【閲覧注意】密猟の夜~ブリッラに忍ぶ間者~(暗殺者ピエト視点)

 商業しょうぎょうギルドしもサルメンタ本部ほんぶ各支部かくしぶ決定的けっていてきちがい。

 王都おうとの下サルメンタ本部は夜間やかん営業えいぎょうきんじられている。

 しかし、王都がいの各支部は夜間対応たいおうの夜間とうが支部棟のよこ併設へいせつされている。

 王都には鉄壁てっぺきまもりがある。魔物まものもいない。安心安全あんしんあんぜん首都しゅとなのだ。


 魔物がまち境界きょうかいかべえて侵入しんにゅうする緊急事態きんきゅうじたい

 夜行性やこうせい生物せいぶつ大暴おおあばれするさい

 他国たこく軍勢ぐんぜいによる侵攻しんこう

 大雨おおあめあらし森林しんりん火災かさい洪水こうずい地割じわれなどの災害さがい

 また、かねもうけのために悪事あくじをしにやって来る犯罪者。

 普段ふだんから、地方ちほう治安ちあん維持いじ最優先さいゆうせん事項じこう

 だから、王都外での暗殺はをつけなければならない。

 毛色けいろちが旅人たびびとは、犯罪者だとすぐバレてしまうのだ。


 上サルメンタ本部は庶民しょみん相手あいてにしないので、どんなさわぎでも、「門前もんぜんばらい」。

 上流じょうりゅう階級かいきゅうが夜間、おしのびでやってくることもある。

 だが、下サルメンタ本部は最近さいきん勢力せいりょく拡大かくだいし、夜間営業えいぎょう事実じじつじょうはじめている。

 どんどん、「貴族きぞくえてみせるぞ!」という野心家やしんかが王都にあつまってきているからでもある。

 このなみのがしはしない。

 抜歯屋ばっしやイーツ・フォーリアをやみほおるために、王都をはなれて、ブリッラちょういそぐ。



 ブリッラ町の境界壁きょうかいへきちかくは太陽たいようかたむきかけただけで、もう薄暗うすぐらつめたい。

 はやめ早めに衛兵えいへいがランプにともしたのがとおくからでも確認かくにん出来た。

 そして、かすかなスープのような家庭的かていてきで、あたたかなにおいもただよっている。

 ブリッラ町の正門せいもん裏門うらもんのどちらも、厳重げんじゅうだが。

 正面しょうめん突破とっぱされない常識じょうしき経験則けいけんそくから、はじまった夜間警備けいびもゆるゆるだ。

 偽名ぎめいでは正門を通過つうかしない。

 あえての本名ほんみょうだ。

「おいおい、ないかおだな。

 御前等おまえ密猟者みつりょうしゃじゃないよな?」

わるいな。盗賊とうぞくや密猟者、犯罪者はおことわりなんだ。

 ちいさなまちではごとをなるべくかかえたくないんだよ」

宿泊しゅくはく希望きぼうです」

「宿泊?野営やえい道具どうぐは?」

「あいにく、安全あんぜんたびをしたいので。

 グノス商会しょうかい従業員じゅうぎょういんのピエトです」

おなじく、ボスコです」

「ドォーモです」

衛兵えいへいのオノンだ。

 身分証みぶんしょうってるか?」

「オノン殿どの商業しょうぎょうギルドの会員証かいいんしょうでもよろしいですか?」

嗚呼ああ……本物ほんものだな。三人とも、『商人しょうにん見習みならい』で間違まちがいないか?」

「「「はい」」」

「よく来たな。

 グノス商会の使者ししゃ三名。

 商業ギルドブリッラ支部へ行くか?それとも、明日あす山越うあまごえにそなえるか?」

「ひとまず、宿やどに入って、身体からだやすめようと思います」

 ドォーモが余計よけいなことをさないか、心配しんぱいだったが。

 何とか、ブリッラ町へ入ることが出来た。


 暗くなるまえに、地図ちずどおり支部長の別邸べっていくようわれている。

 田舎いなか豪勢ごうせい屋敷やしきではなく、残念ざんねんなボロ屋敷やしき

 廃墟はいきょとはちがい、ほこり蜘蛛クモい。

「……」

 この屋内おくないっていた支部長は名乗なのらず、あらたな地図ちずわたして来た。

「ここの別邸はちょう境界壁の一部だ。裏戸うらとから、出入でい自由じゆうだ。

 しかし、今回こんかいはここをみちとして利用りようしない。

 フォーリアのボロいえにも、テンピもりへの抜け道があるからな。

 暗殺がおわわったら、俺がテンピ森へ案内あんないするよ。

 フォーリア家は裏門の町境界壁のそばにんでいる。自宅じたく薬草園やくそうえんの薬草ばたけ朝摘あさづみをするから、もう夕食ゆうしょくべて、もうすぐで就寝しゅうしんする。

 周囲しゅうい職人しょくにん農民のうみんおおく、朝早くからよくはたらく。

 早めに片付かたづけて、俺が教える抜け道でテンピ森へ行って、スライムを密猟してかまわない。

 午前一時にはこの別邸にもどる。

 そして、午前九時には正門から正規せいきに町から出ろ」

 淡々たんたんこまかな指示しじを出して来た。

 別邸のすぐそばでは、どもたちが道路どうろいしげのあそびをして、大人おとなたちにおこられているこえこえて来た。

 もう、夕方だ。夜に、備えねば。

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