第3話記憶喪失の主人公と輪廻転生義輝ちゃん
「ふむ、おぬしは記憶が無いと申すか」
将軍様(笑)改め義輝ちゃんは俺の話を聞いてくれるまで落ち着いてくのに少し時間がかかった。
だから胡坐をかくなギリで中が見えない状態なんだから。
俺達は二人対面で座っいる。
義輝ちゃんを落ち着かせる間に自分の姿を見たが昔の野武士のような恰好をしていた。自分の記憶はないが俺は平成から令和にかけて暮らしていたはずだ。決して武士とかの世界ではない。
「自分の事だけさっぱりわからないんだよ」
現代日本の知識があるだが自分に関わることだけがすっぽり抜けている。
「強く頭を打って阿呆になるという者がいると聞いたことがあるような」
「ああ、なんか意識が戻りかけたときにいろなんことが思い出されようとしたらもの凄い痛みが・・・」
「・・・」
あ、気づいたよ。そして義輝ちゃんも気づいたようで冷や汗をダラダラと流して間が泳ぎはじめる。
「お前か~俺の記憶喪失の原因は~」
「違うっ余、違うっ!痛い痛いいたたたたたたっ!」
逃げようと腰を上げかけた義輝ちゃんを確保。こめかみに拳をぐ~りぐ~り。
俺の下で暴れる義輝ちゃん。胸がバルンバルン状態です。
おかしいな?これだけエロい女を見て俺興奮していないぞ。そんなに俺は枯れている年なのか。それにしては義輝ちゃんを迎撃するときには良く体は動いたし、今も逃げようとする義輝ちゃんを捕まえられた。
「う~ん、何か変だ」
「考え込む前に余の頭を解放してほしいのじゃ。このままじゃと痛みでシャーッじゃぞ」
おっとそれは汚れるから勘弁だ。ペイっと義輝ちゃんを投げ捨てる。
「フギャッ。うぅっなんじゃ余そんなに悪いことしたのかのう?」
「いやお前が俺を追いはぎしなければ記憶があったんだよ」
女座りで泣き崩れる義輝ちゃん。着物がギリギリまで胸元も下もはだけているのに性欲が湧かんっ!欲がないことがもの凄く不満だ。
「たぶんじゃがおぬしは折れ鍬赤フンと同じ存在じゃ」
「違うと言っているだろ」
「ま、まてっ。その頭を痛みつける出ないっ。余が言いたいのはおぬしはこの世界の者ではないということじゃ」
義輝ちゃんが頭を両手でガードしながら答える。
「ここはな余がいた場所とも違う。京から配下と逃げておるうちに変な霧が出たと思ったらすぐに晴れての、そしたらこの世界におったのじゃ」
「それじゃあ別に変ったとは言えんだろう」
ざっと周囲を見ても日本にある木のようだ。もしかすると少し歩けば道路があるかもしれない。
そんな呑気な俺を見てフッと笑う義輝ちゃん。
「その後が悲惨じゃったのじゃぞ。野犬が襲い掛かってくる、猪が襲い掛かってくる猿が襲い掛かってくる。そんなことがあると思うか?」
「いやそれはたまたま・・・」
「そのあとはヒャッハーと叫んで髷とは反対に髪を伸ばして逆立てた連中に襲われる、それに応戦したら肩に変なトゲを生やした集団に教わるのがたまたまかのぅ」
おいそれは世紀末いる連中じゃないのか?
「しかも全員下はフンドシじゃ」
「なんだそりゃ」
「余にもわからんのじゃ」
頭をガードしながらカタカタ震える義輝ちゃん。
「その後もいろいろあったが言いとうない。おぬしの世界はこんなおかしい連中と獣が襲ってくる世界じゃったのか?」
「・・・」
答えはノーだ。
「俺の世界は義輝ちゃんが将軍のまま死んだ遥か未来だ」
「ふむ、余は碌な死に方はしとるようだが日の本は続いておるみたいじゃの」
「足利将軍は義輝ちゃんの次の弟の義昭で滅んだけど、未来はいろんな苦難を乗り越えて平和になったよ」
「おぬし・・・さらっと余が生涯をかけた足利将軍家が滅んだことを言いよったな?」
グヌヌと唸る義輝ちゃん。
「ここでは己の常識は通用すると思うなよ。まず獣を見たら逃げろ。見つかったら死ぬんじゃ。人、特にフンドシまる出し連中は見つかったら即自害じゃ」
「おい。それこの世界での生き方を教えているようで死に方を教えてないか」
この世界の先達としての注意かと思っていたらさっさと死ねといってるよこの白髪巨乳美少女目め。
「何を言っておる。何度か言ったじゃろう。余はこの世界で何度も生まれ変わっておると」
義輝ちゃん、この世界で一人輪廻転生を繰り返してました。
「大体の生き物にはなったのぅ。虫が一番ましかもしれん。何も考えなくてよかったからの」
「・・・」
「鳥は駄目じゃな。最初は何か当たってグシャて音を覚えておるし、他の時はだいたい人に狩られるんじゃ。血抜きの為に生かされている時はきつかったのぅ。ああいうときは流れる自分の血を数えていると気が遠くなっていって楽じゃ」
「・・・」
実体験を聞かされるのがこんなにも心にダメージを及ぼすものとは思わなかった。
「まあ聞いとるかぎりではおぬしは余と同じような感じそうじゃし、頑張れっ!」
「誰がそんな悲惨な輪廻転生聞かされて頑張れるかあぁぁっ!」
義輝ちゃんの襟を掴んで前後に振る。
「な、なんじゃせっかく楽に死ぬための方法を教えてやたっのに!」
「俺が義輝ちゃんと同じ存在かわからねえだろうがっ!一発即死でお陀仏の可能性が高いんだぞ」
「ふっそっちが遥かにマシじゃぞ」
「羨ましがんなよっ」
「羨ましいわっ何百回も転生してみろっどれだけお陀仏が羨ましいかっ!」
流石に俺も余裕ぶっていられなくなってきた。だって義輝ちゃんから聞く限り、たぶん義輝ちゃんこの世界の食物連鎖で底辺のひた走っている。そして義輝ちゃんとたいして変わらなくて輪廻転生もあるかどうかわからない俺はもっと下かもしれないのだ。
「ううっぷ、そ、そろそろ止めぬかっ。女子が口から出すぞシャーッと出すぞっ」
「そのシャーッは止めろっ。脅し文句なら最低だ。んっ?」
振られまくって青褪める義輝ちゃんの頭には髑髏の簪が差してあるのだが、なにかおかしい。
「ひぃっ!」
「な、なんじゃっ!?人の頭を見て驚くなぞ失礼な奴じゃのっ」
「い、いや髑髏の簪がな」
「髑髏の簪?そんなもん余はつけておらんぞ。だいたいその日の食い物にも事欠くのに、持っておったら無害な村で食い物と交換しとるわっ」
本当に義輝ちゃんは何言っても残念な事しか出てこないな。
いやそんなことは今はどうでもいい。それより髑髏の簪だ。いや簪とは言えないだろうだって。
「義輝ちゃんの後頭部に頭部以外がずっぷり刺さっているんだが」
「なにいぃぃっ!?」
綺麗に髑髏から背骨が出ているんだがそれすぐに義輝ちゃんの後頭部に貫通しているのだ。義輝ちゃんは毛髪量が多いので根本は見えないが角度的に刺さってなければいけない。
「ひいぃぃっ取って取ってなのじゃあぁぁっ!」
「馬鹿っ寄るなっ!ズルって出て来て義輝ちゃんの脳みそが付いてたら悪夢見るだろうがっ」
「それも嫌じゃあぁぁっ」
逃げる俺を頭を押さえて追いかける義輝ちゃん。森の中でシュールな光景だ。
「あうっ」
義輝ちゃんが木の根に引っかかってこけた。よしこれで追いかけてこないと思ったら、顔面から地面に倒れる義輝ちゃん、衝撃で骸骨の簪?がポンッと飛び出た。
「あ、簪じゃなくて小さい骨格標本だったんだな」
こちらに飛んでくる骨格標本を冷静に観察してしまった。
なにかあの骨格標本動いていないか?バタバタ手足を動かしているような。
『ご主人様~!』
「喋ったっ!?」
驚いた俺は避けるタイミングを逃して顔面でミニチュア骨格標本の抱きしめを受けることになった。
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