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第78話 着替えを手伝ってもらう決闘者
学校の剣道場。
普段は部活に入っている人間か、選択授業で選んだ人間しか足を踏み入れない。
だが、今日は活気に満ちている。
「おい。何が始まろうとしてんの?」
「剣道の試合だって」
「……試合? それだけでこんなに人が?」
騒ぎを聞きつけた野次馬達が集まってきている。
学年に関係なく人がいて、道場内だけではなく外にも人垣ができている。
その中には俺の見知った顔もある気がした。
「みんな……暇だな……」
学校のグラウンドに、どこからか猫が迷い込んだ時よりも騒がしい。
そういう騒ぎの時は冷ややかな目をしつつ、囲みに加わらないのが俺の普段のスタンス。
こんな所に立ち寄ってせっかくの休憩時間を削りたくない。
だが、
「あいつ、遠藤じゃないか?」
「なんで防具を?」
「剣道の試合って、あの人が? また問題起こしてるの? あの先輩って」
今回俺は当事者だ。
立ち去ることはできない。
さっさと試合を終わらせてしまおうと思ったが、何だか大事になってしまった。
逃げ出してしまいたい。
そうしたいのは山々だったが、背を向けることができない理由がある。
「止めて! 私の為に争わないで!」
必死に叫ぶのは、事の発端となった女だ。
こいつを巡って、俺は重苦しい剣道の防具を着込むことになったのだ。
こっちは素人同然だというのに、剣道の試合をしても結果は見えている。
「準備はできたか?」
そう言って奥から現れた美形に、女子達がざわつく。
「きゃあああああああああ! かっこいい!!」
「あの人誰? 顔小さ過ぎない? 綺麗すぎない? あの二人、めちゃくちゃお似合いじゃない?」
「そうそう。絶対遠藤先輩じゃ釣り合いとれてないよね?」
まだ面を着けていない奴に苛立ちながら、竹刀を強く握る。
「……着替えはまだなのか?」
「すぐ終わる」
そう言って座り込むと、即座に面を着ける。
やっぱり手馴れているな。
俺が着けようとしたら、あまりの重さによろめきそうだった。
勝手が分からずに、面を着けるのを手伝ってもらったぐらいだ。
やっぱり経験者だけあって、一人で防具を着けるのはお手の物ということか。
「さて――そろそろ始めようか」
対戦相手は立ち上がると、太い竹刀を俺に向けてくる。
「あの人をかけて決闘だ!! 遠藤天!!」
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