第4話ミニチュア骨格標本のホネ子ちゃん


『ようやくご主人様に触れられました』


 現在、俺は胡坐をかいて座り、正面には鼻血を出した義輝ちゃん、そして俺の胡坐にミニチュア骨格標本が鎮座していた。

 ここまでくるのに長い時間がかかった。

 まず顔面に骨がしがみつてきて現代日本人が思い浮かべるのは?そうエイ〇アン。超パニックだったよ、あと記憶喪失でもエイ〇アンは覚えているんだと少しだけ残った理性が考えた。

 そして顔面から地面に倒れた義輝ちゃんが起き上がって見たものは、顔面に骨格標本を付けた俺。

 さっきとは逆で取ってほしい俺と怖くて逃げる義輝ちゃん。再び顔面から地面にダイブする義輝ちゃん。


『あの~私お話し出来ますから、落ち着いてから話し合いしませんか?』


 ミニチュア骨格標本に正しいことを言われたところで俺達のパニックは終了した。

 そして座って話し合いになったのである。


『まず私から自己紹介しますね。オペレーター骨村娘ちゃんですっ。ご主人様は雨乞いフィーバータイム2.14の世界に転生してきました』

「・・・」

「・・・」

『あれ?反応が無いですね。おーいご主人様ー』


 ミニチュア骨格標本こと骨村娘ちゃんが胡坐の上に立って俺の顔の前で手を振る。


『反応が無い。ただの屍のようだ』

「いやいや、お前が屍」

『あっ反応がありましたっ』


 やったーと万歳する骨村娘ちゃん。


「骨村娘ちゃんの名前しかわからなかった」


 正直に答える。嘘をついても仕方ない。オペレーターと言っていたから、たぶん骨村娘ちゃんは俺が生きていくためには絶対に必要な存在だ。義輝ちゃん?迷惑しか被っていないから別に必要ないかな。


「なにか不愉快な事を思われているような」


 いらんとこだけ勘が働くな。


『そうですねー、どれから説明したらいいでしょうか』

「じゃあまず転生で」

「そこは雨乞いなんたらじゃろうがっ。余はこの世界にどれだけ殺されてきたか・・・」

『私はご主人様の言うことしか聞きませんので』

「くぅーなんで余にはお前みたいなのがおらんのじゃぁー!」


 ゴロゴロし始める義輝ちゃん。


「よし、いまのうちだ骨村娘ちゃん」

『そういう自分本位なご主人様が好きです。えーと転生ですね、簡単に言うとご主人様は現世で死んでこの世界で生き返りました』


 ・・・そっかー、俺死んだのか。なんか悲しい気分だけど記憶がないからどこに持っていけばいいのかわからない。


「俺の記憶喪失の原因はわかる?」

『それはですね。ご主人様がこちらに再構築されるときに最後にその記憶と私が脳内に入ることになっていたんですけど』

「こわっ、骨村娘ちゃん俺の脳に入るの?」

『私はシステムみたいなものですから物理的に入るわけじゃないですよ。ほら』

「きもっ」


 骨村娘ちゃんが俺の腹部にその骨の腕を沈ませる。別に痛くも痒くもない。


『私はご主人様がいたところで言う中二病で情報体というやつですか。他の人には私は触れることは出来ませんしご主人様も私が設定しなかったら触れませんよ』


 地味に毒吐くな骨村娘ちゃん。


『ご主人様の前世になるんですかね?ご主人様の身体が出来て、その後に私がご主人様の記憶と共に脳内に入ろうとしたその時っ!』


 タメを作る骨村娘ちゃん。やるな俺は嫌いではない。


『そこにいるアホな白髪巨乳女と額をゴッツンコしたせいで私はアホの後頭部に刺さりご主人様の記憶はどこかに飛んでいきました』

「やっぱりてめえのせいかあぁぁあっ!」

「な、なんじゃっ!?余は通り過ぎる蟻を数えるのに忙しいんじゃぞっ」


 蟻数えという子供でもすぐに飽きる苦行に移行していた義輝ちゃんを捕獲。

 こめかみにぐ~りぐ~り。


「ぎゃあああぁぁぁっ!余がいったい何をしたあぁぁぁっ!?」

『あ、それさっきそいつの後頭部に刺さっていた時にされてマッサージされているようで気持ち良かったんですよね』


 骨村娘ちゃんは俺の行動と同時に俺の頭によじ登っている。


「ふう、少しは気が済んだ。そこら辺で蟻を数えてろ」

「ううぅっ、余少し漏らしたぞ~」

『うわっばっちぃ』


 ポイッと義輝ちゃんを投げ捨てる。動くことも出来ないのかそのままうつ伏せで倒れたままになった。


「え~と骨村・・・長い長いよ。よしっ!今日から骨村娘ちゃんはホネ子ちゃんで」

『はいっ!今日から私はホネ子ちゃんですっ』


 なんだろうなホネ子ちゃんやけに相性がいいけど俺の記憶を吸収してないか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る