「なんだろうなホネ子ちゃんとは別の方向で癒される」
『私はイラッときます』
残念過ぎてバカ愛い・・・か?死が近づいてきて少し悟っていたかもしれない。
「義輝ちゃんも俺と同じ転生者じゃないの?」
『違うと思いますよ。この世界には隣に信長さんが住んでたり。義元さんが怯えていたり、長慶さんが弟落馬で気を落としていたりしてますから、アホの子は将軍の一部のデータが勝手気ままに転生しているんじゃないですかね』
首を傾げるホネ子ちゃん。義輝ちゃんの顔を覗いて、殴った。えいえいと執拗に。今は俺の脳内にいるし元々俺にしか触れないようだけど目が無い筈なのにマジの目が見える。
「そういや俺の三大欲求の一つなんだけど」
『それはシステムでロックされてますね。村P100で解除できます』
「無理か~、最後ぐらいはと思ったんだが」
『なくても結構欲求ありませんか?』
知識の方であるんだよ。男としてどうなんだと訴えてくるものが。それに応えることができない我が身体なんだが、やはり転生させた奴は敵だ。
「義輝ちゃんを村人化してみようか」
ふと思いつく。
『え、こんなの村人にしたらマイナスなるかもしれませんよ』
なにマイナスもあるの?義輝ちゃんならありそうだな~、だってアホの子だから。
「まあ試しに。と俺の死亡時に巻き添えをつくりたい。転生に飽きてたみたいだからワンチャンで死ねるかもしれんし」
『う~ん・・・そうですね。最後に善行をしてあげたらアホの子も成仏できるかもしれませんしやってみましょうか』
さすが俺の記憶を持つホネ子ちゃん、巻き添えを善行と言える部分が俺せいだとは思いたくないな。
「どうすればいい?このまま本気でぐ~りぐ~りをやれば村人にできる?」
『それは下手するとアホの子はシャーッしながら死んじゃいます。相手の承諾か屈服させれば村人化の許可がでるんですけど・・・あれっ?すでにアホの子の村人化の許可が出てますよ』
「あ、それは最初にレスリングの構えから跳躍して襲ってきたからカウンターで顔に拳でえいっと」
『一応アホの子は美少女なんですけどね~。性欲がなくてもためらうと思うのですが』
「俺は男女平等に賛成の人だ」
『記憶が無いのに知識だけで自分を作り上げていくご主人様は素敵です。はい後は許可のボタンを押すだけです。押したら肘が痺れるオプションがありますけど』
「それは義輝ちゃんが?」
『もちアホの子です』
「さすがホネ子ちゃんいい仕事だ」
『えっへん!私は出来る子なんですっ』
それではポチっとな。
「ふぎゃあぁぁぁっ!?」
俺の上で白髪巨乳美少女が跳ねた。両腕が天に突きあがるが少し曲がっている。たぶん肘が凄いことになってるからだ。
「ふぎゃっ、ふぎゃっ、ふぎゃっ!?」
『スイッチのオンオフをしてみました』
「さすが俺のオペレーター!グッだぞっ」
『てへへっ』
「ふぎゃあぁぁぁーっ!?」
やはりホネ子ちゃんは俺の相棒だな。俺好みの嫌がらせがわかっている。
そして義輝ちゃんは上手く俺の上に乗ったままだな。寝転がりキョンシー?弄られキャラとしては最強だ。
ほーら、さらに肘を触ったらどうなるのかな~。
「?&%##?*“!&ふぎゃ・・・」
あ、死んだ。
パタリと義輝ちゃんの腕が落ちる。
『ポリスメンがいたら確実に捕まる光景ですよ』
「大の字で男が下で白髪巨乳美少女が上で失神だもんな。義輝ちゃんだから白目だろ?」
『大当たりです。なぜわかるんですか?』
「それは義輝ちゃんだからだ。天然でボケの何たるかを知っている最強のアホの子だよ」
『ああ~なぜか納得できますね。これはご主人様の記憶のせい?』
さすが俺の記憶だ気が合うな。
俺達寿命カウントダウン真っ最中なのにこんなことをしていていいんだろうか、いいんだろう。
『村人化完了でーす。これでアホの子のステータスが見れますよ』
「え、それはちょっと見たいな」
こんなアホの子のステータス、是非とも見てみたい。ぜったいに技能にアホの子があるはずっ!
『それではステータスオープン!』
◎義輝ちゃん(今は女?)職業 白髪巨乳美少女(元室町幕府第十三代征夷大将軍足利義輝)
・力1・体力2・知力(アホの子)-10・運これだけ不幸な目にあうのはある意味幸運?
〇装備、襤褸切れの着物、巨乳(解除不可)、フンドシがねえよチッ
・技能 鹿島神當流、暗殺 (されます)、謀略 (されちゃった)、逃亡(最近不調)、長慶嫌い(長慶さんが近づくとステータス半減)、天井天下唯我独尊(自分より上の存在は嫌いからやる気アップ、テータスは増えない。ただやる気がアップ)、たかり(逃亡先は良いモノ食べたい)、転移者(本物だよっ!)、輪廻転生(ヒミツ♡)
「・・・流石義輝ちゃん期待を裏切らないな」
『なんでしょう、私でも憐れんでしまいます』
俺の時より悲惨すぎる。俺なんて力は5あったぞ、野ウサギが10だから負けるけどな。技能ではなかったがやはりアホの子はあった、技能より酷い知力にだが。
あれ?目から水が・・・そうかこれが自分より下の人を見たときの感情か。
『ご主人様それが憐れみですよ。死ぬ前に知れて良かったですね』
「ああ、少しだけ人に優しくなれそうだよ。する相手がいないけどな」
装備が襤褸切れの着物はわかる。巨乳は装備なのか?解除不可にしてまで装備枠にいれる俺の敵よ。少しだけわかりあえたぞ。フンドシ装備してないのに書いてあるし舌打ちされてる。なに義輝ちゃんノーパンなの?三大欲求の一つがあればなー。
「技能だが・・・酷すぎないか?」
『以前に巨乳催眠という酷い技能を持った人がいましたけど、それを軽く上回りますね』
巨乳催眠?また気になるワードが・・・。
「かっこの部分が説明になってないし、説明ついたらデバフか意味が無いし漢字間違っているし天井じゃなくて天上だろう、たかりなんて義輝ちゃんの望みだろうし」
『ステータスまで侵食するアホの子なんですね。あ、でも転移者は凄いですよ本物の室町幕府第十三代征夷大将軍足利義輝だったみたいです』
「なんだよ中身は男かよ」
『三大欲求の一つがないのにガッカリできるご主人様は本当に無くなってます?最後の輪廻転生で生まれ変わってたみたいですね。何がヒミツ♡なのか知りたいですがう~んアクセスできません』
「義輝ちゃんのステータスのくせになんて生意気な」
『精神を壊していいならわかるもしれませんが』
「壊れない確率は?」
『3.14パーセントですね』
「ならダメ」
『確率が高かったならご主人様は実行しそうで少し怖いです』
円周率はなー、雨乞い2.14でバレンタインだし絶対に怪しい。俺なら絶対に何かしかける。
「ま、暇つぶしには最適だな義輝ちゃん。なにもしなくても笑わせてくれる」
『そうですね三大死の逆の三大がっかりに入りますよ』
「なにそれ知りたい」
『まだ時間はありますし後でお話ししましょう。具視ヘアーがアホの子のせいで外れました』
「今知りてー」
『それよりご主人様の村の情報を見ましょうよ。アホの子のおかげで閲覧できるようになりましたし、最初で最後の村情報更新ですよ。一応雨乞い2.14は血と鮮血が飛び散るほのぼの村育成ゲームですからオペレーターの私は凄く興味があるんですっ』
具視ヘアーが凄く気になるがホネ子ちゃんのお願いは聞いてあげたい。
「いいけどさ、やっぱり村Pは増えなかったな」
やはり義輝ちゃん期待を裏切らないアホの子だ。マイナスにならなかったのがちょっと不思議。
『それはですね村情報を見ない限り更新されないんです』
「なにそれ普通自動更新だろうが」
『自分でちゃんと確認しろと初期の製作者達のメッセージが残されてます。物品交換や村人召喚しても村情報を見ないと見かけは減ってないように見えて中身はちゃんと減っているんです。そしてそのままマイナスになったら・・・』
「・・・なったら?」
『爆発四散ですね』
「隠れトラップかよ」
このゲーム売れたの?クソゲー過ぎない?俺の記憶よこんなゲームしてたのか。
「見てもいいけど義輝ちゃんだから村P減っている可能性は高いよな」
『爆発四散してないので村P15も減ってはいませんね。私の予想では村P1になっていると思います』
「俺は村P14だな。義輝ちゃんはここぞいうときに期待を裏切る女だ」
『むっ、それならご主人様が勝ったらタバコを交換していいですよ』
「マジでっ!頼む義輝ちゃんっタバコのために村P14!村P14!」
『タバコは村P10も消費するんですがねー。命よりタバコとは』
どうせ死ぬなら吸いたいのっ。三大欲求の一つが封印されている今はタバコだけが唯一の望みっ!
「ホネ子ちゃん、アホの子義輝ちゃん、俺よっ!力を貸したまえぇっ!」
『記憶喪失で頼れる人物が自分を入れて三人とか悲しいですご主人様』
うるさいわっ!他はきっかけがないと知識が起動しないんだよ。
それじゃポチっとな。
システムウインドウにある村の情報を念を込めて押す。
いろいろなウインドウが現れて情報が表示されるが今の俺達には村自体が無いので関係ない。唯一関係のあるウインドウは。
「・・・」
『・・・』
それを見た俺とホネ子ちゃんは絶句した。
【村育成ポイント65535】
「『はあぁっ!?』」
「余はこれ以上食べれないのじゃ~」
ーーーーーーー
誰か筆者の代わりに義輝ちゃんの転生中の死亡例を考えてくれませんか?(;・ω・)
面白かったら義輝ちゃんがお喋りしますのでm(__)m
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