第92話 生徒会のメンバーと遊ぶ計画

 放課後。


 今日は生徒会の会議があった。


 今日の生徒会の仕事は、今後の活動方針についての話だけだ。

 部外者である俺がいなくてもいいのだが、すっかり生徒会の一員となった俺は普通に参加してしまっていた。


「予定よりも早く終わりましたね」

「そうだな……」


 早乙女先輩が何かを考え込んでいる。


 どうしたのかと思いつつ、俺はスマホでアイに連絡を取る。


 今、会議が終わったことを告げないといけない。


 アイには時間を潰して貰っているのだ。

 どこで時間を潰しているのかは知らないが、呼ばないといけない。


 待ち合わせは校門前。

 今日はアイと一緒に高級車に乗る約束をしている。


 あの高級車に乗るのは憂鬱だが、送ってもらえるならありがたい。


「うぉーい、弟! ラーメン食べにいかねぇか?」


 早乙女先輩が何かを思いついたかのように、肩を組んでくる。


「ラ、ラーメン?」

「嫌いか?」

「嫌いじゃないです。むしろ、好きな方です」

「なら決まりだな! 生徒会の面子と一緒に行こうじゃねぇか!」


 早乙女先輩がそう言い放つと、


「ラーメン? いいですね!」

「……たまにはみんなで行きたいですね」


 書記と会計の人が乗り気になってしまった。


 まずい。

 早く断らないと。


「すいません。今日はちょっと用事がありまして」

「何ぃ? 私達のラーメンよりも大事なことがあんのか?」

「止めなさい、烈火。ソラくんが困ってるでしょ」


 面倒な絡み方をしてきたが、ライカさんが割って入って来る。


 早乙女先輩はつまらなそうな顔をして、


「……なんだ、先約か。まあ、もしかしなくてもライカとのデートか。ならしょうがないな。行ってこい。そして男になってこい」

「え?」

「ちょ――違うから! ソラくん用事があるって事前に言われてたの! 生徒会の会議が遅くなったら途中で抜けるって話されてたの!」

「アハハハッ!!」


 必死になって否定するライカさんを見やって早乙女先輩が爆笑する。

 全部分かっていてからかったようだ。


「まっ、今日は用事あるから仕方ないけど、たまには私達と飯を食いにこうぜ」

「はい、ぜひ」


 生徒会の人達とも随分と溶け込んできた。

 断る理由もない。

 むしろ、こちらから誘いたいまである。


 生徒会室を出ると、ライカさんに声をかけられる。


「途中までは一緒に帰らない?」

「ああ、いいけど、校門前で別れないといけないけど」

「うん、いい。私も校門までは行かないから」


 教室に戻るつもりはないようだし、家に帰るつもりもないらしい。

 どこへ行くんだろうか。


「何か用事? まさか生徒会の仕事をまた自分一人でやるつもりじゃないよね?」

「違います。ただね、私が個人的に気になって見に行っているだけ。だから仕事とかじゃなくて、ただのお節介」

「観に行っているって、どこに?」

「剣道部がいる道場」

「……道場?」


 この高校には、体育館とは別に剣道場がある。


 放課後ならば剣道部が今部活しているはずだ。

 会いたい人間でもいるんだろうか。


「何で剣道部に? 知り合いでもいるの?」

「ううん、そうじゃなくてね。剣道部には一年前に問題が起こって、その問題が再熱していないかどうか気になってたまに観に行くことがあるの」


 剣道部の問題?

 一年前だったなら俺も在学中だったはずだが、ピンと来ない。


「問題って?」

「当時三年生だった剣道部の部長が、後輩に厳しい練習をさせたんじゃないかって噂が流れたの。それで先生は勿論、生徒会も剣道部の予算の問題とか、部活存続の問題とかで動いてたの」


 生徒会がまた問題解決の為に動いていたのか。

 大変だったろうな。


「……イジメ、みたいなものがあったってこと? でも、剣道部はまだあるよね?」

「うん。あくまで噂は噂。証拠は見つからなかったし、それにその人は卒業したから、噂は自然消滅したの」

「そっか……」


 イジメの主犯は消えたけど、その取り巻きが在学しているのなら再び同じことが起きてもおかしくない、ってことか。


「それならそうと最初から言ってくれれば良かったのに。それとも、生徒会の仕事だから部外者である俺に言いづらかったの?」

「そういうことじゃなくて、最初にソラくんに言い出し辛かったのは……うーん、ちょっとね」

「? どうしたの?」

「ううん、何でもない」


 含みのある言い方だったが、聴き返す前にライカさんは手を振って来る。


「それじゃね、ソラくん。あんまり帰るのが遅くならないようにね」


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