3話 商業ギルドブリッラ支部夜間棟にて秘匿商談を

 日没にちぼつのブリッラ町はとてもしずかです。

 魔物まものはもちろん、密猟者みつりょうしゃうごきが活発かっぱつするよるたのです。

 日照にっしょう時間じかんもっとながかった夏至げしぎて、これからむかえる真夏まなつは日照時間がみじかくなっていきます。

 魔物も、魔物化する屍人アンデッドも怖いし、生きているのに密猟者や盗賊とうぞくおびえなければなりません。

 遠距離えんきょり戦闘せんとうの魔術をあつかえるものは魔物の討伐とうばつ

 近接きんせつ戦闘の者は密猟者や盗賊が町の中でわるさをしないように、衛兵えいへい志願しがんします。

 冒険者ぼうけんしゃ傭兵ようへいとして、他の町や国々をわたあるものもいます。

 どこの町も共通きょうつうしているのは、町はぐるりと要塞ようせいかこわれていること。

「ちょっと、お母さんと一緒に商業しょうぎょうギルドへ出かけて来るよ。先にていなさいね」



 僕も家を出てみました。

 商業ギルドの位置いちはブリッラ町の中心街ちゅうしんがい町役場まちやくばよこならぶように建っています。やはり、営業えいぎょう時間がいとじじられていました。

 そのまた横の建物たてものかりがともっていますので、僕はそちらに入ることにしました。

「商業ギルドブリッラ支部しぶ夜間やかんとうにようこそ、イーツ君。

 あっ、密猟者におそわれたショックで記憶きおくもどらないんだよね。

 ここで窓口まどぐち業務ぎょうむをしている、エリカ。

 イーツ君は日没までに森から町へ戻って来て、薬草の選別をして、それから夜間棟の窓口にポーションを納品のうひんしてくれてたんだよ。

 ポーション瓶にひびれが無いか。

 不純物ふじゅんぶついてないか。

 ぜ物でうすめて効果こうかよわまってないか。

 そういう鑑定かんてい担当たんとうしていたんだよ。すごいでしょ!」



「夜間窓口まどぐち業務ぎょうむちょうのペトロナです。

 お父様とお母様、それに貴方も。密猟者に襲われて大変でしたね。

 商業ギルド支部夜間棟を代表して、お見舞みまもうし上げます」

「ええ、両親は管理かんりが行きとどかない森で何者なにものかに襲われました。

 自宅の薬草園のはげちらかした畑だけでは足りなかったのでしょう」

「ご両親なら、支部長しぶちょうしつです。

 薬草園の管理かんり不備ふびうたがい。

 同業者どうぎょうしゃによる窃盗せっとう幇助ほうじょの疑い。

 この二点に対する黙秘もくひを続けておられて、事情聴取じじょうちょうしゅ進展しんてんがありませんでした。

 今は、今後こんごのポーション調合ちょうごうについて話し合われています。

 イーツ君、こちらのロビーでお待ちになりますか?」

 夜間棟従業員を示す紺色こんいろ制服せいふくをきちんと着ている、夜間窓口業務長のペトロナさんは窓口カウンターから出て来て、の小さい子どもの僕に合わせて、身をかがめてくれます。それは、怖い顔をした男たちから僕を守るような態勢たいせいです。


「さっさと、ポーション調合しやがれ!」


 ペトロナさんを突き飛ばした男が、僕のむなぐらをつかんで持ち上げてしまいました。両足りょうあしいている以上、僕はもがくことしか……いいえ、こうなったら、全身の力を抜いて、男に身を預けましょう。

 あばれなければ暴れないで、男は僕を持ち上げたときのまま両手だけに負荷ふかがかかります。僕が暴れれば、男は無意識に両足でる動作をするでしょうが。

 男はあっというに、手の平がしびれて、僕をゆかへ下ろしてしまいました。

「夜間棟の警備が大変たいへん失礼しつれいを。

 ダルメ、ロビーの警備からはずれて、玄関前の警備と交代こうたいなさい」

 ペトロナさんは窓口カウンターを警備している従業員の男ダルメの、子どもに対する暴力的なふるまいを「失礼」とびて来ました。

 ペトロナさんを突き飛ばしてしまったことに気づいて、頭をやしたのでしょう。しかし、男は僕のほほちました。

 パーンッ。

 僕はたれたいきおいと力を上手く逃がすために、転がってるしかありませんでした。無駄むだあらがえば、大切な歯をうしないかねません。

「窓口業務長はだまっててくれ!

 商業ギルドのポーションまで、とうとう備蓄びちくが無くなったんだ!

 全部、御前の親が悪いんだ!」


 スライムの次はポーションのうばいですか。

 両親の畑も、同業者によって、らされたのは確定かくていですね。まあ、両親も密告者みっこくしゃになりたくないのはわかりますが。

 そのうち、みずまでうばうのでしょうね。


「それでは、森へ薬草を採集しに行かなければなりませんね。

 そうそう。

 襲撃以前の記憶が戻らなくても、僕はポーション瓶を数えることは出来ます。

 昨日の襲撃時、僕の分のポーション瓶一瓶分が足りなかったんです。何故ですか?」

 僕は立ち上がり、男の制服をガッチリつかんで、口の中にたまっていた血をぬぐってやります。ギルドの床に血を吐くなんて行儀が悪いですものね。

「……」

「僕、森で密猟者にねらわれて、死にかけたんですよね。全く、覚えていないんですけれど。

 でも、身体からだが小さいから、密猟者に気づかれなかったのかな。

 でも、ポーション瓶が無かった理由にはなりませんよね」


「両親のそばには二瓶だけ。

 使おうと思ったら、消えるポーションなんてあるんですか?

 貴方には聞いていません

 ペトロナさん、お答えください」

 玄関前を警備していた従業員が騒ぎに気づいて、ダルメという男を棟外とうがいへ連れ出されていきます。おそらく、問題を起さないよう帰宅命令が下ったのでしょう。

「森で狩猟しゅりょうたしなまれていた子爵ししゃく子息しそくさまが密猟者からげる途中とちゅうに、おかおりむかれたのです。子息様は社交しゃこう近々ちかぢかになる予定よていがありました。

 一つのきずゆるされないのが、社交の場です。

 フォーリア家は薬草園と家の借金しゃっきんがありました。

 貴方の命綱いのちづなであるポーションとえに、借金はもろもろ完済かんさいされました。

 ポーションの在庫も備蓄も無くなったので、ポーション販売はんばい休止きゅうししていました。

 しかし、大馬鹿者おおばかものの窓口業務員マリリエがポーションの受注じゅちゅうをしたのです。

 本当にもうわけありませんでした」

 ペトロナさんが僕に対して深々頭を下げている中、棟内とうないにダルメが戻って来ました。玄関前警備員をボコボコになぐっても、気がまなかったのでしょう。

 ペトロナさんにたりらし始めました。

「子どもに嘘を教えるな!

 町長が子爵の子息様を傷つけたんだ!

 それで、この町中のポーションは備蓄もふくめて、子爵の子息様に見舞金みまいきんわりにけた!

 それでも、御前の親の管理している広大こうだいな薬草畑さえあれば、持ちこたえられるはずだった!

 隣町のポーション調合師仲間が畑の薬草を全部んでいるのに、かくしやがったんだ!

 この町のギルドにポーションを買ってもらってるのに、隣町に寝返ねがえったんだ!

 この裏切者うらぎりもの!」


「町長はポーションを全町民たちからぬすんだ罪で、監獄かんごくきになった。御前の両親も監獄へ行け!」


「薬草畑はポーション調合師の所有物。我々ギルドでさえ、薬草やポーションを融通ゆうづうするように圧力あつりょく脅迫きょうはくを行うことはゆるされません。

 イーツ君のご両親をめるために、事情聴取に呼んだのではありませんよ。あくまでも、隣町ギルドとの関係かんけい悪化あっかけるための、事実じじつ確認かくにんのすり合わせが必要ひつようだったからです。

 ダルメが口を出すことではありません。

 イーツ君、私の同僚どうりょう無礼ぶれいはたらきました。夜間警備長に報告し、ダルメは他支部の警備にまわします」

 玄関前警備員さんがダルメをゆかにねじせ、一撃いちげきをくらわせて昏倒こんとうさせようとしました。しかし、ダルメは僕に向かって、怒りをさらにぶつけようとしています。


「町のはじをさらして、何が楽しいんだ!」

万年まんねん玄関前警備の洟垂はなたれグレイは黙ってろ!

 コイツの親のおかげで、商業ギルドのブリッラ支部と夜間棟は全職員の給料きゅうりょうが半分になった。

 ここを辞めて、冒険者や傭兵に転職てんしょくしたやつも多い!」


「両親の借金は完済かんさいになったことは事実じじつなんですね?」

「嗚呼……だが、俺たちの分の備蓄ポーションまで盗まれたんだ!」

「ダルメさん、いったい何をぬすまれたんですか?

 調合していないポーションは存在していません。

 ありもしない物を盗まれたとさわいでも、無意味むいみですよ。

 では、僕は僕で用事がありますので、窓口へとおしてください」

「おい!」

「貴方の怒りはポーション調合師にけるべきですか?

 それとも、町長の言いなりになった、だらしがない商業ギルド?

 それとも、町長を野放のばなしにした国?

 たしかに商業ギルドはポーションの備蓄をしていたのでしょう。

 しかし、そのポーションは貴方の所有物しょゆうぶつではありませんでしたよね。

 貴方は警備の役目やくめたせず、町民からめられることにうんざりしているのです。

 記憶が戻らない子どもを責めるのはさぞ楽しかったでしょうね」

 ダルメはギルドでも家でもなく、町役場向かいの衛兵隊舎えいへいたいしゃへと連行されました。商業ギルド内で暴れたのですから、仕方が無いのでしょう。


「イーツ君。

 ここでご両親を待っていないで、お家に帰りなさい。

 ここにいれば、衛兵が被害者である君を取り調べに来てしまう」

 グレイさんの忠告ちゅうこくに僕はくびよこりました。

「商業ギルド会員登録をお願いします」とペトロナさんに頭を下げます。

「イーツ君が?」

「はい、お願いします。登録料をおさめます」

「……商業ギルド会員証かいいんしょう作成さくせいしました。

 はい、会員証。

 いよいよ、ポーション調合師としてデビューするのかな?」

 僕は窓口から受け取った会員証を窓口にもどしました。

「会員証の返却へんきゃく?」

秘匿ひとく商談しょうだんかんとの秘匿商談を希望きぼうします」

 騒ぎを見守っていた人だかりの中から、秘匿商談官がやって来ました。

 ギルド会員登録料百メローネを支払しはらってた、出来立てほやほやの会員証を窓口にあずけて、秘匿商談室へ案内あんないされます。

 しかし、通路の奥にお目当ての部屋は無いようです。

「ポータルホール」と書かれたプレートの奥には、前世のホテルによくあったエレベーターホールのような、スペースが広がっていました。

 左右の壁には、それぞれ四つずつ、閉ざされたもんとびらがあります。

「これより、秘匿商談室直通ポータルを利用します。危険物は持ちこみいただけません。

 空室くうしつは116号室でございます」


 扉の向こうは、部屋ではありませんでした。

「116」というプレートが取りつけられた藤棚ふじだな。そして、その周辺をおおう、美しくあでやかなウィステリアの花々。

 その花房の下には、木製のつくえ椅子いす設置せっちされてありました。

「秘匿商談室とは言いますが、秘匿商談希望者の精神せいしん投影とうえいした空間くうかんでございます。情緒じょうちょらげば、この空間は崩壊ほうかいしていきます。

 崩壊してしまえば、秘匿商談は破談はだんとなります。

 ご注意ください」


「僕はさきほど商業ギルドブリッラ支部に登録した会員、イーツ・フォーリアと申します。両親はポーション調合師として、こちらに同じく登録している会員です」

「私は秘匿商談官のエンブレイスと申します。

 秘匿商談は秘匿事業じぎょう・秘匿販売取引はんばいとりひきなどをあつかいます。

 また、秘匿商談と並行へいこうして、一般いっぱん商談もまとめて扱うことが出来ます。

 秘匿商談を利用されるのは今回がはじめてでいらっしゃいますね?」

「はい。わからない点が多々あると思います。その都度つど質問しつもんしてもよろしいでしょうか?」

「はい、かまいません。

 では、こちらの秘匿用紙に本日の希望内容をおおまかにお書きください。この用紙をもとに、本日の秘匿商談の流れを決めましょう」



 秘匿商談官でも、いっぺんには無理むりでした。

 僕の壮大そうだいな計画。

 テンピ森の一部に、スライム保護区を設立し、スライム保護活動を行うこと。

 スライムの副産物ふくざんぶつ研究けんきゅう

 これらはエンブレイスさんでも、全く理解出来ないようでした。

「テンピ森の一部に、スライム保護区?」

「はい。

 僕はテンピ森で、商業ギルド向けの薬草採集はしません。

 両親のようなポーション調合師にもなりません。

 絶滅ぜつめつ寸前すんぜんのスライムの保護活動をしながら、抜歯屋ばしやいとなみます」

本業ほんぎょうが抜歯屋ではないのですか?」

「はい。最優先はスライムの保護ですので、抜歯屋が副業です」

「お待ちください。

 森の一部をのぞいて、森は誰の所有でもありません。領主であるはずの子爵でさえ、手を出せない。商業ギルドブリッラ支部の管轄外かんかつがいです」

「ですが、商業ギルド本部支部に関わらない、秘匿商談なら、扱えますよね?

 僕は隠遁者から森の一部を引き継ぎました。

 僕が森の一部にスライム保護区と保護活動家の拠点きょてんを作ります」

 エンブレイスさんは僕の話を聞きながら、黙々と、ペンで秘匿用紙に何かを書き足していきます。

「貴方のご両親はまだ貧血ひんけつ後遺症こういしょうが出ています。

 まだ、薬草の採集も出来ない状態です。

 あの森で、もういるはずの無いスライムの保護活動をするくらいなら、薬草を採集してください」

 そう。商業ギルドとしては薬草の知識がある僕に新たな事業なんてやらせたくないはずだ。今はポーションが無い緊急事態。第一優先は、ポーション調合。

 何せ、ポーションの需要が上がっている。ポーションだけが値上がりしている。

 ポーションを高く売りさばける状況下の商業ギルドブリッラ支部は原価が上がっていないのに、手数料で儲けられるでしょう。

「ならば、両親の貧血が治るのはいつ頃になると思われますか?」

「一か月です」

「では、一か月分の薬草に相当するものを僕が商業ギルド夜間棟秘匿商談部秘匿商談官に納めます」

「……保護ということは、スライムを売る気が無いんですね。

 駄目です。駄目」

 嗚呼、エンブレイスさんもスライム保護区には食いついていましたけれど。それはスライムを殺処分して、加工するのが大前提となるから。スライムを殺さなければ、加工場へ売れません。残念ですが、スライムの死骸を加工する方向性は切り捨てなければなりませんね。

「スライムを殺さずに、スライムの副産物を商業利用出来るかどうか研究してみます。そうすると、スライムの寿命じゅみょうもわかりますし、スライムをやす猶予ゆうよかせげます」

 僕は机の上に一本のエンゼル瓶を静かに置きました。しかし、話すのに夢中なエンブレイスさんは気づいていません。

「保護区として森を私有地化するなら、国に地税を納める必要があります。商業ギルド登録をしておけば、そういう問題を処理出来ます。

 しかし、子どもの貴方には保護活動なんて無理です……それはポーションですか?」

 机の上に輝く深緑色の小瓶がエンブレイスさんの目にとまりました。


「毛生え塗り薬エンゼルです」


「エンゼル?聞いたことが無い物ですね」

「髪質改善。

 上流貴族の毛生え薬は経口けいこう一択いったく

 飲みにくさを改善するよりも、問題の部分にふりかけて使用する塗り薬にしてみました。

 脱毛だつもう症状しょうじょうの子どもやお年寄りでも塗りやすい小瓶。

 効果が即効そっこうではなく、遅効性ちこうせいが高いため、身体にかかる負荷が少ない。髪質改善の持続性があるので、毛生え薬の飲み過ぎを解消出来ます。

 値段は毛生え飲み薬の百倍です。

 六十瓶ご用意しましたが、次の入荷にゅうかは一年後ということにしておきましょう」

 一瞬にして、秘匿商談官らしく計算を始めたエンブレイスさんは、桁数けたすうに若干顔を引きつらせていきました。

「毛生え飲み薬が五万メローネ。その百倍は、五百万メローネですよ。それが……六十瓶。

 計三億メローネも……」

 そうして、答えをみちびき出して、残念ざんねんそうな顔をする秘匿商談官。そうですよね、そうなんです。この町にははげ頭はいますが、町民の中で五百万メローネを一括いっかつ支払しはらい出来る富豪ふごうはいませんものね。

「この町ではれません。

 こんなあやしいブツで、家業かぎょうのポーション調合業をつぶす気ですか?」


「まさか。

 僕は田舎町いなかまちでこのような高級品こうきゅうひんを売れなんて一言も言ってませんよ。

 商業ギルド本部ほんぶには外商部がいしょうぶがあるでしょう?

 こういう物が欲しい顧客こきゃくさがせますよね?

 商談手数料は一パーセント。一瓶につき五万メローネ。

 秘匿商談手数料を含めた外商手数料は六パーセント。一瓶につき、三十万メローネ。

 商業ギルドブリッラ支部秘匿商談官にも担当者たんとうしゃとして利益りえきが入りますよ。

 貴方あなたおうじなければ、貴方以外の秘匿商談官と交渉こうしょうします」

 エンブレイスさんの顔が「みち」を見つけた冒険者ぼうけんしゃのようにれし始めました。しかし、これではあまり僕の印象いんしょうが良くならないでしょうね。あくまでも、僕はスライムを保護する慈善家じぜんかという懐の広さを見せなければなりません。

「密猟者に襲われるがままだった両親はもう、森に入るべきではないでしょう。

 それに、自宅の薬草園の葉がしげるまでの間、ゆっくり静養せいようすべきです。

 両親のポーションにはポーションの良さがありますしね。

 僕は両親ときそいません。

 僕は保護活動につとめる慈善家を目指したいのです」

 エンブレイスさんは黙って、僕の話に耳をかたむけています。

「エンゼルは匿名で売ってください。

 僕がのぞむのは、両親の薬草園がらされないこと。

 エンゼルの出どころを探られないこと。

 密猟者の撲滅ぼくめつ

 スライムの保護です。

 僕の邪魔じゃまをするなら、僕はこの町を出て行くだけのこと」


 ……。


「抜歯屋についてですが、子どもが暴れる大人の歯を抜くことが出来ますか?

 大衆たいしゅう面前めんぜんですよ?」

「はい。ただし、見世物にはしません」

「見世物にしない!?」

「抜かれる方は見世物にされて、ずかしいじゃありませんか。それに、不衛生ふえいせいではいけませんから」

 秘匿商談がまとまっていきました。

 五枚の秘匿商談の書類に、まずは秘匿商談官のエンブレイスさんが目を通して。それから、僕が最終確認をしました。


「スライム保護活動家」の秘匿事業登録。

「スライム保護区」の秘匿設立。

「スライム副産物研究事業」の秘匿登録。

「エンゼル」の秘匿販売登録。


「抜歯屋」通常開業登録。



 四件の秘匿登録手数料は、四千メローネ。

 一件の通常登録手数料は、六百メローネ。


 秘匿商談官のエンブレイスさん。

 依頼人である僕、イーツ・フォーリア。

 僕等は、商業ギルドのブリッラ支部夜間棟の秘匿商談室116号室で無事、秘匿商談を終えました。

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