1・25才会社員→高校生①
高校生の制服って、とてつもなく恥ずかしい。
コスプレ感が半端ない。
笙子の高校の夏服は、白いブラウスにグレイの膝丈のスカートだ。
思い返せば、わたしが高校生の時だって似たようなものだった。
正直、あのときはなにも考えていなかったけれど、改めてこの年で着てみると、結構やばいんじゃなのって思ってしまう。
白いブラウスは、透けやすい。
しかも、生地代をケチっているのか、薄い。
これはけしからんと腹を立てながら、わたしは笙子のもろもろが見えないように、しっかりインナーで防御した。
まぁ、あれこれ言いつつも、ブラウスは下に着れば解決できるので、まぁ、いいとする。
問題は、スカートである。
笙子の白くて長い生足が、にょっきりと露出してしまうのだ。
妹の名誉のために言えば、丈を短くしているわけじゃない。
あの子の膝下が長すぎるのだ。
自分の足ではないとはいえ、恥ずかしい。
あぁ、ストッキングが穿きたい
それがだめなら、ニ―ハイソックスを穿かせて。
足下がスカスカします。
悶々と生足問題で悩みつつ高校の正門へと続く並木道を歩いていると、ふいに背中がぽんと叩かれた。
「笙子、おはよう」
「おはよう、
同じクラスの田辺 和可奈だ。
彼女は癖のある柔らかな髪を、緩やかに三つ編みにしている。
リアル女子高生の夏服の着こなしは、とことんナチュラルだ。
「『和可奈ちゃん』なんて、どうにも慣れないな、変な感じ。以前みたいに『和可奈』って、呼び捨てでいいのに」
「でも、わたし、記憶があいまいだから、この方がしっくりくるのよね」
「そっか。笙子がこうして学校に来てくれるだけでも、よしとしなくちゃね」
和可奈がわたしの腕を組んできた。そのぬくもりに、気持ちが和む。
「ところで、この間渡した、笙子が休んでいる間のノートのコピー、足りてる?」
「ごめん。まだ見てないわ」
「そっか。わからないところがあったら、なんでも聞いてね」
和可奈にお礼を言うと、同級生の女の子たちが賑やかな声とともに駆け寄って来た。
女子高生に囲まれたわたしは、彼女たちの可愛さに、つい顔がにんまりとしてしまう。
しかし、そんな顔を笙子にさせるわけにはいかない。
笙子らしくしとやかに。
わたしは記憶にある妹の癖をなぞるよう、長いまつ毛をそっと伏せた。
7月に起きたあの事故から、1か月半が過ぎ、季節は夏から秋へと変わりつつある。
あの事故のあと、25歳の朝倉
わたしと笙子の違いは、たくさんある。
まずは外見、わたしの身長は158センチで、髪は小学生のころから顎下までのショートボブだ。
髪の色は茶色で、中学、高校と陸上競技をやっていたため、日に焼けている。
顔立ちは、どちらかといえば、はっきりとしていて、可愛いと言われることはあっても、美人だと言われた記憶はない。
一方で、妹の笙子は背が高く、すらりとしている。
たしか、高校に入ってすぐの健康診断で、166センチあったと記憶している。
髪の色は黒く、背中までまっすぐに垂れている。完全なるインドア派で、気が付くといつも本を読んでいる。
おっちょこちょいで、そそっかしいのがわたしで、何事も良く考え慎重に動くのが笙子。
わたしは春生まれだけれど、笙子は秋生まれ。来月、彼女は17歳になる。
笙子は、どうなってしまったのだろう。
なんで、笙子の代わりに、わたしがここにいるのだろう。
なにがどうなっているのかわからないけれど、わたしは笙子として暮らしているのだ。
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