19

 三日目の朝、起床――文字通り床から――した黒野と煝煆が例のトイレ塔へ向かおうと縁側甲板へ出れば、丁度、ムスリム夫婦がそこで息を抜いているところだった。最初に白沢の背中だけが見えた黒野は、一瞬高くなった波の飛沫に靴を濡らされつつ、気軽に彼へ近づいたのだったが、直後に、うわぁ、と声を出してしまう。

 丁度、昨日イロハが潮に脚を洗わせていたのと同じ場所で、氷織が、頭の蛇群を自由に解き放ったまま、とっくり寛いでいたのである。

 彼女の姿へ露骨におののいたことで、非難がましく白沢に睨まれた黒野は、つい、口を両手で押さえるという、あまり謝罪になっていない動作を取ってしまったが、当の氷織は莞然かんぜんと、

「まぁ、驚くの理解も出来ます。……そろそろ慣れて欲しい、という気持ちも同時に有りますが、」

 相変わらず濃い褐色のゴーグルで隠しているので目許は伺えないが、しかしそれでも、見るからに気を緩めた様子の彼女は、胡坐に座り込んだまま水平線の方を眺めつつ、

「今の私は、本当に穏やかな気分なのですよ。長年、家で白沢と二人きりの場合を除いて、私はずっと頭部を隠してきましたから、本当に窮屈で窮屈で堪らなくて、

 ……そうして無数の目口を塞ぎ続け、文字通り息の詰まるようだった私が、こんな広漠な滄瀛そうえいを前にして、こんな快濶かいかつたる潮風を前にして、人と、誰かと、まるで気兼ねなく語らえるのですから。」

 氷織が、顔を黒野へ向ける。そうやって彼女の柔らかい笑みへ対面すると、少し上に群生している数多のじゃの目も、寧ろ可愛らしいように彼へは思えてくるのだった。黒き蛇の一々が蚯蚓みみずの如く身を捩らせている様すらも、不気味には感ぜられず、寧ろ、浴びられるのが稀なのであろう陽光を心底楽しんでいるという、牧歌的な様子に見えてくる。

「ですから、私は寧ろ嬉しいのですよ、貴方と煝煆が此処を通りがかってくれてね。つまり私は、こんなにも開けた気持ちよい場所で、こうして貴方達と言葉を交わせるのです。」

 黒野の後ろに佇んでいた煝煆は、これへ何か返そうと口を開いたが、しかしその瞬間、矢庭な潮風に横殴られて絹金の髪を口の中へ入れてしまう。

 うわ、だの、糞、だの喚いて三人に笑われた煝煆は、手綱でも摑むかのように、躍らされた側の髪を乱雑に握りながら、

「その気持ちは、分かるような気もするがね、氷織。しかし、真に気の毒だが、この先お前と話すのは、基本的に議場室でになるだろうよ。折角時間を使って会話を為すならば、少しでも、状況を打開する材料を皆で見つけねばな。」

 氷織は、分かっておりますとも、と、文面に反していとも遺憾そうに述べてから、

「ですから、……もしも、無事私も貴方達も生き延びたら、是非、また伴だって船旅へ出ようではないですか。そこでは散々、海風を浴びつつ気軽に語らわせていただきますよ。」

 矢庭に饒舌となっており、そして具体的に会話を望んですらくる氷織に接したことで、黒野はふと一つ気がつき、そして、打ちのめされる。つまり、この、決して美しくない声は、亜人が懸命に人間らしい声を出そうとした努力の賜であり、そしてどうやら寡黙についても、声で襤褸を出さぬように本来の社交的な性癖を必死に押し殺していたのだと、知ってしまった黒野は、彼女の持ち出した仮定――もしも皆が生き延びたら――が確実とは言えぬ以上、もう少しでも氷織の言葉を、この身を灼く日射の元で聞きたいと願ったのだったが、しかし尿意にはどうしても勝てず、已むなく煝煆をトイレへの方へ促した。


「さて皆の衆、困ったことが有ってね。」

 朝食後、開口一番に蟠桃がそんなことを述べ始める。

「実は、本日の夕刻かその前くらいに、……この船は、☆△□王国へ着いてしまうんだ。」

 上品に汁物を啜っていた煝煆は、この突拍子も無い宣告に気管を詰まらせて酷い吃逆を始めてしまい、そうして黒野に介抱される不様な彼女を、蟠桃は一瞥するも、まぁ死にはしないだろ、と呟いてから、

「と言うわけで、果たして誰を『悪魔』として吊り上げるのか、そろそろ詰めねばならないのだが、……さて、諸君。氷織の、行動に関する疑義が晴れてしまった今、最も如何わしいのは誰になるのだったかな?」

 彼が、言葉尻と共に真横を見やると、他の者も――苦しんでいる煝煆を除いて――つい、其方を向かされる。

 突然無数の視線で矢達磨に射貫かれた不意安は、一瞬憤然と眉を顰めたが、すぐに平然を纏いつつ、

「まぁ、一定以上、ではなく、最も怪しい、という条件でしたら、誰か一人が該当するのは詮無きことでしょう。……しかし、まさか、私が多少の瑕を昨日一昨日の論戦でお見せしたからといって、私の首へ、皆様の命運を委ねる訳でもないで御座いましょう?」

 蟠桃は、まだ唾の渇いていないフォークを片手でくるくる弄びつつ、

「そりゃ、まあな。外したら全員とんでもないことになるのだから、もう少しまともな材料が欲しいところではある。」

「ならば、……せめて、」

 拳銃の姿を象る不意安の右手が、高く掲げられた後、落雷のような勢いで振り降ろされつつ、一人を、――黒野を、指し示した。

 煝煆に係っていた彼が、一拍置いてから漸く取り乱すと、

「最低限でも、彼も、俎上へ載らねば道理が通らないでしょう! 私が多少おかしなことを述べてしまったというのならば、黒野さんに至っては、そもそも大したことを述べられていないのですから。」

 頼みの煝煆が未だまともに話せないので、彼がただ戸惑うことしか出来ないでいる中、守谷が、髭をふるわせつつ一つ唸ってから、

「その点は、然りですな。そもそも『悪魔』の立場からしても、教養じみたことだけでなく我々のことについても良く知らない筈の黒野殿に化ければ、最も正体が露顕し辛いだろう、と期待出来たでしょうしの。」

「そこで、です!」不意安は、最早憤ろしげに立ち上がってしまいつつ、「私と、黒野さんで、一騎討ちをしようではないですか。これから私と彼が主立って論戦を繰り広げますので、皆様は、横から適度に介入して下さいな! 二人のどちらかが、やはり胡乱であるとはっきりするかも知れませんし、或いは場合によって、おかしな介入の仕方をした誰かこそが、怪しい者と炙り出されるかも知れないのですから!」

 この、優婆夷からの燃え立つ果たし状は、円卓の雰囲気に殆ど障碍なく受け入れられ、黒野を慄然とさせたが、

「ちょっと待て、貴様、」漸く口を利けるようになった煝煆から、未だ苦しげに、「お前、それは、おかしいだろう! そんな、言葉を選ばなければ、をして、何になるんだい。そんなもの、お前が勝つに決まっているだろ!」

 不意安の、不穏なうそ笑みが迸る。

「その点、つまり彼我の実力差については、どちらを『悪魔』として糺弾するかの決断に際して、皆様が適宜加味していただければ幸いです。……とにかく、ここまで殆ど計ることの出来ていなかった、黒野さん――或いはそう名乗る何者か――の知性について、一度でも試金石へ擦り付けねば、私達にとって危険で仕方がないというものではないでしょうか。」

 堪らずに寄る煝煆の金眉へ、彼女は静かに、しかし烈火の如く畳みかける。

「煝煆さん。逆に此方から訊ねれば、黒野さんが試験するまでもなく信用出来るなどという、客観的な根拠は、……何処かに、一つでも有るのですか?」

 この当て付けに、煝煆は、物を嚙むように口籠るも、しかし、結局何も言い返せずに黙り込んでしまう。

 両者を見していた蟠桃は、少考する素振りから、

「まぁ、ある程度真っ当な言い分だと俺は思うが、……どうでしょうかね、イロハさん。」

「ええ。少なくとも、やってみる価値は有るでしょう。」

 この静やかな宣告を聞いた煝煆が、情勢の悪さを承知で同胞の黒野を護らんと、尚もしぶとく何か喰い下がろうとするのを、しかし不意安が、朗々と、怡々いいと、そして残酷に上書きする。

「さあ、黒野さん! 正念場です!」つんざかんばかりの声音が、殷々と壁を震わせる中、「せめて、先攻はお譲りしましょう。……貴方の命の懸かった、文字通り『懸命』の、論撃を、是非私へぶつけて見せて下さい!」


 喧しい空気の中、黒野は、固まってしまっていた。しかしそれは、悚然しょうぜんというよりも、あの劇場で美事な光の彩演を見せてくれていた、つまり、大トリのプリマドンナを張る程の大立者、自分とは世界が二重の意味で違った彼女が、こうしてわざわざ、路傍の石に過ぎなさそうな自分のことを、破らねばならぬ敵として取り上げていることに、不思議な感覚を見出していたのである。この不思議は彼にとって、当然恐ろしくもあったが、しかし、同時に心地よくもあった。賞状でも手渡されているような気分を、彼は、死への近接と同時に覚えたのだ。

 そんな奇妙な感慨に励まされつつ、彼は、口を開く。

「取り敢えず、座りません?」

 不意安は、一瞬瞠目したが、しかしすぐに不敵な片笑みを示した。へえ、存外落ち着いているではないか、と言わんばかりの怡然いぜん

 素直に腰を下ろした彼女が、弾みで錫杖を璆鏘きゅうそうと鳴らすのへ重ねるように、黒野は堂々と述べ立てる。

「では、不意安さん。……『体失・不体失の諍論じょうろん』について、証空を弁護していただいてもいいですか?」

 呻き声が、まず、菩薩と元菩薩、不意安と煝煆から飛び出た。そして残んの者も、感心したようにそれぞれの歎声を漏らす。

 何せ、場の誰一人として、黒野がこんな確からしい問い掛けを為せるなどとは、思ってもみなかったのである。確乎として、そして鋭さも備えた、カハシムーヌの場に恥ずかしくない問いが各〻へ沁み渡った。

 その真相は、彼がこのカハシムーヌの会合に向けて、殆ど一夜漬けな知識を急いで蓄えた結果得られた、数少ない材料からの、しかも竹槍のように頼りない張りぼてな一撃に過ぎなかったのだが、――とにかく敵方の不意安は、感銘を隠さぬまま、少しもたついてから、

「お手数ですが、……、その、『体失・不体失の諍論』について、黒野さんの口から説明していただいても宜しいですか?」

 この、自分が知りもせぬことを無責任に問い掛けてきているようでは承知せんぞ、という返し手が纏う、当て擦りのような香りを、決して好もしくは感じなかった黒野であったが、しかし、要求自体は真っ当と思い直し、

「確か『口伝鈔』に記された、親鸞と証空の争いですよね。法然の説いた、口称念仏による往生の実態について、若かりし親鸞は、現世で身体を失わないままの往生が可能だとする『不体失』を訴えました。しかし逆に証空は、『体失』、つまり、往生の際には当然に身体を失い、死に伴って往生は完成するのだ、ということを主張します。

 で、……済みません、論筋は失念しましたが、とにかくその後親鸞が証空を論破し、同席していた法然も親鸞が正しいと認めた、という逸話だった筈です。」

 これを静かに、しかし青筋を立てつつ聞いていた不意安は、その小さな顎を持ち上げつつ、まぁ宜しいでしょう、とだけ傲岸に述べる。

「成る程、成る程、」頭の黒き蛇群を解き放ったままの氷織が、まるで緘黙行明けの如く朗らかに、「つまり、かつてのとある日、それぞれ法然の高弟であった証空と親鸞が論をぶつけ、親鸞が勝利を収めたのだ、と。

 確か、不意安の頼む浄土宗西山系は、法然の次には証空を起点とするのですよね? その後学語世界において、親鸞の影響が興した浄土真宗が隆盛したことも蹈まえると、そのような高祖の敗北は、浄土宗西山系の意義を揺るがしかねない訳ですか。――これは少々、大袈裟な表現かも知れませんが、」

 これを聞き留めると、不意安は見るからに苛立ちを深めた。瑞々しい、殆ど少女の面立ちが、論説で戦う為に研ぎ澄まされて行く。

 黒野は、昨日一昨日の言動を手掛かりに、彼女が――熱心な浄土宗徒らしく――浄土真宗のことを決して快く思っていないことを、正確に見抜いていた。ならば、この、自分なんぞがとってつけたように用意してきた武器も、偶然にも浄土真宗からの攻勢の含みを纏う以上、少しは有効打になるかもしれない、と、先程の彼は縋るように弁じていたのである。

「まず、……黒野さん。その『口伝鈔』の著者は、誰だか御存じですか?」

 しかし、この不意安からの反問に、黒野は嫌な感触を覚えさせられた。どうやら上手くいったと思えていた、不意安を揺さぶる一撃、明らかに彼女の理智を一時的にでもこぼたせた問い掛けは、しかるに、どうも好ましくない方向へ事態を進行させつつあるではないか。まるで、獅子を罠に掛けて脚一本叩き折ったと喜んでいれば、その瞳が血走ったかのような、

 とにかく、動揺しながらも、恥ずかしながら、とだけ彼が返せば、

「なら、この機会に憶えておくと良いでしょう。覚如かくにょです。……浄土宗本願寺第三代宗主にして、ですよ!」

「……あ、」

 それだけ呟いて顰めてしまう彼へ、不意安は、容赦なく畳みかける。

「つまり、法然上人、証空上人、そして親鸞がとうに遷化せんげしていた――浄土宗も浄土真宗も、高祖が尚も生きているなどという、どこかの宗派のような戯れ言は申しませんので――死人に口無しの情況下、そして何より、浄土真宗を盛り立てんと誰よりも篤き活動を為した、親鸞の曾孫が、証空上人を腐して親鸞が持ち上るような逸話を、突如著した訳ですよ! その当時、1331年は、本願寺の成立、つまり『浄土真宗』というものが興ってからまだ10年しか経過していなかった以上、……ええ、覚如の、他宗派への、特に天台系への戦意については、想像に余るものが御座いましょう。

 そのように、感情的にも戦略的にも、明らかに証空上人を貶める動機を持っていた僧が、登場人物全てがとうに円寂えんじゃくしてから、そのようなを、父親から聞いたと嘯きつつ著したのですよ。……黒野さん、こんな背景で書かれた文書の、内容を信用するという判断が有り得ますか? そんなもの、例えば『徒然草』の、証空上人が俗物と描写されている段を信用し、そのまま上人を軽んじるような愚昧至極でしょう!」

 黒野は、というよりは場の誰も、「徒然草」など書き出し以外知らなかったが、しかしとにかく、「口伝鈔」がとても公平な文献とは言えぬのだという主張は、全員へ伝わり、よって最早、彼からの不意安への挑戦については、早くも完膚無きまでに結着がついたのだったが、

「そして黒野さん!」しかし怒れる優婆夷は、まだ静まらない。「その、『口伝鈔』とやらの逸話における諍論ですが、私からその結末を申し添えましょう。そこでは、法然上人が、親鸞の語ったものこそが、浄土門の目指すべきところ、『念仏往生』――念仏にのみ専念して往生を為す――であり、証空上人の語ったのは『諸行往生』――種々の修行を散漫に為して往生を試みる――に過ぎぬと、評されたことになっているのですよ。つまり、覚如は、念仏以外の行や戒律も、直截往生には繫がらなくとも念仏生活を続ける助け、『助行』にはなるとした本道の浄土宗と対照しつつ、親鸞の拓いた方向、念仏以外は真に妨げにしかならないという過激な思想を、法然上人の口を勝手に借りて弁護したのです。……これが作り話であったのならば、なんと、卑劣なことでしょうか!

 ……ああ、そんなことはどうでも良いのですが、とにかく黒野さん、是非とも一つお教えしたいのですが、証空上人は、法然上人の『選択せんじゃく本願念仏集』、浄土宗の開宗を為した書の、撰述に携わっているのですよ! これはつまり、法然上人がその奥義を著す行程へ、証空上人が誰よりも深く関わったということであり、当然に、その教えや『選択集』の内容には、誰よりも証空上人が精通していた筈なのです! そんな証空上人が、諸行往生を称えるなど、……ましてやそれを、法然上人に指摘されるなど――つまりこの二人の間にそんな恐ろしい齟齬が有ったなど――有り得る訳が無いでしょう! 大体、その『選択集』の著された当時に、そもそもまだ天台僧だった親鸞が、比類なき高弟であった証空上人よりも浄土門にその後精通したなど、……不遜極まりない、自家讃美ではないですか!」

 憤然と、しかし澱みなく不意安がこれを述べ終えると、議場室の中が静まり返った。美しい声質に乗った豊かな声量と、迸った彼女の怒れる知性、そして、抗う気を挫く確乎たる細叙が、場を完全に支配したのである。

 暫くして、参ったねこりゃ、と、蟠桃が苦笑しつつ漸く呟くと、不意安ははっとし、その、昂奮で赧然たんぜんとした顔を、戦う者の緊張から、小婦らしい呆け顔へと一旦緩めた。

 これを見て、口を挟む勇気を得たらしい白沢が、

「いや、何と言いますか、……お美事、ですよね。黒野さんの良し悪しはともかくとして、不意安嬢については、焼き付け刃の知性とはとても思えませんよ。」

 誰も、この評へはをかけなかった。つまり、黒野から不意安への攻撃は、見事逆手にとられ、寧ろ彼女の信頼を向上させる結果に終わったのである。

 そんな麗しき勝者は、どこからか取り出した手巾の様な布きれで汗を拭きつつ、

「光栄、と言いますか、……皆様に御理解頂けて何よりですね。有り難う御座います。」

 そんな彼女の勝ち誇りを茫然と眺めつつも、黒野は、すぐ横の椅子に沈む煝煆が、悩ましげに苦悶してくれていることに気がついていた。不意安の弁論の美事さを認め、それを破ることは諦めつつも、しかしどうにかして自分のことを救おうと、心を砕いてくれているのだろう。全霊を、働かせてくれているのだろう。こんな彼女へ、彼は、心から感謝したくなっていた。

 しかし彼は、いざ煝煆がなんとか口を開こうと前傾した、その瞬間に、

「もう一つ、いいですか?」

 煝煆が、不意安が、瞠目する。他も、皆揃って駭然とした。なんだ、……あれだけ不様に打ち倒されて、まだ、何か、挑みかかると言うのか?

 浄土門の優婆夷は、余裕からか、嫌みも毒も無い、ただ涼やかな微笑みから、

「なんでしょうか?」

 その優しげな声による響きが途絶えてから、黒野は、息を飲み、一語一語、しっかりと述べて行く。

「オウム真理教は、仏教からどうして、あのように展開してしまったのでしょうか。」

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