第11話 妹のヘソ出しスタイル
「ただいま」
家まで帰り着いてそう言うと、おかえりー、と気だるげなツユの声が返って来る。
ライカさんの声がないってことは、自室にいるんだろうか。
リビングにいたら絶対に返事するはずだ。
「兄さん。姉さんがご飯はレンジで温めてだって」
「……ライカさんは?」
「さあ。生徒会の仕事で忙しいんじゃないですか?」
「そうか……」
家に帰ってからも生徒会の仕事があるのか。
ライカさんは他人の仕事まで積極的にやろうとする人だからな。
自分の仕事だけならすぐに終わる有能さはあるのに、他人の業務まで背負いこむからいつも忙しそうだ。
それに比べてツユはソファに寝転がってテレビを見つつ、スマホを眺めている。
最近流行りのソシャゲをやって、テレビでは動画を観ているようだ。
随分と暇そうに見える。
しかも、シャツが捲れてヘソが見えている。
だらしがないにも程がある。
自宅だろうと、ライカさんだったらこんな隙見せないだろうな。
「兄さん、今日は帰り遅かったですね」
「ちょっと、シズクちゃんと話をしていてさ」
「へえ。バイト先でですか? 珍しいですね」
「ま、まあ、そうだな。たまたま終わる時間が一緒だったから」
シズクちゃんの家まで送ったから遅くなったのも理由の一つではあるけど、アイの今後の対応を考えると憂鬱になって足取りが重くなったのだ。
それのせいで家に帰るのがいつもよりも遅くなったんだろう。
――なんだか素敵な出会いですねー。
俺とアイの馴れ初め話を聴いたシズクちゃんは、何故か瞳を輝かせていた。
どこが素敵なのか訊いてみた。
――だって。元彼女さんにとって、お兄さんは自分のことを助けてくれた白馬の王子様じゃないですかー。
そういうものなのかな。
どうもシズクちゃんとは感性が違うようだ。
俺達の出会いはそんな綺麗なものじゃなかった。
ただあのクラスメイト二人の勝手な物言いに腹が立ったから言い返していただけだ。
――でも、これからどうするんですかー? お兄さんはまた付き合うつもりはないんですよねー? でも、あの様子だと、元彼女さんまた待ち伏せみたいなことしそうですよねー?
――待ち伏せ、かな。
――そうじゃないですかー? あの時間帯にあんなところに元彼女さんが、偶々いるって思う方が不自然ですよー。
やっぱり待ち伏せ、だよな。
俺だけに迷惑がかかるならまだいい。
でも、シズクちゃんがいる時にまで襲撃してきた。
最低限の分別もついていない。
話し合いなんて通じない。
そもそも、まともな話し合いをしようとしたら、コーラぶっかけられたからな。
――ならどうするんですか?
その解決策については一通り考えた。
そして十分に考えた結果、答えを導き出した。
「ツユって彼氏っている?」
「な、何ですか!? いきなり?」
プライベートな質問だ。
唐突に聴かれたらはぐらかすのが普通か。
いつもだったら話題を変えるが、今はどうしても訊きたい。
「大事な話なんだ。答えてくれ」
「……いないですけど、何ですか?」
露骨に機嫌が悪くなっている。
俺はこれ以上怒らせないように、端的に踏み込んだ質問をした理由を告げる。
「俺達付き合おう」
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