第17話 他人の彼氏を寝取る系女子(星宮愛side)

 私、星宮愛は女子が苦手だ。


 私自身、女だけど、女が苦手だ。

 私みたいに若くて綺麗な人が嫌らしく、悪口を言って疎外しようとしてくる。

 私のことが嫌いだから、私は女子が嫌いだ。


 だから、男の人の方が好きだ。

 私に優しくしくれるから居心地がいい。

 私のことが好きな男子が好きだ。

 でも、男の人と話していると、何故か、


「君のことが好きだ」

「付き合ってくれないか?」

「彼女とは別れるから」


 とか、よく言われる。


 私は男の人と友達になりたいのに、男の人はそうじゃないらしい。

 例外はなく、話していく内に、段々と下心が出てくる。


 そのせいで、中学時代はビッチだと言われた。


 他人の彼氏を寝取る悪女で、遊び人だと揶揄された。


 そうじゃない。

 勝手にあっちが惚れているだけよ。


 そう言っても認めてくれなかった。

 女子からは排斥され、そして男子には近寄り難くなっていった。


 だから、私の心の中にいるのはソラだけだった。


 なのに、彼まで私から離れようとする。

 そんなの許容できるはずがない。


 私にソラが必要なように、ソラにだって私が必要なはず。


 だから、彼に分からせてやればいい。

 私が彼女じゃなくなるってことが、どれだけもったいないかってことを。


「ほら、ここよ、ここ」

「行こう、星宮」

「う、うん……」


 他校の女子二人についていく。

 彼女達は同中だ。


 だが、大して会話なんてしていない。

 友達という感覚もない。


 彼女達は同じ高校で仲がいいらしいが、私とは仲が良くない。

 さっきからずっと二人で話していて、その後ろに私がトボトボついていく感じで、どうにも居心地が悪い。


 待ち合わせ場所から歩いて十分くらいしか経っていない気がするが、もう帰りたい気分になってしまっている。


 SNSをやっていると、こういう友達もどきとも関わることだってある。


 彼女達は前々から執拗に合コンをしようと誘ってきた。

 私は面倒だし、彼氏がいるからと断ってきた。


 でも、今回は敢えて誘いに乗ったのだ。


 全てはソラに嫉妬させるため。

 できることなら、合コンに乗り込んできて欲しいぐらいだ。


「ねえ、なんで星宮は私等と今回は遊んでくれたの?」

「……何? 来ない方が良かった?」

「そういうことじゃなくてさー、合コンなんて彼氏がいるから無理だって言ってたじゃん」

「いいの。たまには羽を伸ばさないと」

「さっすがー、星宮。まっ、ウチ等も彼氏いるんだけどねー」

「ギャハハハッ!! それ言うなーつーの」


 下品な笑い方をする女子達だ。


 化粧の付け方もけばけばしいし、装飾品も金色のチェーンとかを付けているしで、私と大分美的センスがズレている気がする。


 それに、私が通っている高校とは雰囲気が違うようだった。

 所謂昔の言葉で言うヤンキー校に近い。


 通う高校が違うだけで、話し方すら違う気がする。


 さっきから、どんな男と寝たとか、浮気しまってくっている自慢ばかりしている。

 きっと、中学時代、男に相手にされなかったから、今相手にしてもらってウキウキなんだろう。

 他人に自慢したくて仕方ないみたいだ。


 高校生デビューというやつらしい。

 中学時代の彼女達のことは朧気ながら記憶にあるが、ここまで酷くはなかったはずだ。


 モテているというよりかは、利用されているような気もする。


 が、そこは人それぞれの考え方があるのだろう。

 価値観がこの人達とは違うんだろうな。


「ここって、どこ?」


 先程から裏路地を歩いて、薄暗い所にまで来た。

 そして、古い建物であるビルの中に入っていく。


 こんな所に来た経験などない。


 まだ夜ではないというのに、キャッチの人や、明らかにガラの悪い人もいて、私達のような高校生が来るような場所ではない気がした。


「言ってなかったっけ? 私達の先輩が経営している店に今から行くんだよ」

「そうそう。高校生なんか餓鬼みたいな男と違って、先輩って超格好いいんだよ。羽振りだっていいし!! しかも、今日貸し切りなんだって」

「えー、すごーい!!」

「経営……」


 経営ってことは、先輩は社会人ってことか。

 大学生でもない社会人の人の所に今から行く。

 そして、相手は初対面の相手。


「ねえ。その人って男の人?」

「? そうだけど? それがどうしたの?」

「……ううん。何でもない」


 男の人の経営するお店で、そして貸し切り。


 嫌な予感がする。


 普通なんだろうか?

 女子高生達を集めて合コンをする場所が貸し切りで、しかもそのお店をやっている人が男の人っていうのは。


 女子高生と付き合ったら犯罪だ。

 それに近い行動をするのですら、捕まるような時代。


 普通、犯罪行為に繋がることは、分別の付く大人ならば全力で避けるはずだ。


「そのお店って、店員さんは他にいるの?」

「さあ。知らないけど。何? さっきから?」

「ううん。ごめん。もう言わないから……」

「? 変なの? まっ、星宮が変なのは元からか」


 女性店員がいれば、まだ安心できるんだけど、いるわよね? きっと。


 まさか集まっている男の人、全員が社会人の男性ってことはないだろう。

 そうだとしたら怖すぎる。


 ううん。

 この考え方自体、私の考え過ぎかも知れない。


 これ以上何か質問したら、私はこの女子達に舐められる。


「え? そんなこと気にするの? 考え過ぎでしょ?」


 とか、言われるだろう。

 ノリが悪いと思われたら駄目だ。


 女子高生で一番大切なのはノリだ。


 同調するなんて弱い人間のやること。

 私はしたくない。

 むしろ、周りが私に合わせるべきだ。


 でも、ノリが悪くて、経験の少ない女だと思われたくない。

 自分はさも、男のことは何でも知っていますと思われたい。


 でも、怖い。


 ビルの階段を進むが、薄暗く、まるで化け物の口の中に入っていく恐怖感に支配される。


 私は前を向いている二人に気づかれないように、スマホを操作した。

 そして、私が頼るべき相手に連絡を取るかどうか逡巡する。

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