第2話 リディア

 目が覚めると私は大木の木陰に横たわっていた。地面はふかふかの芝生だった。のどかな自然。そこは穏やかな楽園のようで吹き抜けるそよ風が心地良かった。あたりを見渡していると有守が追いかけていた少女が近づいてきた。


「えっと、こんにちは」 とりあえず挨拶。


「君は誰?僕が見えてた。ここにも来た」


 おぉボクっ娘だ。口数は少なそうだけどストレートだな。誰と聞かれても困惑するのはこちらである。


「私は佐藤有守。ピチピチの高校生です。あなたこそ何者なの?誰も見えていないようだったし。あとここはどこでしょうか。それから私、落下していた気がするんだけど知らない?」


「アリス…、本物?大きいしワンピースじゃない」 本物に向かって本物かどうか聞かれても困る。


「本物だよ?」


「?あともっとおてんばなはず。死んだおじいちゃんが言ってた」


 あー「アリス」ってもしかして


「『不思議の国のアリス』のアリス?急におっきくなったりして家につっかえたりした」


「多分…。じゃああなたは違うアリス」


「そう、ですか。で、あなたは、ここは、誰?どこ?」


「僕は猫のリディア。ここは君が居たのとは違う世界。」


 そう言ってパーカーのフードをとると耳が出てきた。猫の。


「………こすぷれ?そういう設定?」


「こすぷれって何?設定じゃない本物。おじいちゃん曰く昔アリスって人が来て、なにかエネルギー?を一緒に持ってきて。喋れた動物達はみんな人型になれるようになったらしい。こっちの姿の方が便利だったから定期的にエネルギーをこちらに補給しにあなたの世界に行ってた」


 なにやら情報量が多いぞ。この娘は猫でいいのかな。


「あなたはイレギュラーで僕が見えて、普通とは違う方法でこっちに来れた。空から降ってきたから死んでるかと思ったけど生きてたから寝かしておいた」


「ありがとう」素直に感謝する。


「あと僕のおじいちゃんそっちの世界だったらチェシャ猫って呼ばれてた」


 やっぱり不思議の国のアリスじゃ~ん。こんな経験めったに無いけど私ゆいゆいん家行かないと。


「私って元の世界に帰れるのかな?」


「わからない。けど僕を手伝ってくれたら帰るの手伝ってあげる」


 悪い条件じゃない。ギブアンドテイクだ。そう思った有守はリディアの話にのることにした。


「なにすればいいの?」


「僕今兵士に追われてるから逃げるのを手伝って欲しい」


「具体的には?」 私が問うと


「見つかって捕まりそうになったら身代わりになって。捕まったら僕の頭と胴体はオサラバだから」


 物騒な世の中だねぇ。代わりに殺されろと?


「え、ヤダ」


「ありがとう‼君のおかげで助k…。うん?少し耳の調子が悪いな。まぁそういうことでよろしく」


 ブチッ


 すうぅっ


「おい。アタイがチビだからって舐めんな、コンチキショー!確かに私は小さくてかわぃらしいから親しみがわくのは分かる。だけどな、明らかにお前のほうが年下で、かつ、私は違う世界の人間じゃぁ。客として丁重に扱え。初対面の人にいきなり死ねって言ってるようなもんだぞ。ったく、最近のチビはこれだから精神面までチビなんだよっ」


 はあぁぁ

 色々不満等が出てしまいましたスイマセン。私は自分をチビと定義したあと自分も最近のチビであると気付き、自ら墓穴を掘ったことも含め深く反省しております。


 リディアは割と私の勢いに翻弄されたようでかたっまっている。ごめんね。


「けど、僕以外に君を手伝える人はいるの。兵士自体は問題ないけど女王の機嫌を損ねたら君も追われることになるよ」 ようやくリディアは口を開いた。


 確かに…。この世界の女王ってやばいんじゃなかったっけ?


「あと君の安全は保証するよ。君はこっちの世界の人じゃないしね」


「分かった。あなたに協力する」


 少し考えたが目の前の道を堅実に進むことにする。


「じゃあよろしく。アリス」


「よろしく。リディア」


 こうして私はもとの世界に戻る方法を探し始めたのだ。



 ドッドッドッドッ


 あ、


「アリス、早速出番だ。僕は逃げるから頼んだ」


 やっぱりこいつと組むんじゃなかった。


 リディアが去ったあとすぐに馬にのった四角い、やはりトランプが近づいてきた。


「そこのお嬢さん、猫の小娘を見かけなかったかい?」


 どうしよう……











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