第2話
この世界には魔法がある。
魔法はまず魔力がないと使えない。そして呪文がないと発動しない。当たり前だが使い方を知らないと方にちすらならない。
例えばハサミ。手がなければ握ることすら出来ない。コレは魔力だ。そして、もちろんハサミ本体がいる。コレが呪文。そして、ハサミの使い方を知らず一方だけの刃で切ろうとしても上手く切れない様に、使い方を知らないと使えない。
魔導部隊は炎を生み出したり、光の矢を飛ばしたりなど、五行と呼ばれる要素を司る事を得意とした部隊だ。召喚部隊は物を生み出したり、使役したりなどを得意とする部隊。
魔力には色があり得意不得意はそれで決まる。とは言っても、その色は特殊なノワールの様な神の加護を得ている人間にしか見ることは出来ず。また、見える色も人によって違う。例えばノワールが赤だと言う色を皇帝陛下はオレンジだと言う。
なので、実際は色々試してみて自分の得手不得手を知る必要があるのだ。だから帝国は魔法教育に力を入れている。
そして、この国の魔導部隊や、召喚部隊など五つの部隊はエリートの中のエリートなのだ。
しばらくして、ルームが帰ってきた。その手には魔話機が握られている。
2つの半円が太い鎖繋がれているソレは、片方が相手の声を聞く受信機、もう片方が言葉を送る発信機となっており、魔力を持つもの同士が触れる事でお互いの意思疎通が出来る魔法道具である。
「妃殿下、皇帝陛下がお話があるようです」
ノワールは神妙な面持ちで魔話機を手に取るしかし、内面はウキウキである。愛しき皇帝陛下自声をかけて下さるのだから。その証拠にしっぽが左右にブンブンと動いている。
「陛下、御膳に身が無いことを謝罪致します」
「よい。して、なぜ魔導部隊を下がらせる」
耳元で聞こえる力強い声。全身が歓喜に震える。
もっと聞いていたい、そんな気持ちをノワールはぐっと堪え、言葉を紡ぐ
「はい、神託が下りました。リザードマンは生かすよにと」
「なるほど、であれば。種の殲滅ではなく。ある程度の数は残しての侵略という事だな」
「はい、どうかよろしくお願い致します。すでに召喚部隊に、命じて召喚を急がせております」
「……ふむ、降伏勧告が受け入れられた時の捕虜運搬用の召喚獣に我らを運ばせると言うのだな」
「さようで、ございます」
さすが我が陛下と、ノワールは口の中でいう。
今召喚部隊に急がせている召喚獣は水の中を自由に泳ぐことが出来るアスピドケロンと言うひとつの島の様に大きな甲羅を背中にようする魔獣。その巨体の為召喚に様子る魔力は膨大な為、複数人の召喚師たちが行う必要がある。
だが、兵士たちを運ぶには十分すぎるスペースがあるし。水中に引き込まれる心配も水中から投てきられる槍や弓に当たる心配もない。
なぜなら。アスピドケロンの背中はひとつの島に等しいほど巨大。木々が生い茂り小さな丘だってある
兵士たちはそれらに隠れならが進軍ができるのだ。
「ではれば、本日の夜半。そうだな、月の光が真上に来る頃襲撃を行う。アスピドケロンは瞬間移動でおくるつもりであろう?ならば、着法陣はこちらで用意しておこう」
「ありがとうございます陛下」
ノワールの答えを聞いたのか、それより先に切ったのか魔話機の魔力反応がきれた。
ちなみに、着法陣とは出陣陣から送り出されて物を受け取る魔法陣の事。
本来、瞬間移動の様な魔法は自信にしか使えない。
魔法発動者の体の一部に引っ付いて居ればそのものも付随物として、移動できなくもないが。
上半身だけ付随と扱われ、下半身と上半身が真っ二つになった例や縦半分で分かれた例、壁などの無機物にめり込んだ例など様々だ。
よって帝国で開発されたのが出陣陣と着法陣。
正反対の魔言を刻み移す物の質量に見合う魔力を込めることで、入口から出口への一方通行だが瞬間移動を他のものにも使う事ができるのだ。
「皇帝陛下は月の光が真上に来る頃出陣とおっしゃいました。出陣と同時にアスピドケロンを送り込めるようになさい!直ちに出法陣の準備にかかります」
ノワールは部屋の扉に手をかけるとふと、腹部を見た。痛くはない。
それでも、体調が万全かと言えばそうでも無いようなきがする。
ノワールは振り返ると真剣な面持ちでルームに伝える。
「バーナード殿に、協力して頂きたいとお伝えして」
ルームは不思議そうに頭を傾げるが、直ぐにワン!と返事する。ノワールより先に部屋を出ていった。
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