第48話 副会長と組んで廃部にする
生徒会の手伝いを引き続きすることになった。
それは承諾した。
だけど、ここまでのことをするとは思わなかった。
「……本当に行かないといけないんですか?」
「不安そうだな」
「当たり前ですよ。退去勧告なんて生徒会の正規メンバーの仕事じゃないですか?」
俺は早乙女先輩と一緒になって、部室に近づいていた。
その目的は部員へ部室からの退去勧告だ。
廃部となる部活動の部室明け渡しを、生徒会メンバーがしなければならないらしい。
書類作成よりかは、話し合いの交渉の方がまだ俺には適性があると思われたらしいけど、絶対に退去する部員の方は納得しないだろう。
なんで生徒会じゃない奴に退去しろと言われて、退去しないといけないんだ。
と、憤慨されそうだ。
そもそも何度か文書を送って、部室を片付けろと通達したらしいが、部員は全部無視しているらしい。
つまり、かなり難しい仕事ってことだ。
そんな仕事を、なんで俺なんかに任せるかな。
「お前一人じゃ大変だから、この私がついてきたんだろうが」
「いや、せめて俺がアシスト側につきたいんですけど?」
部室に最初に突入する役は俺らしい。
率先して仕事をするんじゃなく、後ろで学ぶ方がいいんですけど。
勝手が全く分からない。
書類仕事だったらまだ間違えても取り返しがつくけど、今回失敗したら取り返しがつかなそうだ。
相手を怒らせたら、それこそ退去勧告が難航しそうだ。
「お前だって自分で経験しないと仕事を覚えないからマニュアルを作ったんだろ? 発案者であるお前が仕事を放棄してどうする?」
「いや、俺は生徒会じゃないんですよ。そもそも仕事を覚える必要性ないんですよ」
「心配するな。お前はいずれ生徒会長になる男だ」
「なりません!!」
どうやら仕事のマニュアル作成と、郡山先生との一件で気に入られたようだ。
だけど、変な風に期待されてしまっているせいで、こうして仕事を任せられるようになってしまった。
「行くのは文芸部、ですか……」
貰った資料に、歩きながら目を通す。
さっきライカさんに言い渡されたばかりなので、頭の中に事前情報が全然入っていない。
「正確に言うと『文芸同好会』だ。部員は今一人しかいないから、部ですらない」
「……一人で一つの部室を占拠しているのは確かに勿体ないかも知れないですね」
「そうそう。何回言ってもこっちの退去勧告を受け入れないんだったら、実力行使しかねぇの」
数十人以上で部室を使っていると狭い部活もあるだろう。
そんな中、一人で部室一つ使っていたら、他の部から文句が出てもおかしくない。
それに、新規の部活動、同好会の申請はこの季節多いらしい。
その為に不必要な部活動の整理も生徒会の仕事らしい。
正直、この辺は先生がやった方がいい案件な気がするけど。
「文芸部って主にどんな活動を?」
「小説を書いて、文芸誌を発行して、それを配布するのが活動だな。執筆した小説はネットに公開したり、小説のコンテストに参加したりするのも実績になるけど、それが最近は全然ない。紙代やインク代だってタダじゃねぇーんだ。活動しない同好会に部費を割く余裕はねぇな」
「な、なるほど……」
意外にしっかりしているんだな。
文芸部って、小説を読む部活動なのかな、とか勝手に思ってたけど、小説を書かないといけないのか。
「着いたな」
「着いちゃいましたね」
文芸部の部室前に辿り着いてしまった。
「とりあえずノックしてみ。唯一の部員がいないかもしれないけどな」
ゴクリと喉を鳴らす。
相手は廃部にならないように必死に抵抗している人だ。
どんな反抗的な態度でくるか分からない。
威圧的にならないように優しくノックをする。
「どうぞ」
ドア越しに女性の声が聴こえた。
俺は中に入ると、
「失礼します。生徒会の――者です」
ただの手伝いと名乗ると舐められると思ったので、生徒会の人間として名乗る。
小説を読んでいたであろう彼女は、ポカンとしてこちらを見上げる。
「あれ? 遠藤君?」
生徒会の敵。
文芸同好会最後の砦。
それは俺のクラスメイトであるミゾレだった。
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