3話 商業ギルドブリッラ支部夜間棟にて秘匿商談を
魔物も、魔物化する
どこの町も
「ちょっと、お母さんと一緒に
僕も家を出てみました。
商業ギルドの
そのまた横の
「商業ギルドブリッラ
あっ、密猟者に
ここで
イーツ君は日没までに森から町へ戻って来て、薬草の選別をして、それから夜間棟の窓口にポーションを
ポーション瓶にひび
そういう
「夜間
お父様とお母様、それに貴方も。密猟者に襲われて大変でしたね。
商業ギルド支部夜間棟を代表して、お
「ええ、両親は
自宅の薬草園のはげちらかした畑だけでは足りなかったのでしょう」
「ご両親なら、
薬草園の
この二点に対する
今は、
イーツ君、こちらのロビーでお待ちになりますか?」
夜間棟従業員を示す
「さっさと、ポーション調合しやがれ!」
ペトロナさんを突き飛ばした男が、僕の
男はあっという
「夜間棟の警備が
ダルメ、ロビーの警備から
ペトロナさんは窓口カウンターを警備している従業員の男ダルメの、子どもに対する暴力的なふるまいを「失礼」と
ペトロナさんを突き飛ばしてしまったことに気づいて、頭を
パーンッ。
僕は
「窓口業務長は
商業ギルドのポーションまで、とうとう
全部、御前の親が悪いんだ!」
スライムの次はポーションの
両親の畑も、同業者によって、
そのうち、
「それでは、森へ薬草を採集しに行かなければなりませんね。
そうそう。
襲撃以前の記憶が戻らなくても、僕はポーション瓶を数えることは出来ます。
昨日の襲撃時、僕の分のポーション瓶一瓶分が足りなかったんです。何故ですか?」
僕は立ち上がり、男の制服をガッチリつかんで、口の中にたまっていた血をぬぐってやります。ギルドの床に血を吐くなんて行儀が悪いですものね。
「……」
「僕、森で密猟者に
でも、
でも、ポーション瓶が無かった理由にはなりませんよね」
「両親のそばには二瓶だけ。
使おうと思ったら、消えるポーションなんてあるんですか?
貴方には聞いていません
ペトロナさん、お答えください」
玄関前を警備していた従業員が騒ぎに気づいて、ダルメという男を
「森で
一つの
フォーリア家は薬草園と家の
貴方の
ポーションの在庫も備蓄も無くなったので、ポーション
しかし、
本当に
ペトロナさんが僕に対して深々頭を下げている中、
ペトロナさんに
「子どもに嘘を教えるな!
町長が子爵の子息様を傷つけたんだ!
それで、この町中のポーションは備蓄も
それでも、御前の親の管理している
隣町のポーション調合師仲間が畑の薬草を全部
この町のギルドにポーションを買ってもらってるのに、隣町に
この
「町長はポーションを全町民たちから
「薬草畑はポーション調合師の所有物。我々ギルドでさえ、薬草やポーションを
イーツ君のご両親を
ダルメが口を出すことではありません。
イーツ君、私の
玄関前警備員さんがダルメを
「町の
「
コイツの親のおかげで、商業ギルドのブリッラ支部と夜間棟は全職員の
ここを辞めて、冒険者や傭兵に
「両親の借金は
「嗚呼……だが、俺たちの分の備蓄ポーションまで盗まれたんだ!」
「ダルメさん、いったい何を
調合していないポーションは存在していません。
ありもしない物を盗まれたと
では、僕は僕で用事がありますので、窓口へ
「おい!」
「貴方の怒りはポーション調合師に
それとも、町長の言いなりになった、だらしがない商業ギルド?
それとも、町長を
しかし、そのポーションは貴方の
貴方は警備の
記憶が戻らない子どもを責めるのはさぞ楽しかったでしょうね」
ダルメはギルドでも家でもなく、町役場向かいの
「イーツ君。
ここでご両親を待っていないで、お家に帰りなさい。
ここにいれば、衛兵が被害者である君を取り調べに来てしまう」
グレイさんの
「商業ギルド会員登録をお願いします」とペトロナさんに頭を下げます。
「イーツ君が?」
「はい、お願いします。登録料を
「……商業ギルド
はい、会員証。
いよいよ、ポーション調合師としてデビューするのかな?」
僕は窓口から受け取った会員証を窓口に
「会員証の
「
騒ぎを見守っていた人だかりの中から、秘匿商談官がやって来ました。
ギルド会員登録料百メローネを
しかし、通路の奥にお目当ての部屋は無いようです。
「ポータルホール」と書かれたプレートの奥には、前世のホテルによくあったエレベーターホールのような、スペースが広がっていました。
左右の壁には、それぞれ四つずつ、閉ざされた
「これより、秘匿商談室直通ポータルを利用します。危険物は持ちこみいただけません。
扉の向こうは、部屋ではありませんでした。
「116」というプレートが取りつけられた
その花房の下には、木製の
「秘匿商談室とは言いますが、秘匿商談希望者の
崩壊してしまえば、秘匿商談は
ご注意ください」
「僕はさきほど商業ギルドブリッラ支部に登録した会員、イーツ・フォーリアと申します。両親はポーション調合師として、こちらに同じく登録している会員です」
「私は秘匿商談官のエンブレイスと申します。
秘匿商談は秘匿
また、秘匿商談と
秘匿商談を利用されるのは今回が
「はい。わからない点が多々あると思います。その
「はい、
では、こちらの秘匿用紙に本日の希望内容をおおまかにお書きください。この用紙をもとに、本日の秘匿商談の流れを決めましょう」
秘匿商談官でも、いっぺんには
僕の
テンピ森の一部に、スライム保護区を設立し、スライム保護活動を行うこと。
スライムの
これらはエンブレイスさんでも、全く理解出来ないようでした。
「テンピ森の一部に、スライム保護区?」
「はい。
僕はテンピ森で、商業ギルド向けの薬草採集はしません。
両親のようなポーション調合師にもなりません。
「
「はい。最優先はスライムの保護ですので、抜歯屋が副業です」
「お待ちください。
森の一部を
「ですが、商業ギルド本部支部に関わらない、秘匿商談なら、扱えますよね?
僕は隠遁者から森の一部を引き継ぎました。
僕が森の一部にスライム保護区と保護活動家の
エンブレイスさんは僕の話を聞きながら、黙々と、ペンで秘匿用紙に何かを書き足していきます。
「貴方のご両親はまだ
まだ、薬草の採集も出来ない状態です。
あの森で、もういるはずの無いスライムの保護活動をするくらいなら、薬草を採集してください」
そう。商業ギルドとしては薬草の知識がある僕に新たな事業なんてやらせたくないはずだ。今はポーションが無い緊急事態。第一優先は、ポーション調合。
何せ、ポーションの需要が上がっている。ポーションだけが値上がりしている。
ポーションを高く売りさばける状況下の商業ギルドブリッラ支部は原価が上がっていないのに、手数料で儲けられるでしょう。
「ならば、両親の貧血が治るのはいつ頃になると思われますか?」
「一か月です」
「では、一か月分の薬草に相当するものを僕が商業ギルド夜間棟秘匿商談部秘匿商談官に納めます」
「……保護ということは、スライムを売る気が無いんですね。
駄目です。駄目」
嗚呼、エンブレイスさんもスライム保護区には食いついていましたけれど。それはスライムを殺処分して、加工するのが大前提となるから。スライムを殺さなければ、加工場へ売れません。残念ですが、スライムの死骸を加工する方向性は切り捨てなければなりませんね。
「スライムを殺さずに、スライムの副産物を商業利用出来るかどうか研究してみます。そうすると、スライムの
僕は机の上に一本のエンゼル瓶を静かに置きました。しかし、話すのに夢中なエンブレイスさんは気づいていません。
「保護区として森を私有地化するなら、国に地税を納める必要があります。商業ギルド登録をしておけば、そういう問題を処理出来ます。
しかし、子どもの貴方には保護活動なんて無理です……それはポーションですか?」
机の上に輝く深緑色の小瓶がエンブレイスさんの目にとまりました。
「毛生え塗り薬エンゼルです」
「エンゼル?聞いたことが無い物ですね」
「髪質改善。
上流貴族の毛生え薬は
飲みにくさを改善するよりも、問題の部分にふりかけて使用する塗り薬にしてみました。
効果が
値段は毛生え飲み薬の百倍です。
六十瓶ご用意しましたが、次の
一瞬にして、秘匿商談官らしく計算を始めたエンブレイスさんは、
「毛生え飲み薬が五万メローネ。その百倍は、五百万メローネですよ。それが……六十瓶。
計三億メローネも……」
そうして、答えを
「この町では
こんな
「まさか。
僕は
商業ギルド
こういう物が欲しい
商談手数料は一パーセント。一瓶につき五万メローネ。
秘匿商談手数料を含めた外商手数料は六パーセント。一瓶につき、三十万メローネ。
商業ギルドブリッラ支部秘匿商談官にも
エンブレイスさんの顔が「
「密猟者に襲われるがままだった両親はもう、森に入るべきではないでしょう。
それに、自宅の薬草園の葉が
両親のポーションにはポーションの良さがありますしね。
僕は両親と
僕は保護活動に
エンブレイスさんは黙って、僕の話に耳を
「エンゼルは匿名で売ってください。
僕が
エンゼルの出どころを探られないこと。
密猟者の
スライムの保護です。
僕の
……。
「抜歯屋についてですが、子どもが暴れる大人の歯を抜くことが出来ますか?
「はい。ただし、見世物にはしません」
「見世物にしない!?」
「抜かれる方は見世物にされて、
秘匿商談がまとまっていきました。
五枚の秘匿商談の書類に、まずは秘匿商談官のエンブレイスさんが目を通して。それから、僕が最終確認をしました。
「スライム保護活動家」の秘匿事業登録。
「スライム保護区」の秘匿設立。
「スライム副産物研究事業」の秘匿登録。
「エンゼル」の秘匿販売登録。
「抜歯屋」通常開業登録。
四件の秘匿登録手数料は、四千メローネ。
一件の通常登録手数料は、六百メローネ。
秘匿商談官のエンブレイスさん。
依頼人である僕、イーツ・フォーリア。
僕等は、商業ギルドのブリッラ支部夜間棟の秘匿商談室116号室で無事、秘匿商談を終えました。
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